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〜黒零〜終わりを告げる戦場  作者: るるちゃん
2/9

2話 井の中の蛙大海知らず

 (やっと、魔術師とやりあえる技術を学べるのか)


 手を心臓に当てゆっくり目を瞑ると、背後からの襲撃により前に倒れてしまった。


「いったいな!」

「ごめんごめん、勢い付けすぎた」


 可愛くもない笑顔に舌を出している、きもいの一言に尽きる。


「きも」

「うるさい!」


 その様子を後ろから見ていた、ヒロと萌が歩いてきた。

 ヒロは珍しく髪をセットしている、萌も少しおしゃれになっている。

 二人をよく見た後に視線を愛華に移す。


「......」


 愛華はあからさまに不機嫌だ。

 俺は視線を二人に向け、わざと大きくため息をついた。

 ため息と同時に愛華が俺の頬をつねり始めた。


「痛い痛い、まじでやめろよ!」

「タクミが悪い! アホタクミ!」


 正門前でじゃれているのを矢千葉が気づき、あえて話しかけず見守っていた。


「矢千葉先生いるね」

「だね、ねえヒロ、それより二人どうする? 目立つところでじゃれあってるけど」

「まあ、とりあえずほっておこうか、俺たちは中に入ろう」

「だね!」


 じゃれあっている俺らを無視して、二人は矢千葉先生に一礼し正門を通っていった。

 正門を通ったのが見えた俺はすぐに追おうとしたが、愛華が邪魔で動けない。


「ちょ、愛華しつこい、ヒロたちさきにいってるぞ!」


 それでもやめない愛華を強制的に行動不能にした、その行為は到底褒められたものではないが、俺の脳ではこうするしか方法を思いつかなかった。

 その様子を見て矢千葉も少し驚いていた。


(あいつ割と力あるなー、ていったら楠木に失礼か)


 その姿勢に愛華は頬を赤くし、顔を両手で隠す。


「ちょ、アホタクミ、パンツ! パンツ!」

「パンツがなんだ? ピンク色か?」

「口に出さなくてよろしい! とりあえずお姫様抱っこから解放して! これじゃ誤解される!」

「いや、お前がしつこいからこうするしかなかったんだよ!」


 周りがざわついた事により、玄関前まで来ていた二人も振り返り、ヒロは頭を抱えていた。


「やれやれ」


 暴れる愛華を無視し、抱えたまま正門を通り過ぎた瞬間、矢千葉が見えた。


「よ! 二人は恋人さんかな?」


 その一声で、愛華はいっそ顔を赤くし、俺も恥ずかしくなり、すぐに下ろした。


「ん、んなわけねえだろ!」

「えぇ、お姫様抱っこまでしといて? あとパンツ見えてたぞ? ピンク色」

「ちょ! 先生!」


 すると愛華が俺を指をさし、文句を言い始めた。


「元を言えば、アホタクミが!」

「なんで俺なんだよ!」


 また始まってしまった、もう友達とは思われたくない、と思い始めた。ヒロ達は玄関に入り、先に教室へ向かう。


 流石の矢千葉でも二人の様子に呆れたのか、いきなり首根っこを掴んできた。


「ほら、うっせえから行くぞ、楠木もこいつと同じ様になりたくないなら、さっさと歩け」


 女だけには優しい矢千葉に俺は文句を言いたかったが、言えば次は気絶させられそうだったので黙って歩いた。

 けどやっぱ痛えよ!


---


 首根っこを引っ張られながら教室に着いた、ドアを開けると、先に二人はついていた、けど、こちらを見る様子はない。

 矢千葉もやっと手を離したと思いきや、教室内まで入ってきた。


「矢千葉、ここの担当じゃないだろ?」


 俺は素朴な質問を投げたが、とりあえず座れアホタクミ、と言われて渋々座る。

 もちろん横にはヒロが座っている。


「ヒロ、なんで俺らを置いていくんだよ!」

「いやだって、めんどくさそうだったもん」

「俺の方がめんどくせえわ!」


 矢千葉は教卓で三回手を叩くと、一瞬で空気が変わった気がした。


「いきなり空気が重くなった気がするけど、俺だけか?」

「わかったから静かに!」

「っちぇ!」


 俺は肘を立てながらこの空気を耐え、次の展開を待つ。


(長い、本当に長い)


 三分くらいだろうか、ゆっくりと矢千葉話を始めた。


「よし、じゃあ、始めるか、とりあえず俺のこと知らない奴なんていないよな?」


 こういう奴だが知名度はある。なんだって現役の黒零の八期生の軍隊長をしている。アホっぽいのにすごいよな。


「みんな知っての通り、俺は八期生の軍隊長をやっている。昨日も一狩りしたところだ」


(どこぞのゲームの決め台詞だ?)


「先生、面白くないのでまじめに話してください」


 ど正論を投げつけられ、一度咳き込み話を進める。


「ここの学科、いや黒零の第十八期生の諸君、この世界はとても不平等で残酷だ。君たちが高校生だからって躊躇はしない、魔術科に来たことにより、第十八期生という一つのチームに所属したことになる。それだけは絶対に忘れるな」


 魔術科に入ったということは黒零の一員になったということだ。俺はとても興奮している。だってここで成長すれば、魔術師を殺せる恨みだって果たせる。


「少し魔術師狩りについて話そうか、現にきみらを含めて初期生~十八期生までチームがある。もちろん十五期生は生徒ではない。俺から言えばきみらを生徒とは見ていない。“戦力“としてみている。

 言いたいことがわかるか? 俺が言いたいのは、十八期生だからって勉強だけではなく、戦闘も行うということだ」


 流石に無理がある話だ、ヒヨコに魔術師を殺せるわけがない。殺される側だ。

 すると教室のドアが開いたと同時に、声が聞こえる。女性の声だ。


「はーい、遅れました、申し訳ないです! 教室ここって言われたけど、間違ってないよね? 結城?」


 とても元気な女の子だ、みた感じ同い年ではなさそう。


「おせえよ、とりあえず自己紹介しろ」


 いきなり敬礼を始めた。変な生徒もいたもんだ。だが自己紹介ではふさげる様子はなく、まじめな雰囲気だ。


「私の名前は太刀野 莉奈、一応年齢は.......」


 矢千葉はもういいと言わんばかりに拍手で声をかき消した。

 彼女も大声で対抗するが、最終的に口に手を当てられ窒息寸前だ。


「死ぬところじゃないですか!」

「大袈裟だ、ま、とりあえずこいつもお前らの仲間だ、先輩だけどな、お前らの自己紹介は後ほど行う、しっかり考えとけよ、特に名前は言わないけど、お前な」


 明らか俺に向けての発言だ、俺は対抗しようとするが、ヒロにまあまあと言われ我慢した。


「じゃあ莉奈も来たことだし、少し話せ」


 この短時間で思ったのはメリハリがすごいということだ、今だってすぐにモードを変え、空気が一変し重くなる。


「私からも一つ忠告しておくね、新入生だからって気抜いてたら、君たち“死んじゃうよ?”私は同期を死んだのをたくさん見てきた、その中でも入りたての時、言わば君たちの時が、魔術師は狙いどき、ということだよ」



 彼女は軽々しく話しているが、半端な話だ。人が死ぬなんて、俺なら話したくもない、だが俺は決心がついている。魔術師を殺すのが目標なんだ、もし目の前に現れたら今でも殺しに行きたくなるくらいだ。


 俺は机の下強く拳を握ると、彼女がこちらを少し眺め、すぐに視線を離し、矢千葉に確認すると、すぐに名指しで質問された。


「高柳 タクミ......タクミさんね、あなたすごい闇を抱えてそうだけど、死なない? 大丈夫?」


 その質問には流石に腹が立ち、すかさず立ち上がり、相手に詰め寄る。

 ヒロが止めに入るが関係ない、この女をどうにかしなければ怒りが収まらないのだ。


「莉奈、こいつ止めるのめんどくさいんだから、程々にな」

「分かってますって」


 俺は彼女の目の前まで詰め寄るが、彼女はビクともしなかった。

 今までの相手ならすぐビビり、逃げたりしていたのに関わらず、彼女は逃げもビビりもしない、逆を言えばこっちが威圧でやられそうな勢いだ。


「なんですか? 私なにかやましいこといいましたか?」

「闇を抱えてるだと? そんなのみんな抱えてるだろ?」

「ええ、もちろん、ですが、あなたは別の人と違う闇を言わば爆弾を抱えているんですよ」

「なるほど、もっとちゃんと言いたいこと言った方がいいと思うぜ?」

「はい、遠慮なく言わせてもらいます、今まで死んできた仲間を見て、言えることは、あなたは自爆するタイプです、一人で何もかも、こなそうとし、周りがついてこなくなり、一人で死ぬタイプですね」


 怒りが頂点に達しそうだ。近くにやれるものがあれば、それでやってしまいそうな勢いだ。

 すると彼女は俺を見透かした様子で話し始めた。


「今周りをキョロキョロとしましたね? なぜだと思います?」

「知るか」

「今この状況では武力では私に勝てないと判断しているということですよ」


 怒りのボルテージがぐんぐん上がっていく。こうなると止められないとヒロ達も分かっているので止めに来ない。

 武力の喧嘩で負けたことがない俺が、あんな言い草されると怒らないわけがない。


「お前、なめてんな?」

「なめてますよ、あなたみたいな、井の中の蛙大海知らずのあなたを舐めないわけないでしょ?」


 我慢できずとうとう彼女に接触する。


「殴るんですか? どうぞ、お好きに、当たるものなら、どぞどぞ」


 普段と違う雰囲気だったため、愛華が少し気になっている様子で、呼んできた。


「ヒロ、そろそろ、止めないと本当にやばいよ!」

「そうだけど、タクミがあんなんになるとどうしようもないんだよね」


 とは言いつつもヒロは立ち上がり、タクミを止めようとすると同時にとうとう矢千葉先生が動き始めた。


「よし、二人とも一旦ストップな、俺がいい案を出してやろう」


 タクミも流石に一度離れその案を聞く。


「なんだ、その案は?」


 彼女と矢千葉は口を揃えて言う。


「決闘」

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