第23話 一次試験開始! まずは記述式テストから
エントリーを済ませると二階の会議室の様な試験会場に足を運んだ。
一次試験は、記述式テストから行われる。
その後、横に併設された陸上競技場と体育ホールにて男女に分かれて体力テストが実施されるとの事。
記述式テスト150点、体力テスト150点の合計点が高いものから順に、二次試験に進むことが出来るとの事だ。
二次試験は東日本エリア、西日本エリアに分かれ、会場はそれぞれ東京と大阪で行われる。
俺たちは関東の端っこ在住なので一次試験に合格すれば東京へと向かう事になる。
交通費はもちろん自腹である。北海道や沖縄在住の人は旅費が大変だ。
それでも皆、プロの探索士を目指しているのだ。
それくらいの費用はポンと払うだろう。
プロ探索士になれば人生が一変するのだからな。
受付で配られた受験番号の席に座る。
俺の番号は042だった。
不吉な。死に番じゃないか!
いやいや。考え方を変えよう。
偉大なメジャーリーガー、ジャッキー・ロビンソンの背番号として前向きに捉えよう。
この手の試験は第一種猟銃免許の試験を受けて以来で約7年ぶりだ。
書店で『絶対合格!! B級探索士昇格試験記述式テスト問題集』を購入し、繰り返し学習してきたので多少は自信がある。
試験官がやって来て記入の仕方やカンニングの禁止などを説明し、全員に試験問題と、マークシート、鉛筆、消しゴムが配られた。
定刻を迎え、「それでは試験を始めてください」と号令が出された。
皆、一斉に試験問題を開いて中身を確認する。
会場内にマークシートに名前と年齢、受験番号などを記入する鉛筆の音がこだまする。
(俺も早速試験内容を確認するか。どれどれ……。)
問1【N】パッシブスキル:『土魔法上昇』を3回使用した状態で、【R】パッシブスキル:『土魔法ブースター』を使用した場合の『土魔法上昇』比率を次の4つから選べ。
A 5%
B 6%
C 9%
D 15%
(【N】パッシブスキル:『土魔法上昇』は1%だから3回使用して3%。【R】パッシブスキル:『土魔法ブースター』は『魔法上昇』効果を2倍に出来るので答えはBの6%だ。簡単だ)
問16【R】治癒魔法:『ジェネポイズンケア』を使用した際に解毒出来ない生物毒を次の4つから選べ。
A サソリ毒
B クモ毒
C ハチ毒
D キノコ毒
(あれ? これなんだっけな。確か【N】治癒魔法:『プチポイズンケア』ではサソリ毒は解毒出来なかったんだけど。キノコ毒ってなんだ? キノコ型の魔物が胞子を飛ばして毒を与えてくる攻撃の事か? うーん。とりあえず保留。分かる問題から解いていこう)
問35【SR】魔法を使用するために必要な、【SR】『魔力上昇(中)』に匹敵する魔力上昇効果を付与出来る装着品に該当しないものを次の4つから選べ。
A 聖女の首飾り
B 夜闇のハンチング
C 魔人のテーラードジャケット
D 熾天使のピアス
(えーと、これは確か聖女の首飾りだったかな。あれ? 熾天使のピアスも『魔力上昇(中)』を得られたと思うけど……あっ! これ該当しないものを選べか! となると夜闇のハンチングだな。これは暗闇無効になる効果だけだったと思う。Cに関しちゃなんの効果を得られるか分からないけど、該当しないものを選べというのならBだな)
問41【R】アクティブスキル:『清流剣』の威力上昇を図るにはどのパッシブスキルを合わせて習得すれば相乗効果を得られるか次の4つから選べ。
A 『水魔法上昇』+『剣装備時攻撃力上昇』
B 『氷魔法上昇』+『斬撃系スキル攻撃力上昇』
C 『魔力上昇』+『剣装備時攻撃力上昇』
D 『水魔法上昇』+『斬撃系スキル攻撃力上昇』
(どれも正解なんじゃないのか? 全てプラスになるパッシブスキルなんだから威力が上昇するに決まってる。あー、これは相乗効果を得られる場合か。となるとAかDだよな。Dは水魔法威力が上がり、斬撃系スキルの威力も上がるので答えはDかな)
問48 Dランク探索士3人を連れて迷宮を探索中、キラーアントの大群に遭遇した場合に考えられるもっとも適切な行動を次の4つから選べ。
A 仲間を囮にして逃走する
B キラーアントが忌避する酒やハッカ水を敵に向かって投擲して時間を稼ぐ
C キラーアントが好む甘い物を自分から遠くに投擲して時間を稼ぐ
D 弱点の炎属性攻撃を使用して戦う
(これまた厄介な問題だ。A以外は全部正解に見えるな。BとCは時間を稼いで逃走なり戦闘に向けての準備をするものか。問題は大群全てが嫌いな物を嫌がって歩みを止めたり、甘い物に釣られて移動してくれるのか分からないって事だ。もし歩みを止めてくれなかった場合、連れのDランク探索士じゃキラーアントに太刀打ち出来ない。これはプロの探索士としての行動の規範を問われている。仲間を守るため答えはDになるだろう)
全50問の回答が終わった。
残り10分ほど余ったのでもう一度記入漏れやケアレスミスのチェックをする。
ふと気になって美波のいる左側の席に目をやる。
なんと、あいつは鼻提灯を作ってうつらうつらと船を漕いでいた。
腕組みをして偉そうに眠りこけている。
(えー。あいつも既に回答を終えたんだよな? そうだよな? ……そう思う事にしよう)
俺は何も見なかった事にしてもう一度答案の確認を行った。
記述式テストが終わり、全員が体力テストが行われる隣りの陸上競技場と体育ホールに向かった。
美波に試験の出来を尋ねたら「途中から全然覚えていない」という返事が返ってきた。
……こいつに関しては体力テストに賭けるしかなさそうだ――。
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