9話 黒帝
武器をしまって息を吐くと、太刀野が前に出てきた。
「何があってもその剣を抜かないでくださいね、もし命の危険を感じたら、剣を抜いてください」
すると俺の前に拳を作り、グータッチをする。
「お互い頑張りましょう」
「おう!」
そう言い太刀野は場所を移した。俺たちの話が終わると、甲村隊の隊長甲村が近づいてくる。
すると、耳を貸せという仕草を見せる。俺も少し近づき、話を聞く。
「菅隊からの命令なんだが、敵の拠点に着いたら、俺らに合図を送れ、はい、これ無線、あとマイクつけ忘れそうだから、俺がつけとく」
無線をズボンに引っ掛けて、マイクを甲村につけてもらった。
「よし、じゃあ話すから聞き逃すなよ、さっきも言ったとおり、敵の拠点に着いたら無線で合図しろ、そして少し警戒しつつ近づき、剣を抜け、俺らはスナイパーを持っている、こちらが合図を出す、左右どちらかに避けるように、それが成功すれば、楽なんだが、致命傷を与えてなければ、お前が仕留めろ、その後どんどん敵が出てくるだろうが、あとは菅隊がやってくれる、と言った内容だ何か質問は?」
俺は大きく息を吸って、大きな声で返事をする。
「わかりました!」
「声でけえ、じゃあ頼んだぞ」
そのまま甲村隊と太刀野はその場を後にする。すると菅隊の人から無線が届く。
「ハロータクミ君、早くこないと置いて行っちゃうよー!」
無線が切れた、俺は焦り、指揮官と矢千葉に挨拶してすぐに、その場を後にし、菅隊に合流する。
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俺は急いで拠点を出ようとすると、エレベーター前で警備員に止められ、他の道を案内される。
「こっちからでもいけるのか?」
そのまま無言でついていくと、警備員は足を止めた。
前にはポータルみたいなのがある。
「ここに乗ればいいのか?」
「はい」
そういうと警備員は元の位置に戻り、俺はポータルに乗ると、すぐに動き出した、どんどん上に上がっていく。
「すごいな、こんな技術も身につけていたのか」
感心していると外の光がどんどん明るくなってくる。
そして外が見えると、学校から随分遠くに着いた。“海気駅”が見える、黒零駅の一つ前の駅だ。
すると、俺に手を振りながらこちらに向かってくる人がいる。
「たくみくーん、待ってたよー!」
俺は少し気持ち悪いと思った、俺はそのまま部隊に合流する。
「やっときたか、高柳、俺はお前のこと少し期待しているからな............ということで、今から黒零駅に向かう、少し距離を取る、相手は一般人の振りをしている、もしかしたら俺らに気づき攻撃してくる可能性がある。ちなみに五分後に住民は避難開始となっている、分かったな!」
俺はもしかしたらこの人だかりにも魔術師がいると思い、周りをキョロキョロしていると、菅に注意される。
「高柳、あまり周りをキョロキョロ見るな、あと、何かあれば先に俺に報告だ」
「分かった」
少し距離をとった状態で黒零駅に歩いて向かう。
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(あまりこっちの方来なかったけど、やっぱり人が多い、この中に魔術師が何人隠れているんだ?)
考えていると、交差点に入る。人をかき分けながら進んでいると、俺は誰かとぶつかってしまう。
「あっすいません......」
「......」
その人の顔はフードを深くかぶっていたため、しっかり見れなかった、だけど、その人は様子が変だったため、少し観察するように見ると、フードの中に何か隠すように羽織っていた、とても怪しい。
「あ、怪我はありませんか?」
俺はできる限り観察したいため、時間を伸ばす、その間菅隊は信号を渡り終えて、俺を待っていた。
信号がチカチカなる。フードの男が怪我はないです、と言って動いた時に、何か勲章みたいなのをつけていた。勲章には“魔”と書かれている勲章が付いているのが目に見え、俺はすぐさま、フードの男の腕を捕まえて、交差点を渡ろうとする。
「っち、なんだよ! 離せ、そうでなければ」
俺は男の話を無視して、無理矢理交差点を渡り切ろうとすると、男も少し怒ったようだ。
「おまえ、ぶち殺すぞ? もしかしてお前、“黒帝“の一員か?」