1話 過去
「おい、起きろって、匠! 匠!」
・・・・・・
「先生くるぞ? またお前」
もう手遅れのようだ、担任は目の前に迫っていた。
「高柳 匠、またお前居眠りか......」
担任の矢千葉 結城 は深くため息をはく。
ため息を吐くのも無理はない、毎日のように居眠りをし、注意しに来ているが、一向に起きる様子はない。だけど、あの一言で匠は起きる。
「殺された両親の恨みを果たすんじゃなかったのか?」
周りには聞こえないように匠の耳元で囁く。匠はそれでも起き上がる様子はないが、担任は教卓に戻り授業に戻る。
「さて、魔術師の弱点だが」
いつものパターンだ、教卓に戻ったすぐにみんな何も言わずに一斉に耳を塞ぐ。耳栓だって持ってきてる人もいる。なぜなら普段ならいつもの叫びが始まるからだ。
タイミングもバッチリだ、担任はチラチラと匠を見ている。
椅子が少し動く、叫ぶ合図となっている。耳を塞ぎ叫びを待つ、とすぐに叫びはやってきた。
「俺は、魔術師をぶち殺す」
匠は身体を起こすやすぐに立ち上がり、怒涛のような叫びで訴えかける。
その声はとても大きく、もちろん廊下まで聞こえている、隣の教室でも、またか......といった反応だ。
だが、匠の気持ちもわかる。そう俺たちが三年生の時......
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「みんな! また明日!」
「気をつけて帰れよな!」
「ヒロお前もな! もちろん、 アイカ、モエもだぞ!」
「言われなくても分かってる!」
「あははは」
匠だけ家が反対だったため、いつも一人で帰っていた。
俺たちはそんな匠を見送った後、みんなで帰路に就く。
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ここからは匠から聞いた話になる。
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西暦2020年
(今日のご飯はカレーかな? それとも、お肉かなー)
走りながら、今日のご飯のことを考えていた。この時にはまさかあんなことになるなんて思いもしなかった。
家が近くなっていくにつれ、人だかりが目立つ、中には携帯で動画を撮っている人や、メディア関係の人もいた。
俺は人をかき分けながら、進んでいると、知らない中年男性に腕を掴まれた。
「そんなに急いで何かあるのか?」
俺は一度足を止めたが、家がある。と一言言い、手を振り払った、が。次は肩を持たれた。少し強く持たれたことにより、俺は少し怒りを覚えた。
「も! なに?」
「まあ、落ち着けよ、一度しか言わないから聞き逃すなよ?」
人差し指を口に当て腰を下ろし俺の耳元でゆっくりと話し始める。
「”タクミ“の家はここを真っ直ぐ行き、つきあたりを左に曲がったところが家だろ?」
頭をフル回転させながら、話を理解していくが......
「つきあたりってなんだ?」
「もっと簡単に言うぞ? 真っ直ぐ行けば壁があるだろ? そこを右に曲がり、表札は高柳と書いてある」
「うん、そうだけどそれがなに?」
首を傾げて次の言葉を待っていると、男性は腰を上げ、俺の頭をポンポンと叩きながら続きを話す。
「タクミの両親、“魔術師”に殺されちゃったらしいよ」
一瞬じゃ理解できなかった、魔術師? お母さんお父さんが殺された? 最初は何言ってんだこいつ、なんて思いながら適当に流した。
「じゃ、そういうことだから」
その一言で男性は人ごみの中に消えて言った。
(あの人一体何がしたかったんだろ?)
俺は気にせずどんどん前に進み、突き当たりを右に曲がると、警察と黒い服を着ている人がいた。
それも気にせず前に進むと、警察がこっちに気づく。
「きみ! ここにきたらダメじゃないか! 早く帰りなさい!」
警察官は俺を押し戻そうとする。
だけどここは俺の家だ、押し戻される意味がわからない。
「おまわりさん、ここは俺の家ですよ」
その言葉に警察官の動きが止まる、すると、黒い服を着た人がこっちに寄ってくる。
「きみ名前は?」
「高柳タクミ」
「そうか、でも残念だが、この家にはもう入れない」
「なんで?」
「両親が殺されたんだよ、あの悪魔にやられて」
俺は頭が真っ白になり、いきなり笑い出した。
「あはは、おじさん、何言ってるの? 嘘はついてはいけない! ってお母さんに習わなかった?」
すると胸ポケットから写真を取り出し、前に差し出した。
その写真を恐る恐るのぞいてみると、リビングが写っている、その周りには“血”その近くに人が二人倒れていた。
“お母さん”と“お父さん”だった。
どこからどう見てもお父さんとお母さんだ。
その写真から目を離すと、吐き気がしてきた。
自分の目でそれが真実が確認するべく、走って玄関に向かおうとしたが、黒い服を着た人が俺のことを止めたが、怒り、悲しみでいっぱいだった俺は我を失っていて、黒い服の人によって気絶させられた。
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日本はそれ以降、魔術師の恐怖に怯えながら生きている、それと同時にとある組織が政治家に変わり日本を統治するようになった。
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その後俺は一度病院に運ばれ、その間にヒロ達もお見舞いにきていたらしいが何も覚えていない。
最後に黒い服を着た人は、あの事件以降日本を動かしている、組織“ブラックレイ“という。その中の一員の矢千葉 結城が俺の面倒をずっと見てくれている。
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このような過去持っていて、魔術師への恨みは人の何倍も持っている。
タクミは席に座り、また眠ろうとするが、担任に止められ、半分寝ている状況で授業を受けていた。
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授業が終わると匠のところに生徒が集まる。
いつものことだ、みんなニコニコしている。
「はいはい、分かったから向こういったいった」
タクミはあっちいけと言わんばかりの態度を取っているがそれもいつも通りだ。
その集団の中に愛華が割り込んでくると、匠の頬を人差し指でツンツンと押し込む。
「また、寝ていたんだねー、ダメな子!」
「うるせえ、俺はとりあえず魔術師さえ殺せればいいんだよ」
愛華が来るとみんな離れていく、理由は知らないが、これもいつもの通りだ。
すると萌も教室にやってくると、何やら様子が変だ。
「どうしたんだ萌?」
萌の右手には、くしゃくしゃになっている、紙が握られていた。
その紙を机に広げると、進路について書かれていた。
俺たちは一ヶ月後に高校生になる、進学だ。
だが、ここの学校は小中高大一貫だってこともあり、全員そのまま上に上がることになっている、だが、その中でも学科で分かれている。
理系、文系、魔術の三つに分けられている。
「学科かー、俺は魔術科に行くぜ、ヒロは?」
「俺もだよ? 愛華は?」
「私はね......」
「お前は弱いんだから理系か文系選んだんだろ?」
俺の挑発に乗るように顔を赤く染めた。
「弱くないもん! 弱くなんて!」
「じゃあ魔術科か?」
愛華らしくない小さな声でブツブツと答えた。
「うん。」
それを聞いた萌は躊躇いもなく、ペンを持ち、紙に文字を書き始めた。その文字は誰もが見覚えがある文字、もちろん”魔術“だ。
俺は驚きのあまり聞き直してしまう。
「え、本当に魔術でいいのか?」
「う、うん!」
「弱い奴は......」
ヒロが俺の口を押さえつけて、優しく応援する。
「んん、 んるしんん(くるしい)」
「まあ、自分で決めたことなんだし、みんな魔術科ということで、一ヶ月後も一緒だね」
俺は口を解放し、ヒロの膝を軽く叩く。
「痛い痛い」
「なんで遮るんだよ!」
二人はまあまあ、といった感じで微笑ましそうに見ていた。
その様子を遠くから見ていたのか、担任がこちらに近づいてきた。
「夕凪、進路についてたが......」
萌は紙を担任の胸に軽く押し付けて、どうぞといって渡す。
「お、やっと書けたのか、えっと魔術か、ということは、アホタク、ヒロ、夕凪、楠木は次も同じということか」
紙を胸ポケットに入れ、じゃあ確かに受け取った、といって教室を後にするが、振り返ると同時に、小声で何か独り言を話し、微笑んでいた、その姿はとても奇妙だった。
「おい、ヒロ、ヒロ!」
「あ、ん、なに?」
「ヒロくんぼおーとしないで!」
「うんうん!」
「ごめんごめん」
「何か悩み事があれば、俺らに相談だぞ?」
「ああ、わかっているよ」
(あの時、(あの四人がくるなんて面白い)みたいなこと言っていたけど、どういう意味だ? 後あの微笑みは?)
また深く考えていた俺を匠が強く叩いてきた。
「痛いって! タクミは加減を知らないのか?」
「はぁ? 分かるわ!」
「はいはい、揉めなーい揉めなーい」
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そんなことがあり、それから一ヶ月が経ち、入学式を迎える。