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第25話 二次試験進出。 試験会場のある東京へ

 3日後、自宅のポストにダンジョン管理協会から『B級探索士昇格試験 一次試験 結果通知書』が投函されていた。


 慌てて部屋に戻って中身を確認する。

 そこには『一次試験合格通知書』が入っており、あなたは一次試験に合格した事をここに通知します。と記されていた。

 俺の点数は記述式テスト126点、体力テストが40点の合計166点だった。

 二枚目の書類には二次試験の案内が記入されていた。



「やった! 受かってた! 自己採点でボーダーラインギリギリだからめちゃくちゃ心配してたぜ」



 思わず嬉しくなって飛び上がる。

 小躍りして喜んでいるとスマホから着信を知らせる音声が流れる。

 相手は美波からだった。



「よう。どうした?」

「一次試験の結果通知書届いた?」

「ああ。今ちょうど結果を確認したところだ」

「その声のトーンだとダメだったみたいだね。ご愁傷さま」

「なんでだよ! 合格してたわ!」

「え……?」

「なんだよ。そのお前が受かってるはずがないみたいなニュアンスの「え……?」は。失礼だろ!」

「てっきり落っこちてると思って励ましの電話をかけた」

「仮に落ちてたとしたらもう少し気を使えよ」



 相変わらず無礼千万な奴だ。

 あの萌仁香とかいう変な少女の気持ちが少しだけ分かった。



「それで、お前の方は結果どうだったんだ?」


 正直聞かなくても分かる。

 記述式テストでろくな点数取れてないだろうし、間違いなく不合格だろう。


「合格してたよ」

「なにーーーっ!? 本当かよ? お前記述式テストの時寝てたじゃないか。よく合格出来たな」

「うん。記述式テストは12点だった」

「12点って! 1問3点だから4問しか正解しなかったのか……。俺の十分の一じゃないか。それでどうやって合格出来たんだ?」

「体力テストが全部1位だったから150点だった。合わせて162点で合格」

「た、体力テスト全部1位かよ……」


 女子の部は結果を見てないから知らなかった。

 冗談みたいな話だがこいつの身体能力なら無理ではないだろうと思っている自分がいる。


 探索士の両親から一体どんな過酷な訓練を受けて育ったのだろうか。

 それこそオリンピックを目指すアスリート並の鍛錬を積んできたのかもしれない。

 パッシブスキルなしでもコイツは十分化け物って事か。


「それじゃ二人揃って二次試験に参加出来るな。とりあえず安心だな」

「そう。その事で電話した」

「? 一体なんだ」

「二次試験が行われる東京までの交通費貸してくんない?」

「……お前少しは貯金しておけよ」






 翌週、二次試験が行われる東京まで新幹線で向かった。

 「贅沢だから高速バスで行け」と美波に言ったら「尻が痛くなる」と言われ断られた。

 学割が適用されるからまあ良しとする。


 上野で降りてJRとメトロを乗り継ぎ、目的の場所に到着した。


 足立区の端っこ、埼玉との県境にある『探索士ナショナルトレーニングセンター』が二次試験の会場だ。

 日本初のトップレベル探索士用トレーニング施設として設置され、隣接した研究施設『国立ダンジョン・魔物研究センター』との連携を図りながら、世界で通用する次世代のダンジョン探索士育成に取組んでいる。


 会場の『屋内トレーニングセンターWEST』に入ると黒服を着た係員に、結果通知書に同封されていた案内を渡す。

 すると番号が書かれたバッジが渡される。

 俺の番号は187。

 ()()番号だ。


 美波は77番だった。

 ラッキーセブンでいい番号だ。



 『屋内トレーニングセンター』は地上3階、地下1階の建物で各フロア毎に様々な設備が用意されていて東館と西館、中央館に分かれている。

 案内された1階に向かうと既に数百人の男女が詰めかけていた。

 東日本中から一次試験を突破したC級探索士が一堂に会していた。



 その中で見知った顔を見つける。

 半袖のセーラー服に宇宙柄のスカートに身を包み、桃色の髪の毛をツインテールにしている例の格好の少女だ。

 向こうもこちらに気付いて走り寄ってくる。



「なんだ。あんた達も受かっていたのか。てっきり一次試験で落ちたと思ったじぇ」

「萌仁香さんだったか。お互い受かっていて良かったな」

「一次試験なんかでボクが落ちるわけないじぇ。ボクは最年少C級探索士昇格記録を持つ天才美少女今浪萌仁香様だじぇ!」


 そう言って萌仁香は鼻息荒く偉そうに大きな胸を張った。

 ギャラリーの男たちが萌仁香を見て、噂話を始める。


「あいつが今浪萌仁香か。探索士試験合格からC級合格までわずか一週間で成し遂げた天才少女だな」

「ああ。一時期話題になっていたな。マスコミにもガッツリ取り上げられてたし。それからパタンとメディアで見かけなくなったな」


 その話を聞き萌仁香は奥歯を噛み締め、怒りを必死に堪えるような表情へと変わった。

 何かを内に閉じ込めるように小刻みに震えている。

 更に男たちの噂話は続く。 


「ところが、その最年少C級探索士昇格記録も同い年の女子高生にあっさり塗り替えられちまったんだよな。なんて言ったっけ? 日本人形みたいな暗そうな子だったよな」

「あー、たしか北だとか南だとかそんな感じの名前だったな。陰キャっぽい感じの」


 そこで萌仁香の怒りが頂点に達した。


「そうだじぇ! 美波! お前のせいでボクのメディア進出企画もポシャってしまったんだじぇ! せっかく付いてくれたスポンサーもお前のところに向かったなんて話を聞いてるじぇ」

「あー。なんかサングラスしてセーターをプロデューサー巻きにした胡散臭いおっさんが来たな。ちゃんと話聞いてなかったけど」


 美波がかったるそうに耳を掻きながら答える。

 萌仁香は憤怒の表情で美波を指差し食ってかかる。


「くっ。ともかく! 今まではお前に花を持たせてやったけどこれからはそうはいかんって事だじぇ! 最年少プロ探索士記録はボクが作るじぇ! 大切な夢をこれ以上お前なんかに邪魔させないからな!」

「私がお前に一体何をした」


 萌仁香は言うだけ言ってくるりと身を翻し、去っていった。

 嵐の様な奴だ。




 派手な格好の少女が去ると、今度は派手な格好の青年が近づいてきた。


 赤茶色のレザージャケットに革パン。ロッカーかバイカーの様なファッションだ。

 髪の毛は金色に染め、様々な色のメッシュが入っている。

 身長は190センチは有りそうだ。


 あまりお近づきになりたくないタイプの人間だ。

 その男は俺に歩み寄り話しかけてきた。



「あんたがガチャ屋只野ね。あら。思ってたよりいい男じゃない」



 男が発するオネエ口調に驚いた。

 長身の派手な外見からヤンキーぽい言葉遣いを予想していたが見事に外れた。


「え、えーと。ガチャ屋只野ってのは俺だが……。あんたは一体どこのどなただ?」

「あら、ごめんなさい。私は巷ではムッツのあだ名で通ってるわ。あなたもそう呼んでくださる?」

「あ、ああ。ムッツさんか。俺になにか御用かな?」

「挨拶にきただけよ。お世話になるかもしれないから。今後ともよろしくってね」

「は、はあ」


 そう言ってムッツは片目でウインクした。

 生でオネエを見たのは初めてなので大分面食らってしまう。

 しかしあだ名がムッツって。マツコとかミッツとかはTVで見たことがあるけど安直すぎないか?


「そう言えばガチャはこれまで通算何回引いてきたのかしら?」

「あと数百回で5000回ってところだな」

「そう。それじゃそろそろ()()()()があるかもね」

「お前『スキルガチャダス』について何か知ってるのか?」

「いいえ。ただ『ガチャ』のスキルの中にはアップデート機能の存在が確認されてるものもあるわ。あなたの『スキルガチャダス』も同じかと思って聞いてみたの」

「そうだったのか。やはり有名な『ガチャ』とは関連性があるのだろうか」



 そこで係員から試験内容説明開始のアナウンスが流れ始める。

 ムッツは「バァ~イ」と手を振って人混みの中に消えていった。


 まだ謎の多い『スキルガチャダス』。

 情報をもっと集めたいところだ――。

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