第29話 タイムアタック! 時間内に敵を倒せ
倉庫内は1stステージより広く、武器だけじゃなく様々な防具が用意されていた。
中世ヨーロッパ風の盾や鎧もあれば、戦国時代のサムライが着る甲冑もあり、機動隊が着るようなアンチ暴動ボディーアーマーもある。
俺は着慣れたボディーアーマーと拳銃、猟銃を装備し、更に地獄で鬼が振り回してそうな金棒も持ち出した。
かなりの重量だが筋力上昇(小)のおかげで問題なく振れる。
『魔弾』で倒せない固い敵が現れるかもしれないので『ヘビースイング』用の武器を用意した。
準備が整い倉庫の扉を開けた。
魔物のいると思われる部屋に入る。
中は想像以上に広く、縦横高さは大体体育館くらいはあるだろうか。
内部は動物園のあらゆるエリアをくっつけた様な構造になっていた。
猿が住んでるサル山だったり、ワニが暮らす水溜りだったり、シロクマがいそうな氷山だったり、蛇が潜む林だったりと様々だ。
アナウンスと共に電光掲示板のカウントダウンが始まる。
≪10分以内にすべての魔物を討伐してください≫
「よし! 急げ!」
時間がない。これはタイムアタックだ。
まずは一番近いサル山に向かってみる事にした。
すると、岩山の天辺から物陰が見えた。
何やら小さな獣らしい。
拳銃を発砲するも、一瞬で姿を隠されてしまった。
「速い! 距離もあるし拳銃じゃ当たらんぞ」
またもや岩山の天辺に獣の残像が浮かび上がる。
発砲するも、またもや姿を消されて当たらない。
「もぐら叩きかよ! これじゃ時間取られちまう。ええい、魔法で範囲攻撃を仕掛けるか」
雷魔法:『ジェネサンダー』を岩山目掛けて繰り出した。
敵が潜んでいそうな辺りに闇雲に打ち込む。
やがて「ウギャ」と獣の叫び声が岩山の天辺から聞こえる。
猿型の魔物が岩山から地面に落下していき、地面に叩きつけられると、魔石と素材を残して消失した。
まずは一匹仕留められた。
あれだけ『ジェネサンダー』を放ったのだから岩山にいたのはあの猿一匹らしい。
短時間でクリア出来たのは良しとしよう。
ならば次のエリアだ。
サル山の近くの木が鬱蒼と茂った林ゾーンに侵入する。
大蛇が出てきそうで不気味だが、文句は言ってられない。
いつ巨大な蛇に襲われてもいいように、金棒を握りしめていると、葉の間から何かが飛び出してきた。
「うわっ! なんだコウモリか」
小さなコウモリがこちらに向かって飛び出してくる。
大きさは手のひらサイズだ。
この程度の小物の集団攻撃、耐久上昇(小)を身に付けている俺にはノーダメージだ。
だがなんとなくコウモリは不衛生だというイメージがあるので、『疾駆』を使って回避行動に入る。
敏捷上昇(小)でスピードも補正されているので、一瞬で10メートルほどの距離を取れた。
ところが、コウモリたちはこちらに向かってまた飛んでくる。
どうやらこのコウモリたちは倒すべき魔物らしい。
俺は一旦、林ゾーンから飛び出した。
それでもしつこくコウモリの群れは追ってくる。
邪魔くさいので『プチウインド』を放ってみる。
少しだけ風に煽られただけで、ノーダメージだ。
続いて猿にも効いた『ジェネサンダー』を放ってみる。
ところが、これもダメージを与えられず。
おかしいぞ。普通飛行タイプは電撃に弱いのがセオリーじゃないか?
氷魔法:『ジェネコールド』を放ってみるもやはり効かない様子だ。
「これは魔法耐性のある魔物って事か?」
仕方ない。一掃は諦めて、物理攻撃でちまちま倒すしかない。
そうだ。こんな時にうってつけのスキルを習得したんだった。
俺はスキルを発動させ拳銃の中にエネルギーを充填していく。
チャージタイムが終わると敵は2、3メートル付近にまで迫っていた。
「食らえ! 『乱れ撃ち』だ!」
コウモリの集団目掛けて新スキル『乱れ撃ち』を放った。
銃口からまるで散弾銃のようにエネルギー弾が飛び交う。
四方八方に散った弾丸は見事にコウモリ達に着弾した。
羽や胴体を撃ち抜かれたコウモリは地面に落下し、消失した。
わずかに残ったコウモリも、一度冷静に距離を取り『魔弾』を放つ事によってすべて討伐出来た。
もう一度林ゾーンに戻る。
鬱蒼した木々の中から、またコウモリの集団が出てきたら面倒だなと考えていたが、その心配は杞憂に終わった。
無事林ゾーンを抜けると、今度は水溜りが現れる。
沼っていってもいいくらいのサイズ感で、ワニが飛び出してきそうで恐ろしい。
天井付近に設置された電光掲示板を見ると残り7分30秒。
残りのエリアから想像するにあと2、3体は討伐しなければならないだろう。
こっちは急いでいるのに水溜りからはなんの物音もしない。
「くっそ! いるのは分かってるんだから勿体ぶってないでさっさと出てこいよ!」
怒りに任せて猟銃を水溜りに向かってぶっ放す。
すると、のそりと姿を現したのはワニでも魚でもない予想外の魔物だった。
「なっ!? カバかよ」
「ヒッポ~!!」
カバ型の魔物は俺の攻撃に少しおかんむりだった。
今まで対峙した魔物よりも遥かに大きなその巨体に戸惑うが、姿を見せたならこっちのもの。
水辺の魔物は電撃に弱いはず。
先制攻撃を放ってやるぜ。
『ジェネサンダー』をお見舞いする。
「ヒッポ~?」
「なに? 全然効いてないだと!?」
いや、表面はわずかに焦げているところを見ると、効いてはいる。
だが、どうやらあの分厚い皮下脂肪のおかげで中までダメージが浸透しないらしい。
『プチウインド』を放つも、そよ風のようにびくともせず、『ジェネコールド』を繰り出すも、一瞬で氷結化が解かれてしまう。
こいつも魔法攻撃は効きにくいらしい。
俺の連続攻撃に怒ったのか、カバ型の魔物は俺に向かって突進してきた。
速い!
野生のカバは1トン以上の巨体で時速40キロ以上で走れるらしい。
こいつは魔物だけあって更に速い。
「や、やば……。間に合え『疾駆』!」
間一髪のところでカバの突進攻撃を回避出来た。
恐らく今のはアクティブスキル『疾駆』が間に合わなかったため、『緊急回避』が発動したとみられる。
今の俺の耐久性能ならあの突進でも致命傷にはならないだろうが、打ち所が悪ければ重傷を負う。
治癒魔法:『ジェネヒール』をちまちまかけていたらタイムアップを迎えてしまう。
あのカバ野郎を倒すにはどうすればいいか。
これまで戦った中で飛び切りの強敵を相手に、俺の思考は高速で回転していた――。
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