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第42話 新天地にて営業開始。5000回目で待望のアップデート! 

 9月初旬。

『所川迷宮ショッピングセンター』にて初の営業開始となった。

 

 ショッピングセンター内は小規模の店舗が立ち並び、様々な商品を取り扱っていた。

 もちろん、ダンジョン探索士が一番の商売相手なので店舗の特色としては、武器屋、防具屋、道具屋、魔石屋、素材屋、鍛冶屋、薬屋、服屋などの細かい専門店が多い。

 『スキル使用特別許可区域』に指定されているため、店員はスキルや魔法を使用して営業を行う事が出来る。


 四階建ての店内には200を超える様々な店舗が出店していた。

 東京中野にある「中野ブロードウェイ」の様な雰囲気の、どことなくマニアックで猥雑な商業施設だ。


 俺と美波は車で一時間かけ、期待に胸を膨らませ開店の準備を行った。

 俺たちの店『スキルガチャ屋只野』は広さ3坪程度のミニマム店舗である。


 店の看板とテーブルを持ち込んだだけで、内装も以前の店舗のままの真っ白な殺風景なもの。

 とは言え、自分の店を持てたのは素直に誇らしい。

 今後はこの我が城にて天辺へ登る足がかりを築きたい。


 今までの営業先である『南新橋ダンジョン』とは規模がまるで違う。

 田舎の中規模ダンジョンから、全国区の知名度を誇る巨大ダンジョンの商業施設での出店。

 さぞかし人も集まるだろうと思いきや……。 


「全然人来ねー」

「こら、頬杖を付くな」


 美波がガラステーブルに肘をついて頬杖を付く。

 開店してから一時間。ここまで客は数えるほどしか来ていない。

 しかも以前の常連客がお情けで来店してくれただけ。


 『南新橋ダンジョン』の様に中級者の狩場ならいざ知らず、こんな大型ダンジョンで【N】スキルを求めている者なんていない。


 おまけにここのショッピングセンター内は専門店が立ち並んでいる。

 スキルカードを取り扱う競合他社も多いというわけだ。

 【R】や【SR】が必要ならガチャを引かずにカードショップで直接購入するかもしれない。


「これは参ったな。最悪な場所に出店してしまったかもしれない」

「んなこと言ったって『南新橋』にはもう客来ないっしょ。んじゃここで頑張るしかないっしょ」

「そうだな……」

「そういやそろそろガチャ5000回になるんじゃなかったっけ」

「ああ。ムッツが言うにはそろそろ俺のガチャにもアプデが導入されるかも知れない」

「神アプデだと良いね」

「珍しく良い事言うじゃないか」

「だってこのままだとガチャ屋潰れちゃうじゃん。私の収入源が絶たれる」

「……お前は自己中の権化か」


 気遣いの言葉をかけてくれるなんて珍しいと思っていたら、案の定そんな理由かよ。

 ガチャ屋廃業という言葉が重くのしかかる。




 その後、上級探索士が何人か冷やかしで引きに来て「【N】のパッシブか。ゴミだな」と文句を言ってカードを投げ捨てた。

 美波は「二度と来るなスッタコ」と客を罵倒しながらも、ちゃっかりカードを拾い上げて懐に入れた。

 ネコババするなよおい。


  

 初日の売上は散々だった。

 もうすぐ閉店の準備でもしようかと考えていると、最後の客が10連ガチャを引いてくれたおかげで通算5000回に達した。


 すると突然、目の前にドロンと煙を上げながらもう一つのガチャ筐体が現れた。

 俺と美波の前には二つのガチャ筐体が並んでいる。

 例の機械的な女性の声でアナウンスが流れた。 



≪五千回の御利用誠にありがとうございました。『スキルガチャダス』の仕様はアップデート致しましてver1.0.3に変更致します。新たに『1日10回限定【R】以上確定ガチャ』を追加させて頂きます。ご理解とご了承を何卒よろしくお願い致します≫



 『1日10回限定【R】以上確定ガチャ』だと?

 今までのガチャ筐体の隣に『【R】10』と書かれた赤い筐体が追加されていた。

 わけも分からずアナウンスに質問してみる事にした。


「『1日10回限定【R】以上確定ガチャ』ってのはどういう仕組なんだ?」

《1回1万円で引くことが出来、【R】以上が確定で排出されるガチャになっております》

「凄いなそれは! あ、でも1日10回までしか引けないのか」

《その様になっております。今までのガチャ筐体は通常通り使用可能となっております》

「なるほどな。二つのガチャを上手く利用しろって事か」


 新たにもう一つのガチャ筐体『【R】10』が現れた。

 便宜的にこれまでのガチャを『初号機』と呼ぶことにした。

 これは『【R】10』を上手く宣伝すれば客足が遠のいていた現状から脱却出来るかも知れないぞ。




 



 翌日、カメラマンを引き連れた女性アナウンサーが俺の店へとやってきた。

 『所川迷宮ショッピングセンター』の新店舗を紹介する番組だ。


 地元のローカル局の情報番組で放送されるらしい。

 youtuveでも取り上げられており、『所川ダンジョン』が全国的な知名度を誇るため探索士界隈では人気のコンテンツだ。


 これは大きな宣伝になるかもしれない。

 ディレクターが撮影開始の合図を出すと、テンションの高い女性アナウンサーがやって来て俺に質問する。


「みなさんこんにちわー。『所川迷宮ショップチャンネル』の時間です。本日は先日オープンしたばかりの『スキルガチャ屋只野』さんのお店に来ております。店主の只野さん、よろしくおねがいします」

「どうもよろしくお願いします」

「早速ですが、『スキルガチャ屋』とはどういったお店なんでしょうか? 説明をお願い致します」

「はい。こちらのガチャ筐体に一万円を入れるとスキルカードを一枚獲得する事が出来ます」

「わー。すごいですね。これは有名なスキル『ガチャ』に関連した能力なんでしょうか」

「あはは。詳しいことは自分でも分かりません。どなたかこの『スキルガチャダス』の能力についてご存知の方がいれば教えて頂けますと助かります」


 女性アナウンサーが愛想笑いを浮かべる。

 ディレクターがカメラの後ろでガチャを指差すと、彼女は「自分もガチャを引いてみたい」と言い出した。


「それではこちらの挿入口に一万円を入れてください」

「電子マネーには対応してないんですか?」

「あはは。すみません。一万円札のみ受け付けております」

「よーし。それでは早速ガチャを引いてみたいと思います! ここを回せばいいんですね? それ! ……出ました! 【N】パッシブスキル:『氷魔法上昇(1%)』でした。これは当たりなんでしょうか?」

「ノーマルカードですね。悪くはないですが当たりでもないですね」

「残念です! レアカードを引きたかったなー」


 あちゃーと大袈裟に落胆する女性アナウンサーに俺は、もう一つのガチャ『【R】10』を紹介した。


「それならこちらの『【R】10』を引いてみませんか? 1日10回限定ですがレアリティ【R】以上が確定のガチャなんです」

「ええっ!? レアカードが確実に引けるんですか! 私も挑戦してみてもよろしいでしょうか?」

「どうぞどうぞ。普段は10連ガチャを引いてくださったお客様限定となっていますが、本日はサービスとさせて頂きます」

「わー! それじゃご厚意に甘えて『【R】10』を引いてみたいと思います! こちらのレバーを回してと……出ました! 【R】炎魔法:『ジェネフレイム』です!」

「おー。これは超大当たりですね。強烈な炎魔法が使える様になる便利なスキルカードです。数十万円で取引されてますね」

「キャー! やったー。一万円で引いたガチャでこれだけのレアカードをゲット出来る。実に夢のある『スキルガチャ屋只野』さんでした。それでは皆さんまた次回の放送で会いましょう! さようなら~」




 ディレクターからカットの合図が出て『所川迷宮ショップチャンネル』は終了した。

 カメラが止まると、あれだけ愛想が良かった女子アナの表情が能面の様な無表情に変化した。

 オンオフの切り替え凄えな。



 さぁ、この放送を見てどれだけの人が集まってくれるか。

 『【R】10』の紹介も出来たし、女子アナはまずまずのレアカードを引いてくれたので良い宣伝になったのではないか?

 客足が戻ってくれるのを期待しよう――。

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