第30話 タイプの違う敵に大苦戦。果たして間に合うのか
魔法が効かないこのカバには物理系の攻撃でダメージを負わせるしかないか。
俺は背中に背負った猟銃を取り出すと、カバの土手っ腹目掛けて『魔弾』を放った。
カバの下っ腹に着弾したはずが、出血はおろか、傷すら付いてないように見える。
なんて固さだ。
威力のある猟銃での『魔弾』攻撃すらダメージを与えられないというのか。
「ヒッポポ~!!」
またもあの高速肉弾タックルだ。
15メートルくらいの距離も一瞬で詰められてしまう。
ギリギリで『疾駆』を発動しローリング回避を決める。
「魔法も駄目、銃も駄目ってんならこの鬼金棒で攻撃してみるしかないか」
俺の一番パワーのある攻撃『ヘビースイング』を奴にお見舞いするしかない。
それで倒せない場合は正直詰みかもしれん。
突進を終えて、こちらに方向転換する前のカバに全速力で接近し、奴の土手っ腹目掛けて『ヘビースイング』を放った。
金属バットは精々1キロ未満だが、この金棒は10キロ以上はある。
『筋力上昇(小)』で強化された今の俺の腕力なら振り切れる。
ドボォ!!
アッパー気味に繰り出したスイングは、カバの下っ腹に直撃し、周囲に凄まじい衝撃波を放つ。
ところが、奴の分厚い皮には傷一つ付かない。出血もなしだ。
「これでも効かないのか! ……ん?」
一見してノーダメージに見えるが、目に見えてカバの動きが止まった。
足に来たボクサーの様に、後ろ足が震えてる。
これはもしかして、内部では大きなダメージを受けてるって事か?
今の『ヘビースイング』で内臓がシェイクされたのかも知れない。
チャンスだ!
俺は金棒を肩に担ぎ、またも『疾駆』で急接近して、そのままの勢いで『ヘビースイング』を放った。
ほぼ同じ箇所にぶち込んだ金棒は、奴の胴体にめり込んで、遅れて風圧と衝撃が広がる。
「ヒポポポポ~……」
カバ野郎はそのまま犬が地面に寝る時のような格好で、横向きに倒れた。
荒い息を吐きながら吐血している。
どうやら『ヘビースイング』を受け内臓を痛めたらしい。
可愛そうだが弱肉強食の世界だ。
俺は金棒を振りかぶると、魔物の側頭部目掛けて振り下ろした。
カバとの闘いに大分時間を取られた。
残りは5分15秒ほど。
シロクマが住んでいそうな氷山のエリアに到着し、敵を探す。
今回はあっさり見つかった。
隠れもせず、堂々と分かりやすいところにペンギンらしき魔物が一匹立っている。
頭に王冠を被っており、なにやらペンギンにしては高貴で知的な印象だ。
敵までの距離30メートルといったところか。
魔物である以上容赦はしない。
先制攻撃で俺は『魔弾』をありったけぶち込んでやった。
俺が放った『魔弾』はあの偉そうなペンギンに到達する前に、空中で静止した。
なにやら目には見えないバリアのようなもので守られているらしい。
銃弾は数秒止まって、回転を終えるとそのまま地面に落下した。
今度はこちらの番だと言わんばかりに王冠ペンギンは右手をこちらに向けた。
猛烈に嫌な予感がする。
その場に佇んでいる事は危険だと察した。
全力で横っ飛びすると、俺のいた場所に空から氷の氷柱が落下してきた。
それも先端が鋭利に尖ったものだ。
奴め。完全に殺しにきている。
頭に来たので全力で疾走し距離を詰める。
金棒で奴の小さな胴体を打ち抜いてやろうと思った。
俺の動きに気付いたペンギンは、左手をこちらに向けた。
これまた嫌な予感がした。
俺は直進の動きを、横向きに変え、敵の射線上から離脱した。
この動きが奏功した。
ペンギンの左手からこちらに向かって、氷の波が襲ってきた。
直線上に、氷の衝撃波が十数メートルに渡って現れた。
凄まじい魔力だ。
『ハイコールド』くらいの威力はある。
無論、食らったら一瞬で氷漬けだ。
あんな強力な魔法がある以上近づくに近づけない。
これは遠距離攻撃で戦うしかないか。
遠方から『ジェネサンダー』『プチウインド』を放つも、あの透明なバリアに守られ、ダメージを与える事が出来ない。
やはりあのバリアをどうにかしなければならないようだ。
『魔弾』や『乱れ撃ち』ではバリアは破壊出来そうにない。
そこで俺は猟銃で『溜め攻撃』+『魔弾』のコンボ攻撃を繰り出してみる事にした。
敵の氷魔法を掻い潜り、チャージ時間を見極め、猟銃からエネルギー弾を放つ。
バリン!
見えない壁に亀裂が入る音が聞こえた。
これは効いてるぞ!
ずっと涼しい貴族のような表情だった敵が、初めて焦りの顔を見せた。
敵は焦って周囲に氷魔法をばら撒いた。
あちこちに氷の塊が積み上がる。
俺はその氷の塊を遮蔽物にし、身体を半身にして隠すと、再び猟銃で『溜め攻撃』+『魔弾』のコンボ攻撃を繰り出した。
ドバァン!
手応えありだ。
見えないバリアは完全に破壊されたらしい。
ずっと不動だったペンギンはこのままではやられると察し、ヨチヨチとペンギン歩きで逃走を始めた。
残念だったな。
魔法攻撃極振りの危険な魔物よ。
その程度のスピードじゃ探索士からは逃れられないぜ。
俺は一瞬で距離を詰めると、『ヘビースイング』で王冠ペンギンの体をゴルフボールの様に打ち飛ばした。
今のペンギンが最後だと思ったが違うらしい。
電光掲示板を見ると残りは2分40秒ほど。
終了のアナウンスが流れてないという事は魔物をすべて倒していないという事になる。
残るは出口の扉の前の、草むらだけだ。
辺りを見渡すも、敵の存在は確認出来ない。
「不味いぞ! もしかしてうち漏らした敵がいるのか? これは戻って最初から確認してみるか」
氷山エリアに水溜りエリア、林エリアにサル山エリアと全速力で駆け戻ったが、敵の姿は確認出来ず。
一体どういう事だ?
「どこだ!? 一体どこに敵はいるんだ?」
俺は各エリアを懸命に探すも、やはり生き物の気配はしなかった。
これだけ探しても見つからない。考えられるとしたら残りは出口前の草むらだけだ。
草むらに這いつくばって敵を探す。
虫の様に小さい魔物かもしれない。
コンタクトレンズを探すように草むらをくまなく探し回った。
だがいない。
やはりいない。
まったく見つからない!
残り時間は1分30秒を切った。
「くっそー!! こんな幕切れあるかよ! ふざけんなよ畜生ーっ」
俺はやけくそになって四方八方に『乱れ撃ち』を放った。
やたらめったら銃弾をぶっ放す。
魔法も癇癪を起こした子供のように、ありったけ周囲にお見舞いした。
「ピギャ!」
ん? なにか悲鳴が聞こえたぞ?
一体どこからだ。
草むらの端っこから何かが浮かび上がる。
大型犬くらいの大きさの爬虫類がいた。
頭を銃弾で貫かれたらしい。
「こいつカメレオンか? ……そうか! 透明になっていたのか。通りでどこを探しても見つからないわけだ。ってこんなん分かるかよ! ふう。でもまあやけくそになるのも時には悪くないな」
≪すべての魔物の討伐に成功しました。2ndステージは終了となります。合格者はこの後のクリアタイムの集計により決定します≫
アナウンスが流れ、クリアタイムの集計に入るとの事。
あとは運を天に任せるだけだ――。
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