第55話 【SR】英霊『鎧武者アツモリ』の実力
メイの誕生日当日。
場所は前回と同じ『毛呂山ダンジョン』。
てっきり友達や家族と過ごすのかと思っていたが、俺と一緒にダンジョン探索を行う事になった。
「せっかくの誕生日なのに俺なんかと一緒で良いのか?」
「もちろんです! た、只野さんと二人っきりで一緒に過ごせるだなんて、本当に嬉しいです!」
「本当か? メイは変わってるなぁ。それに誕生日にダンジョンに潜るってのも味気ない気がするけど」
「そんな事ないです。今日はとても素晴らしい一日になりそうですよ!」
「そっか。まあメイがそれでいいなら付き合うよ。それじゃ改めて誕生日おめでとうメイ」
「ありがとうございます!」
お祝いの言葉と共に、プレゼントを渡す事にした。
簡単にラッピングしてリボンを付けたスキルカードだ。
「これ、誕生日のプレゼントだよ。受け取ってくれ」
「わー……。ありがとうございます! 開けてみてもいいですか?」
「もちろん。どうぞ」
「それじゃ失礼します……。え? 【SR】英霊『鎧武者アツモリ』……? た、只野さんこれって英霊のスキルカードですか!?」
「そうだよ。メイは近接戦闘の手段がないからこの英霊なら役に立つと思ってね」
「ちょ、ちょっと待ってください! さすがにこんな高価なもの受け取れません!!」
英霊のスキルカードは【SR】のレアリティだが、極めて高額で取引されている。
最低価格は数千万円。これは【SSR】に匹敵する金額だ。
召喚獣が1億円以上する事を考えるとそれでも十分割安だ。
「気にしないでくれ。どうせ売り払う事は出来ないんだからな。無料みたいなものだよ。それにこのスキルがあればメイは確実に強くなれる。そうなれば一緒に探索する俺にも恩恵があるんだ。パーティーの仲間は強い方がいいだろ?」
「で、でも……。申し訳ないです。私何もしてないのに、いつも只野さんにお世話になってばかりじゃないですか」
「そんなに重く考えなくてもいいよ。俺もメイの回復魔法にいつも助けられているんだからさ。ほんのお返しだよ。これからも俺がピンチになったらよろしくな」
「も、もちろんです。只野さんの傷は、……私がキレイに治しますから!」
「はは。頼もしいな。それじゃ早速そのスキルカードを使用してみないか」
「分かりました! 素敵な誕生日プレゼントありがとうございます。大切に育てますね」
メイはスキルカードを使用し【SR】英霊『鎧武者アツモリ』を習得した。
早速アクティブスキルを発動する。
アツモリとはどんな見た目をしているのか俺も楽しみだ。
「英霊召喚! 来て。鎧武者アツモリ!」
メイがそう叫ぶとドロンと煙が巻き起こり、中から小さな黒い影が現れた。
煙が晴れるとそこにいたのは、30センチくらいの小さな鎧武者だった。
兜を被った頭がやたら大きく、胴体の小さい二頭身キャラだった。
「子供の頃に持っていたSD武者ガ○ダムのプラモデルみたいだな」
「か……、かわいいです~!」
「え? 可愛いかこれ」
「すごくかわいいですよ~! 今日からあなたはアッちゃんね。よろしく♥」
鎧武者アツモリは「ゴザル!」と叫んで返事した。
カーバルくんもそうだが、会話は出来なくても意思疎通は出来るらしい。
「ネットで調べたら召喚獣同様、英霊も共に戦う毎に成長していくらしいよ」
「でしたら常にアッちゃんを呼び出した状態で探索しますね!」
「それがいいよ。俺のカーバルくんもハムスターサイズから柴犬くらいの大きさに成長したし」
「アッちゃんも頑張って大きくなってね」
「ゴザルッ!」
見た目は無骨なちびキャラって感じだが、どうやらメイは気に入ってくれたらしい。
かなり武闘派な性格らしく、3倍近い大きさのゴブリン相手にも果敢に挑んでいった。
蹴り一発でふっ飛ばされたが、ケロリとしてまたゴブリンに向かっていく。
中々頑丈に出来ているらしい。もしかしたら成長次第で前衛のタンク役が務まるかもしれない。
まあアツモリはまだまだ生まれたてのひな鳥みたいなものなので、戦力になるには時間がかかりそうだ。
この日は25層まで潜り魔物を沢山狩った。素材や魔石もかなりの量が手に入った。
売りさばけば恐らく100万以上になるだろう。
探索士は魔道具などの経費がかかるので、一回の探索で購入した魔道具の金額以上は稼がなければならない。
各種ポーションは低級で5千円以上、中級で1~3万円、上級だと5万円以上はする。
体力、魔力、気力回復用と状態異常回復薬も買っていたらかなりの金額になる。
実入りも大きいが支出も大きかった。
なのでヒーラーであるメイの存在は非常に助かる。
彼女はあらゆる【SR】以上の回復魔法が使用出来るからだ。
「くたびれたし、そろそろ帰ろうか」
「そうですね。アッちゃんもかなり大きくなりましたし」
「ゴザルー!!」
鎧武者アツモリは倍近くの50センチくらいの大きさに成長していた。
俺のカーバルくんは一月で小型犬くらいにしか育たなかった事をみると、アツモリはかなり早熟タイプらしい。
成長に合わせて兜や鎧、刀も大きくなっていた。
帰りの道中では、さっきまで圧倒されていたゴブリンやコボルトを屠れるくらい強くなっていた。
「このまま大きくなれば立派に前衛が務まるんじゃないか?」
「そうなってくれると嬉しいですね。探索の幅も広がりますし。改めて素敵なプレゼントをありがとうございました只野さん。今日は今までで一番の誕生日になりました!」
「どういたしまして。そう言ってもらえると嬉しいよ。アツモリ、メイをよろしく頼んだぞ」
「ゴザルッッ!!」
アツモリは力強く胸を叩いた。
それから一月後。
またメイと一緒に『毛呂山ダンジョン』に挑む事になった。
ダンジョン内でメイがアツモリを召喚すると、その姿に度肝を抜かれた。
あれだけ小さかったアツモリはメイと同じ160センチくらいの大きさにまで成長していた。
二頭身のSDサイズにデフォルメされていたのが、急に8頭身キャラになった為、大きな違和感を感じる。
黒で統一されたシックな意匠の甲冑は、まるで伊達政宗の黒漆五枚胴具足のようだ。
顔は黒い面頬をしている。
侍の亡霊みたいでぶっちゃけ怖い。
「おかげさまですごく大きくなったんですよ。ねえアッちゃん♥」
「御座るっ!」
声も雄々しい武将の様である。
アツモリよ。この一月でどんだけいかつくなったんだ……。
それでもメイには可愛く見えているらしい。
「それにアッちゃんとても強いんです。オウルベアやキマイラは一刀両断しますし、マンティコアとも互角に戦ってくれるんです! とても頑丈だし攻撃を引き受けてくれるから助かってます!」
「御座ーる!」
それならC級探索士くらいの強さはあるんじゃないか?
メイの課題だった、近接戦闘や物理攻撃での弱さを補ってくれそうだ。
「立派に育ててもらえて良かったな。これからもメイを頼むぞアツモリ」
「御座るっ!」
アツモリは分厚い胸板をドンと叩いてまかせろと応えた。
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