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第26話 二次試験は戦闘テスト! 1stステージの相手『ジェルレム』

『屋内トレーニングセンターWEST』1階のフロアにアナウンスが流れる。

 皆一斉に雑談を止め、正面の壇上に注目した。


 40代くらいの背筋がスッと伸びた厳しそうな女性が登壇すると、試験内容の説明を始めた。



「皆様。本日はB級探索士昇格試験 二次試験会場にお集まり頂きありがとう御座います。これから二次試験の説明に入りたいと思います。内容としては至ってシンプルで御座います。皆様にはこれから戦闘テストを受けてもらいます。これまでの一次試験で皆様の知識や体力といった基礎能力は確認済みです。あとはいかに実戦でプロの探索士に相応しい能力を発揮出来るかを証明してもらいます」


 戦闘テストか。

 事前にリサーチしていた通りだ。


 この日のためにGPを出し惜しみせず全て注ぎ込んでガチャを回してきた。

 スキルはかなり充実したと思う。

 あとは実戦でどこまで実力を発揮出来るかだ。


 壇上で女性が説明を続ける。


「まずは全参加者に1stステージに挑戦して頂き、突破出来た者だけが2ndステージへと進出することが出来ます。不合格を言い渡された方は残念ですが、今回はその場で失格となり、また次回以降のご参加をお願いします。3rdステージをクリア出来た者が三次試験である最終試験に参加する資格を得る事が出来ます。戦闘テストという特性上どうしても怪我人は出てしまうものですが、どうか大きな怪我の無いよう、お気をつけ下さい。それでは皆様のご健闘をお祈りします」 


 やはり怪我人が出ることは大前提らしい。

 これは気を引き締めなければ。





 係員の指示に従って、番号の若い順に呼び出されていく。

 どうやら1stステージは1番から順に行っていくらしい。


 その場は一旦解散となり、一階ホール内であれば自由に行動してもいいとの事。

 順番が来たらアナウンスで呼び出されるらしい。



 一時間後、遂に俺の番号が呼び出される。

 先に呼び出された美波が帰ってこないのが気になる。


 多少どぎまぎしながら指定された三階へと向かった。

 三階には、通路と長方形の僅かなスペースがあるだけの狭い空間だった。

 等間隔に複数の扉があり、そこから先がどうなっているのか分からない。

 ホテルの客室の前の渡り廊下の様な光景だと言えば理解出来るだろうか。


 黒服の係員が何度も繰り返したであろう説明を始める。

 

「扉を開けるとまず最初の部屋は武器庫になっていて、好きな武器をお選び頂けます。更にもう一度扉を開けると中に()()()()がいますのでスキル等を自由に活用して魔物の討伐を行ってください。魔物のいる部屋に入った瞬間にカウントが始まります。3分以内に魔物を討伐出来た方は合格となります。それでは頑張ってください」


 説明はそれだけだった。

 他の参加者が質問をするも「お答え出来ません」の一点張りで箸にも棒にもかからなかった。


 とりあえずやってみるしかないな。

 武器庫にどんな武器があるのかが心配だ。

 扱い慣れていない剣とか槍だけだったら厳しいかもしれない。



 係員の号令で、俺たちは扉を開け、それぞれ部屋の中に入っていった。

 部屋の中は8帖ほどの武器庫になっていた。


 壁には細剣、大剣、日本刀の刀剣の類から手槍、長鉈、槍斧と長物まで様々な武器が掛けられている。

 アルミラックには沢山のガンケースが置かれており、俺はそこから使い慣れたグロック17直系のコンパクトモデルであるグロック19を選んだ。

 

 武器の指定は無いので、何を使ってもいいはず。

 適当にガンケースを開け、ライフルやショットガンも何丁か選んだ。


 気になったのが防具が無い事だ。

 鎧も、ボディーアーマーも無い。


 これでは魔物に反撃されたら致命傷を負ってしまうのではないか?

 もっともC級探索士で怪我の治療も出来ない者は失格だと思われてしまうかもしれない。

 スキルは自由に使っていいなら魔法も使い放題のはずだ。





 俺は銃をすぐに発射できる状態にすると、扉を開けて魔物のいる部屋へと入っていった。

 部屋の中は真っ白な空間で、長方形の縦長の造りになっていた。

 扉を閉じるとアナウンスと共に電光掲示板のカウントダウンが始まる。


≪3分以内に中央の魔物『ジェルレム』を討伐してください≫


 たしかに部屋の中央に魔物らしきものが蠢いていた。

 見た目は2メートル程の人型で、どことなくゴーレムを思わせる。

 ゴーレムと違うのは透明で、ゼリーの様な特徴を持っていることだ。

 ジェルのゴーレムで『ジェルレム』ってか?



「時間が無え。悪いがさっさと済ませてもらうぜ」


 俺はまずグロック19で『ジェルレム』に向けて発砲した。

 何発か銃弾が直撃したがまるで手応えなし。

 その柔らかいジェル状の肉体に包まれて、貫通すらしなかった。


「ならば『魔弾』だ。これなら効くだろ」


 SRスキル『魔弾』を発動し、銃弾に魔力のコーティングを付与して発射した。

 

 ブヨン。


 ところが『魔弾』すらも柔らかい身体に包まれて吸い込まれていった。

 これは厄介だ。

 ダメージを与えられているように見えない。



「それなら『溜め攻撃』で『魔弾』の威力を何倍にも上げてやる。これが通じなかった敵はいない」


 俺は数秒のチャージ時間を擁し、銃弾に魔力のエネルギーを充填すると標的目掛けて発砲した。

 ところが、『溜め攻撃』からの『魔弾』でさえも敵に少しもダメージを与える事は出来なかった。

 オウルベアの胴体に拳大の穴を開ける威力があるというのに『ジェルレム』にはわずかにめり込んだだけで、銃弾は体内に吸収されていってしまった。


「なんだと! この攻撃ですらダメだと言うのか。それならショットガンで『魔弾』をお見舞いしてやる」


 結果は同じだった。

 どうやらどれだけ威力はあっても銃での攻撃は通用しないらしい。

 『ジェルレム』は反撃には出ず、ただその場で踊る海草の様に蠢いていた。

 

 

 そうこうしているうちに時計の表示は2分を切っていた。


「クソ! 考えろ。何か方法はないか?」


 そこで俺は自分が持っている攻撃スキルを色々試してみた。

 魔法攻撃を順に試してみる。


 まずはこの日のために習得してきた『ジェネサンダー』。効果なし。

 続いて『ジェネアイス』を放つ。これも効果なし。

 『プチウインド』を放ってもまるで効果なし。

 『ハイフレイム』はマナ切れを起こすので魔力ポーションが使用できない今は試す事が出来ない。

 

「魔法は効かないのか!? 物理も駄目で魔法も駄目じゃどうやって倒すんだ?」


 

 電光掲示板の時計は残り1分半。

 このままでは時間切れで失格だ。


「他に何か使える物はないのか! 武器庫から何か取ってこよう」


 武器庫に戻ってはいけないルールはない。

 中央で鎮座する『ジェルレム』を放置して、武器庫に引き返す。


 刃物は通用するかもしれないと思い、槍と剣を持って引き返す。

 槍を持って突進し、戦国時代の足軽の様に『ジェルレム』目掛けて突き刺した。

 

 突き刺さる手応えは合ったが、穂先がめり込んだ後、途中で槍は止まってしまった。

 やはり貫通は出来ない。


 大剣で思い切り袈裟斬りしてみても、剣はわずかにめり込んでから、弾き返されてしまった。


 最早、万事休す。

 時計の表示は一分を切った。


「え~い! もう何か無いか! なんでもいいから奴に通用する物はないか!」

 

 俺は武器庫を漁り、あちこちを探ってみた。

 すると、そこに場違いな()()を見つけた。


 非常用の消火栓である。

 普段なら別に気にも止めないが、なんとなく気になって蓋を開ける。


 中からホースを引っ張り出し、バルブを開くと水が勢いよく飛び出した。

 そう言えば、水魔法は所持していないため試していなかった。


 俺はホースを握り、『ジェルレム』に向かって放水を始める。

 すると、水を浴びた『ジェルレム』の身体はみるみる膨らんでいった。


 ここに来て初めての変化である。


「おおっ!? 水風船みたいにパンパンに膨らんでいくぞ! これ弱点じゃないか?」


 俺は消防士さながらホースをしっかり握りしめ、ジェル状の化け物に向かって放水を続けた。

 ジェルレムは水を吸収し3メートル、4メートル、5メートルとみるみる体積を膨らませていった。


 時間は残り15秒。

 10、9、8、7、6、5……。


 そこで水を浴び続けた『ジェルレム』がパァンと弾けた。

 同時にアナウンスが流れる。



≪『ジェルレム』の討伐に成功しました。1stステージ合格です≫

 

 無機質な女性の合格発表を聞き、喜びたいところだが、全身ずぶ濡れの為に喜ぶに喜べない。



「水魔法が使えない者のために消火栓を用意してたって事か。合格は嬉しいがとりあえずシャワーを浴びさせて欲しいぜ。まったく――」

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