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第18話 新四天王登場! 氷結の貴公子

※4/12 読者様から矛盾のご指摘があった為、第11話以降の【SSR】スキルの内容を『耐久上昇(特大)』→『光魔法耐性(特大)』に変更しました。ご了承下さいm(_ _)m



本日まで二話投稿とさせて頂きます。

ラスト二話目どうぞ!

 五月中旬。

 俺と美波はいつも通り『南新橋ダンジョン』にてガチャ屋の開店の準備をしていた。

 空は見事な快晴だ。


「五月晴れだな」

「五月晴れって六月の梅雨の晴れ間の事でしょ」

「確かどっちでもいいんだよ」

 

 店の前には既に大勢の客たちが行列を作っている。

 他のお店に迷惑がかからないように、並び方の注意書きの看板も立て掛けた。

 まるで人気ラーメン店のようである。 



 行列を無視してモヒカン頭の筋肉質な男が近付いてきた。

 袖のないGジャンを着たワイルドな風貌な男だ。 


「よう、あんちゃん。精が出るな」


 モヒカンは俺と美波に缶コーヒーを差し入れしてくれた。


「ようモヒカン。いつもありがとよ」

「気にすんな。俺はもう回数制限でガチャは引けねえが、あんちゃんには偉いお世話になったからな」


 モヒカンは100回のガチャで【SR】を2枚、【R】を15枚引いた強運の持ち主である。

 【SR】アクティブスキル『精神集中』は250万、【R】パッシブスキル『第六感』は100万で売れたらしい。

 売りさばいた金で、傾いていた家業を軌道に戻す事が出来たそうだ。


「俺はしがねえ元探索士だが、あんちゃんなら遥かな高みを目指せるかもな」

「ふっ。まだまだ道の途中だよ」


 俺とモヒカンのハードボイルドなやり取りを冷めた目で美波が見ていた。

 そろそろ開店のため、モヒカンが去っていくと、その背中に声をかける。


「おいモヒカン」

「ん? なんだ嬢ちゃん」

「次からは微糖で頼む」

「……どうやらブラック無糖は早すぎたようだな。オーライ! 次はカフェラテだ」

「甘いのでよろ」


 美波は基本的に無口、無表情、無愛想だがコミュ障というわけではない。

 寧ろしっかりしていると言うか、ちゃっかりしていると言うか。




 『スキルガチャダス』を発現させ、ガチャ筐体が現れると周囲から歓声が沸き立った。

 ガチャ屋を開店すると、札束を握りしめた客が次々と詰め寄ってくる。


 『南新橋ダンジョン』を狩場にしていた常連客は、回数制限に達したり、資金が枯渇したりしたのか、今では大分客の顔ぶれが変わっていた。


 毎日のように新しい顔を見る。

 冷やかしのオッサン、話の種を作りに来た大学生、毛皮のコートを着たマダムに、競馬新聞に赤ペンでチェックする爺様と、噂が噂を呼んだのか、新たな顧客を生み出していた。



 その行列の中でも飛び切り変わった風貌の男がいた。

 髪を青く染め、青いスパンコールの入ったラメラメな上下スーツ。

 遠くから見ても一際目立つ。全身青。



「なんだあの青い奴は」

「モノマネ芸人じゃない?」

「芸能界にまで俺のガチャの噂が流れているのか」

「でも全然売れてなさそう。場末のパブで演歌歌ってそう」


 俺と美波が好き勝手言ってたのが聞こえたのか、全身青男が怒り始めた。


「ヘイ! 全部聞こえてるぞ貴様ら! 俺を一体誰だと思ってるんだ? 俺はあの新四天王の……」

「おい兄ちゃん! 列からはみ出ちゃダメじゃねえか! 皆ちゃんと並んでるんだよ!」

「あ、すみません」


 全身青男はオッサンに怒られてシュンとした。

 どうやら一般常識は身につけているらしい。




 10分後、ようやく列が終わり全身青男が俺たちの前に現れた。

 改めて見ると、衣装は派手だがあまり売れてないホストみたいな奴だ。

 青男は髪の毛をかき上げ、勿体つけながらこう言った。


「待たせたな! ガチャ屋只野」

「お待たせしたのはこちらの方です。ガチャは一回一万円になります。10連ガチャなら11回分のスキルカードを引くことが出来ます」

「待て! 俺はガチャを引きに来たんじゃない。今日はお前をリクルートしに来たんだ」

「えーと、そういう話しは営業が終わってからにしてもらえませんでしょうか」

「んな! ここまで行列に並ばせて、またステイしろというのか貴様!」

「ガチャを引かないんでしたら、わざわざ並ぶ必要は無かったのではないでしょうか? 営業前か営業後にでも話しかけてもらえば済む話ではないでしょうか」

「ザッツライト。た、確かにその通りだ」


 俺たちの会話の内容を聞いてか、後ろの客たちがブーイングを始めた。



「ガチャ引かないならさっさとどけよ!」

「誰だよこの青い奴」

「後ろがつかえてんだから捌けろやボケ」

「くっちゃべってないでどっか行けや!」

「あれ、でもあいつどこかで見た事あるような……」


 確かに客の言う通りだ。

 何も注文せずに居座られたんじゃ営業妨害になる。


「すみませんが青いお兄さん。後でお話を聞きますので、一度どこかでお待ち頂けませんか」

「く、くそ! 絶対だぞ。ちゃんと話をリッスンしてもらうぞ」



 

 そう言って青男は去っていった。

 ちょくちょく簡単な英語が交じるのがイラつく。


 それから3時間ほど営業を行い客がまばらになったので店を畳む。

 看板等を片付けて帰宅しようと思っていると、青男が現れた。


「約束通り話を聞いてもらうぞ。只野一人! 全く3アワーズも待たせやがって」

「俺の本名までご存知か。……それであんたの目的はなんだ」

「その前に俺のイントロデュースを始めよう。俺の名は森迫純平。B級探索士にして『氷結の森迫』の二つ名を拝命している。『疾風のアリサ』と並び『新四天王』として次代の探索士業界をリードする人物と目されている男だ」


 『氷結の森迫』か。二つ名が絶望的にダサく感じるのは日本の名字と相性が悪いからか?

 これなら『疾風のアリサ』の方がウン十倍ましだな。


「その『氷結の森迫』様が俺に一体なんのようだ」

「ガチャ屋只野。行列に並んで改めて感じたが、お前は凄まじいポテンシャルを秘めている。まだD級探索士だがいずれはもっと成長していけるだけのポッシビリティーを持っていると感じた」

「俺はC級探索士だ。まーた管理協会のホームページは更新してないのか」

「ともかく! 俺が今後サクセスの階段を登っていくのにお前というピースは欠かせない! 俺のもとに来い! 共にフューチャーを築こう」

「断る」


 俺のバッサリとした切り口に、『氷結の森迫』は唖然としていた。


「い、一体なぜだ? 俺と組めば将来は安泰なんだぞ! もっとしっかり考えてアンサーしろ!」

「偉そうな態度が気に食わないとか断る理由は山程あるが、一つ理由をあげるなら一緒にいて目がチカチカする奴とは組みたくねえ」

「なっ!」



 俺は美波と共に荷物を積み込むと、車を発進させた。

 ルームミラーには夕焼けを反射した青い男が立っていた。

 やっぱりチカチカする。


 呆然と立ち尽くしていたその男は、やがて憤怒の表情で、去っていく車に怒りをぶつけた。



「只野~!! 絶対に許さんぞ! この氷結の貴公子をここまで虚仮こけにしてただで済むと思うなよ! 絶対に報いは受けさせてやるからなっ!」

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