4話 協力者
そのまま俺たちは、何事もなく教室に向かう。
決闘の結果は敗北、敗北では収められないほどの負けだ。
玄関前まで来た時、太刀野と矢千葉が足を止め、先に戻っとくよういわれ、二人を置いて、先に戻ることにした。
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俺たちが歩きはじめて、姿が見えなくなってから、ゆっくり話し始める。
「おい、莉奈あれでよかったのか?」
「良かったも何も、あなたがこれをやらしたじゃないですか、何か不満でも?」
「いや、大成功だ、もちろんこれで少しあいつの気は楽になったはずだ、だが」
「わかってるよ、私がなんとしても面倒見るから」
「いつもやる気なさそうなお前が、今日は一味違うな?」
「そうですか? ま、やる気がある方があなたもやりやすいんじゃないですか?」
「まあな」
と軽く話してからて二人は少し距離をとって歩き、俺たちの後を追う。
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「ていうか、匠あれは流石に無茶だぞ?」
流石のヒロも少し怒っている様子だ、二人も心配そうに見ていた。
「ああ、悪かった」
すると一度ため息をはき、気を取り直して、別の話題に移す。
「それより、あの時、太刀野さんとの話、告白か?」
俺はすぐに否定する。あれは間違いなく告白ではない。多分。
ヒロに続きここぞとばかり、愛華も問い詰めてきた。
「アホタクミ、やってんねー!」
「違うわ! でもお前、少し残念そうだな」
「! そんなことないし!」
ヒロが教室前で止まっている俺らを教室に押し込んでいく。
「はいはい、分かった分かった、入るぞ」
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ウグルス屋敷
「ねえねえ、今日なんの日だと思う?」
「さあ、知らない」
「今日、奴らの入学式があるらしいよ!」
「へえ、もうそんな時期か、じゃあ今年も行っちゃうしかないな」
「だよねー! とりあえず、ボスに確認取ってくる!」
「ああ、俺は人を集めとくから早めにな.............やっと行ったか、だが、あいつが外に行くことにより、人間に“ナシェが水の精霊 ウンディーネ“を宿していることがばれ、もしも捕虜にされたら......まあ、そんなことは起きないか、俺らが負けることなんて、0に近いのだから」
すると下級魔術師が近づいてきて、”協力者“からの伝言を受け取る。
「俺だ、奴から話は聞いたな? 今日生徒が入ってきた、その生徒の中に奴も含まれている」
とても興味深い、奴とは今から十二年前の被害者のことだ。
その情報を上層部に通達し、ナシェの帰りを待つ。
「これからが楽しみだ」
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教室で待ちながら五分が経った時やっと太刀野が帰ってきた。
太刀野は一度こちらを見たが、席には座らず教卓の横で待っている。
俺はそのことは気にせず、矢千葉が来るのを待つが、流石に遅すぎる。
「それより、矢千葉遅くね?」
「何かあるんだろ」
「なにかとは?」
「しらん、先生なんだから用事くらいあるだろ」
「ふーん」
俺は気の抜けた返事を返し、首を長くして帰りを待つと、それから十分後、やっと矢千葉が現れた。
「遅いぞ!」
手を合わせながら入ってきた。
「すまんすまん」
太刀野を避け、教卓の前に立つ、教卓には持ってきた名簿をおく。
「よしじゃあ、色んなことがあったけど、今から自己紹介する、じゃあ前から」
学校のお決まり自己紹介が始まる。
俺は何を言おうか必死に考える。
(俺が賢いというところを見せつけないとな!)
すると、ヒロが肩をトントンと叩く。
「なに?」
「いや、緊張してるなって」
「あほいうな!」
必死に考えているうちに、ヒロの番が回ってきた。
「はじめまして、柳田 ヒロトと申します。これからよろしくお願いします」
とてもシンプルな自己紹介だった。
あんなんでいいのか? と思いながら話を聞いていた。
「あんな簡単でいいのか?」
「逆に他に話すことある?」
「んーさあ?」
「でしょ? 難しく考えなくてもいいと思う」
そして俺の番が周って来る。まだ頭の中で整理できていない。第一声は明らかコミュ症だった。その様子に太刀野は腹を抱えて笑っていた。
「おもしろ、タクミ君本当に面白い! 始めの威勢はどうしたの?」
その煽りにクラスメイトは次々と笑い出した。
その様子を後ろから様子を伺っていた、萌が服を引っ張ってきた。
「落ち着いてね」
「分かってる」
矢千葉はとりあえず早く自己紹介しろ、と言わんばかりに欠伸をしていた。
「ああああ!もお!最初に今日はすみませんでした。名前は高柳 匠です。よろしく」
そのまま今まで考えていた話を話さずに席に座ると、ヒロが俺を小馬鹿にした様子で話す。
「タクミ、今まで考えてた話は話さなくてもいいのか?」
「はいはい」
そのまま自己紹介はスムーズに進み、五分ほどで終わった。
自己紹介の後はもうやることがないのか、矢千葉から今日のところは帰っても良いといわれたので、帰る支度を始める。
「じゃあ、帰るか」
四人で帰る支度をし、教室を出ようとすると、前に太刀野が立っていた。
「どうしたんだ?」
「帰るの少し待ってください、話があります」
俺は三人に先に言っといてといい、その場を後にしようとすると、太刀野からみなさんも来てください。
ということで、みんなで太刀野についていくことになった。