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第43話 2つ目のガチャ『【R】10』は大好評。新店舗開店パーティー

 『所川迷宮ショップチャンネル』の放送から一週間が経過した。

 俺の店には客足が戻り始め、オープン前から客が行列を作る様になっていた。

 やはり1日10回限定の【R】以上確定ガチャ『【R】10』の評判は上々だった。


 『初号機』で10連ガチャを引いた者に『【R】10』を1回引く権利を与えた。

 客は10万円で11連ガチャを引き、もう1万円払って【R】以上確定ガチャを引ける。

 つまり11万円で12回ガチャが引けて最低【R】が一枚確定になるのだ。


 【R】の中にはもちろんハズレもあるが、攻撃系のスキルや魔法など有効性の高いスキルカードは10万円以上で取引される物も多かった。

 今では俺の店『スキルガチャ屋只野』でガチャを引き、要らなくなったカードは他のカードショップに販売しに行くという流れが出来ていた。



 カードショップの店員からは「あんたのせいで【N】のスキルカードを売りに来る客が増えちまったよ。在庫が被って値下げしなきゃならねえ」と嫌味を吐かれた。


 同じものが沢山あればそれだけ価値は下がる。

 5千円買取だった『暗闇耐性(微小)』は、『所川迷宮ショッピングセンター』内のカードショップでは3千円買取になっていた。

 今後は【N】カードを中心に低レアのデフレ現象が進んでしまうかもしれない。




 俺は更にブログを開設して『スキルガチャ屋』の事業内容を説明したり、その日出た【R】や【SR】カードを撮影してブログに載せたりして、記事の充実を図った。

 悔しいが『氷結の森迫』の意見は正鵠を射る点もある。俺はもっと営業努力をしていかなければならない。


 せっかく『スキルガチャダス』というチートスキルがあるのだからもっと有効活用しよう。

 制約が多くてまるっきりチートとは言えないが、金のなる木であるのは確かだ。


 資金を蓄えつつ、今後は夢のS級探索士目指して自己研鑽も図らねばならない。

 『所川ハイランドパークダンジョン』に出店してるのだし、一度『所川ダンジョン』を探索してみるのも良いかもしれない。


 俺は連絡先を交換した探索士仲間たちに片っ端から連絡をしてみる事にした。









 それから三日後の土曜日。

 なぜか俺の自宅マンションの一室に、沢山の人たちが押し寄せていた。

 美波、アリサ、猫田、萌仁香、メイ、ムッツのB級探索士仲間6人と、佐治とモヒカンのむさ苦しい漢2人である。

 

 『所川ダンジョン』を探索しようという話が、新店舗開店祝いをしようという話に変わり、会場はなぜか俺の自宅になってしまったのだ。

 80平米の3LDKで、居間は16帖あるので8人くらい入れるがやはりゴチャゴチャ感は否めない。

 

 人数も多いので食事はケータリングを頼んだ。

 育ち盛りの美波と萌仁香は食べ足りないらしくピザや寿司を勝手に注文していた。


 佐治やモヒカン、ムッツはゴビゴビと酒を飲みまくっていた。

 こいつらがジョッキを持っていると、冒険者が集う酒場に見えてくる。

 


 メイはカジュアルながらも品の良いテラコッタ色のワンピースを着て、こちらに挨拶に来た。


「か、開店おめでとうございます! 只野さん」

「ありがとう。わざわざ足を運んでくれてありがとな」

「い、いえ! こちらこそ素敵なパーティーにお招き頂きありがとうございます!」

「まさか自宅でホームパーティーになるとは思わなかったよ。ご覧の通り狭苦しくてごめんな」

「とても素敵なお家だと思いますよ! お部屋の雰囲気もお洒落で大人っぽいですね」

「いやあ。そう言って貰えると嬉しいな。調度品にこだわった甲斐があるよ」


 メイと雑談していると、横からやかましい女がやって来る。


「随分楽しそうに話してるにゃ? 混ぜて混ぜてにゃん」

「ああ猫田か。わざわざ東京から来てくれてサンキューな」

「気にしなくていいにゃ。『所川ダンジョン』探索の話も含めてやって来たにゃ」

「それが本題だったな。実はまだ一度も『所川ダンジョン』に潜った事がなくてな。詳しい話を知ってたら聞いてみたいと思ってな」

「うーん。私もまだ行った事はないにゃ。全国的な知名度があるし、ドロップアイテムも豪華な物を得られるらしいから探索士界隈では人気なんだけどにゃ」


 そこにド派手な赤茶色のレザージャケットを着た長身のオネエ、ムッツが現れ付け加える。


「私は一度『所川ダンジョン』を探索した事があるけど、中層以降はフロア毎に地形が様変わりする摩訶不思議な場所だったわよ」

「何層まで潜ったんだ?」

「30層くらいかしらね。魔物も強くてそれ以上は進めなかったわ。最終三次試験の舞台だった『飛騨高山ダンジョン』より遥かに難易度が高い印象ね」

「あそこより厳しいのか。俺たちはクリアアイテムを求めて55層まで潜ったけどリッチやコカトリスが現れて大変だったぜ」

「基本的に大型ダンジョン攻略の鍵は不要な戦闘は控えることね。どうしてもドロップアイテムが欲しい魔物なら戦うのも有りだけど、中にはしょぼい素材や魔石しか落とさない魔物もいるのよ」

「へえ。勉強になるな」


「中々興味深い話ね」

 

 そう言ってアリサも話に加わる。

 彼女はオフショルダーのエメラルドグリーン色のパーティードレスを着ていた。

 『疾風のアリサ』だけあって緑がテーマカラーなのだろうか。


「もし『所川ダンジョン』に初めて潜行するなら私もお手伝いするわよ。パーティーの仲間たちと何十回も潜行しているから探索のコツはレクチャーしてあげられるわ」


 ムッツと猫田が驚きの声を上げる。


「まあ! 新四天王の『疾風のアリサ』が協力してくれるなんて凄いじゃない」

「只野にゃんがあの『疾風のアリサ』と面識があるだなんて知らなかったにゃ。羨ましいにゃ」


 アリサはそんなに有名人なのか? 

 新四天王の凄さがよく分からないので理解できない。

 隣のメイに聞いてみる。


「メイは『疾風のアリサ』について何か知ってるのか?」

「も、もちろんですよ! 新四天王の方々は今一番A級探索士昇格に近い方だと聞いています」

「A級昇格って試験を受ければそれで合格じゃないんだよな?」

「はい。A級探索士に昇格するには複雑な条件が絡んでくるんです。討伐実績や大型ダンジョン踏破、スポンサー集めに、各道場、流派に所属してA級以上の探索士からお墨付きをもらう……等などの複数の項目をクリアした方じゃないと昇格出来ないんです」


 正直長いことEランク探索士として底辺で燻っていたため、昨今の上級探索士の事情についてはあまり詳しくなかった。

 一昔前の音楽についてはやたら詳しいが、現在の音楽業界にはまったく無知な音楽ファンのような状態だ。 

 さすがに上級探索士を目指しているわけだから、認識を改めないといけない。

 




 その後、『所川ダンジョン』初探索の日程を確認し、ホームパーティーは夜半まで繰り広げられお開きとなった。

 アリサと佐治、モヒカンは自宅へと帰り、ムッツ、メイ、猫田は近場のホテルで一泊してから東京へと帰るらしい。



 美波と萌仁香は勝手に俺のゲーム機を引っ張り出して対戦プレイに興じていた。


「くっ! さっさと死ぬんだじぇ!」

「死ぬのはお前だ」

「ああ~。なんでボクは技が出ないんだじぇ! 卑怯だじぇ!」

「ボタンガチャガチャ押してたら技なんか出んわ」

「あー負けた。ずるいぞ美波! ボクはこのゲーム3回しかやった事ないんだじぇ!」

「私は今回が初めてだ」


 遅くまでゲームで遊んでいた二人は眠くなったらしい。

 普段利用してない和室に布団を引いて寝かせた。

 あれだけ反目し合ってたのに、仲よく寝息を立てている。

 やはり同年代の仲間がいると嬉しいのだろう。


 騒々しかったけどなんだかんだで今日は楽しかった。

 たまには皆で集まって食事をするのも良いもんだ。


 商売も探索ももっと頑張ろう――。

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