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くどくても、大切な人。

・くどくても、大切な人。


<3> 第一試合 終了後 第二試合 開始前


……。 わ! ビックリした。え? ああ、いやあ、驚きの展開でした。第一試合はまさか、こんな展開になるとはだれが予想できたでしょう? どうですか? 苦無彩影先生。


「なんというか、コメント無しですね。控えさせていただきます」


 おっとー! 解説者が解説を放棄したぞ! これは問題だぁ! 判った! アダルトの癖に動揺しているんだ。動揺は隠せないぞ。センセイ、可愛いなァ。


「やい、こら! 実況者! あんな糞試合、コメントしたくないのも分かるでしょうが! 」


 そんな事は無いぞ。見どころもあった。確かに存在した!


「違う意味でのアダルトの事ね。それは認めますよ」


 ここでもう一人の解説者、バニー・ピンクパンサーの乱入だぁ。うーん、セクシーピンク。そのまま解説をどうぞ!


「でも青姦ショーを見るなら他の場所で。“舞台”は格闘の場です。いわば殺戮技術を競う場所であり、プレイテクを見せる場所ではありません」


 成程。前回、準優勝者の言葉は重いですね。では、バニーさんがプロデュースしたエンジュ・バルボッサの敗因はイカされた事にあると?


「話を聞いていますか? そんな事を、私、言いましたか? そもそも、アンタ、さっきから独り善がりの実況ばっかり。この自慰専用型! 」


 ゲ、ロッパ! ゲロッパ! な、なんとゆう屈辱だァ! 痛烈に痛い処を突くヒト非ざる振舞に我は耐え、震える事しかできない。何故なら、何故故ならば相手はヒトでは無い。しかも、P藤村が睨んでいるからだぁ~。ところで、今回の試合はM・J・クラリスの勝利として良いのでしょうか? 苦無先生、お答えください。 


「当然OK。第一試合はクラリスの勝利ね。流石だわ」


対戦相手のエンジュ・バルボッサに致命傷を与えたのはレフリー、キング・バフォメットに見えましたが、学園側はあの展開でもOKだと判断するのですか?


「致命傷を与えたのはサタナキアよ。あの落雷を見てなかったの? 」


見ていましたよ。盗み見、覗き見の背徳感を感じながらシカと。


「大切なシーンは何も見ていないのね」


男にとっては落雷前の方が重要かと思えるのですが。で、話を戻しますがサタナキアさんの雷攻撃での決着。コレっていかがなのでしょうか?


「カミさんが怒って雷落とす。コレって、鉄板だっちゃ! 」


 おっとー! これは禁じ手だぁ! いいのかコレで? これでいいのかァ!


「良いのよ。レフリーからルールの紹介があった筈です。ナンでも有りが華麗のルーだと」


 先生、壊れてきていますね。『ナンデモアリが唯一のルール』の間違いですよ。


「失礼。カミマシタ」


 全然、全く噛んでないっぞう。で、再び本題に戻します。つまり、場外、観客、その他第三者からの攻撃もOKアリアリな訳ですか?


「YES」


 もう一つ、お尋ねします。カミさん、とおっしゃいましたが、サタナキアさんはキング・バフォメットのカミさんなのですか?


「YES」


 はあ、そうだったんですか。ルールもカミさんも滅茶苦茶ですね。


「そうだったんですよ。みんな、滅茶苦茶なの。それがルール無用の規則無しって事よ。なあんにも知らないで実況しているのね、君」


 はあ、イキオイだけが信条です。


「それも結構。若人の特権だしね」


 このようなセリフは加齢臭を帯びた大人にこそ相応しい。


「全く腹立つ野郎だなぁ。この白ゴブリンは」


 ………。 さて、気を取り直して参りましょう。第一試合の勝者、M・J・クラリスに大きな拍手をお送りください。そして、思わぬアクシデントで敗北者となったエンジュ・バルボッサにも沢山の拍手をお願いします。いやあ、残念でした。惜しかったですねぇ、エンジュ・バルボッサの優勢で試合が進んでいただけに非常に悔しいと思います。あれ程、沢山の木霊達を呼び出したその召喚能力には末恐ろしいモノを感じます。とくに、あの木霊『ハッティ・フナット』はダンジョン・モンスター級の凶暴性だと伺っていました。それをあんなにも沢山召喚できるのはエンジュ・バルボッサしかいないと思われます。そのように思いませんか? バニー・ピンクパンサーさん。


「エンジュは『ハッティ・フナット』なんか、出していませんよ」


 え? 嘘だァ。


「本当です。召喚していたら、落雷を防げたでしょうね。間違いなく」


 オーマイゴー! 明暗の分岐点、運命のいたずらだァ! 真に、真に悔しさ、倍々だと思います。


「つーか、やっぱり、アナタ。実況は無理なんじゃない? 北欧系木霊の代表格も知らないんじゃあねえ。アナタ、勝手にイッちゃうタイプでしょ? 」


苦無先生。一寸、黙っていてください。実況の私が、適当な時、適切なタイミングでお伺いします。だから、今は、今だけはその軽薄な薄い唇を閉じていて下さい。


「男のヒスは見苦しいわよ」


黙れ! チャーックしておけよ、苦無彩影! とにかく、フルまで喋るな! 


「ナァに!」


痛い! ごめんなさい! 暴言でした。反省しています! こんな至近距離から手裏剣を当てないでください。


「つ、たく。黙れば良いんでしょ」


ハイ。スミマセン。で、いかがですか? バニーさんはエンジュさんの召喚能力をどのようにお考えでしょうか?


「そうですね。御承知の通り、召喚出来る精霊は個人の潜在能力に大きく関係します。通常は白系、黒系と別れているのですが、エンジュは白、黒混血なので、その両方の精霊達からサポートを受ける事が出来る可能性を持っています」


 それはすごい! 流石最凶。


「ただその為、術者に生粋、純粋さを求める精霊の召喚は難しくなってしまった筈です。今回、エンジュが召喚した木霊は白系です。白系に属する精霊3種です。いずれもそれ程、強力な精霊ではありません。中堅クラスの下層と云った処でしょうか」


 成程。では、エンジュ・バルボッサは高位な精霊、幻獣を召喚出来ないと?


「さあ。出来るかも知れないし、出来ないかも知れない。まあ、どちらにしてもエンジュ次第ですね」


 それって、どのような意味でしょうか?


「要は召喚する精霊、幻獣を納得させるだけのチカラを身に付ければ良いのです。それには沢山の修羅場を経験して徐々にレベルアップをするしかありません」


 うーん。やっぱりそうなりますか。楽して飛躍の術は無し。泥臭いですが、一足一足の精進あるのみですね。


「そうです。ただ、エンジュは福音者の印がある。これが、どのような意味を持ち、どのような作用をするのかわかりません。今後、どんな結果をもたらすのか謎ですね」


 福音者の証。選ばれた白系召喚士の象徴ですよね。それが混血児のエンジュ・バルボッサにはある。成程、ミステリアスな展開が期待できそうです。


「そうでしょ? だから今回の舞台はエンジュの潜在能力を確認するには良いチャンスだったのです」


そうか! だからエンジュ・バルボッサは不戦勝を拒んだのですね。でも、結果、負けてしまいました。


「はい。非常に悔しいと思います。彼女は不戦勝での勝利を拒み、自身の可能性を模索する為に試合に臨んだわけですからね。だが、それも仕方なしです。運も実力のうち。M・J・クラリスの方が強かった。それだけの事です」


 クールですね。辛くは無いのですか? 妹分のエンジュさんが敗北されて。


「勿論、辛いです。だが、私はエンジュを信じています。それに彼女はやられっ放しのまま終わる性格では無い。間違いなく復活します。だから、姉貴分としてエンジュのこれからの行動を見つめていきたい。だけれど、無茶は禁物。現状は怪我を治す事に専念してほしいですね。それと、最後に一言、良いでしょうか? 」


 勿論です。言ったって、言ったって! さあ、傷つき倒れた妹分に、何を言うつもりだバニー・ピンクパンサー!


「今回の試合は残念な結果となりました。けど、エンジュ、よくやったね。頑張りました。それと、少し禁煙した方が良いと思います」


 ま、真面だ。美しーい。非常に美しい姉妹盃の愛情です。私もエンジュ・バルボッサの今後の活躍を期待しています。アビアス学園の、プリティな最凶アイドル、エンジュ・バルボッサ。カンバーック! さあ、皆さん、ご一緒に!


「「カンバーック」」


「「よくやった、タバ娘」」


皆さん、ありがとうございます。そして、今、担架で運ばれていくエンジュ・バルボッサに惜しみない拍手をもう一度お願いします。ううっ、声が裏返ってしまう。感動の涙で上手く、上手に見送る事が出来ない。コレでいいんだー。構いやしない。私は待っている。あの、焦げ付いた身体が再び、美しく、逞しくなって私達の前に戻ってくるまで待っています。皆さんもそうでしょ? 皆で待とうじゃあーりませんか! 


「「カンバーック! カンバーック! 」」

 

ああ大歓声です。割れんばかりの大歓声。嬉しー。と、その中を勝者、M・J・クラリスが舞台会場となったコロシアムから降り始めた。そこに駆け寄るイーサーちゃんだ。喜ぶイーサーちゃんと対比する、イマイチな表情のクラリス嬢。その表情から複雑な心境である事が分かる。

でも、勝者は君だ! 

胸を張ってネクストステージに望んでくれ! 決勝進出おめでとう! 第一試合勝者M・J・クラリスに拍手をもう一度お願いします! 

 

「「肉牛娘」」


「「ザーボン! ザーボン!」」


ザーボン!? そういえば、試合中、クラリス嬢の身体が膨れ上がった様に見えましたが? あれはナニ? 分かりますか? バニー・ピンクパンサー?


「分かりません」


 そうですか。じゃあ、次のネタに映ります。 マシリトってトリシマ氏がモデルなん……。


「苦無先生に訊ねたら良いと思います」


 次のネタの事ですか?


「M・J・クラリスの件ですよ」


成程。成程、成程。仕方なし。チャック外してOKです。苦無先生。


「チャーック、オフ。って? ふざけんな! でも、仕方がない。馬鹿を利口にできるのは教師だけ。ああ、仕事とは云え、辛いなぁ」


 ホント、ご愁傷さまです。


「誰の所為だ! コノヤロ。まあ、いいや。クラリスの事よね。ええ、たしかに膨れ上がったわ。ババンと」


 婆と?


「もう帰る。やっぱり、やってられない」


 スミマセン。御免なさい。もうしません。許してください。


「随分素直ね」


 ソウスカ? 私はカンペに書いてあるのを読んだだけですが。


「頭にキタ! アンタがその気なら徹底的にヤルわよ」


わ! そんなに沢山の手裏剣が有るんだ。大変恐縮でございますが、仕舞っていただけますか。心を入れ替えますので。


「ハイハイ、素直で宜しい。そうです。M・J・クラリスの身体は大きくなりました。膨れ上がってマッチョガールになりましたよ」


 そおですよねぇ! やっぱり見間違えでは無かった。でも何故クラリス嬢はマッチョになる必要があったのですか?


「パワーアップよね、当たり前でしょ」


そおですよね! でも、クラリス嬢はスレンダーな身体が魅力です。太った姿は非常に悲スイー! 戻って良かった。あー良かった。


「大馬鹿ね、この実況」


 な、ナンテ事を言うんだ!


「思考力と想像力が欠落した者を馬鹿と云うのですよ。分かった? 」


「まあまあ、先生。その位で勘弁してあげてください。しかし、まあ、クラリスには変身能力が有ったのですね。すごいパワーを感じましたよ」


「有ります。ただ、本来の姿がその太っちょの方で、スレンダーな方が変身後の姿です」


 な、なんと! ガビーン!


「彼女、パワーダウンの必要なのよ。でないと日常生活に支障が出ちゃって、とても学園生活なんか無理」


「そんなに強パワーなんですか?」


「滅茶滅茶ハイパワーよ。まあミノタウロスなのだからそれも当然だけれどね」


「ワァオ! 幻獣ミノタウロスの血統ってすごいのね!」


「だからメチャ強い、めちゃ優勝候補なのよ」


「成程。納得です」


 吾輩も納得―っ。どうりであのようなオッズになる訳だ。


「オッズ? 今、オッズって云ったね?」


 ハア? ナンの事でしょうか? 苦無先生。


「ちょっと! ムラウチ君。オッズってなんの事よ! 」


 先生。奴は藤村です。ちなみに名古屋生まれ。特技は饅頭食いです。


「間違えたの! で、ナニ! 説明して! 何か隠しているわね! 」


 何も隠していません、実況の間違いです、と、藤村Pのカンペにはあるぞ! そうだ、何も無かった。私が言い間違えただけだ。ゴメーンちゃい。


「………。 そうですか、分かりました。ちょっと、そこの君、来なさい! 」


 再びエドワードを呼び出す苦無彩影だぁ。おい、エド、分かってんだろーナァ! いうなよ! 絶対だぞ!

さて、第一試合勝者のM・J・クラリスが去ったコロシアムですが、未だ興奮冷めやらぬ状況です。やや、なんと! 中央にレフリー、キング・バフォメットが進み出る。二度の落雷を受けた割にしっかりとした足取りだぁ。身体に鞭打ち、自己の責任を全うする男の姿に感動だ。これを見て、心、動かされぬ者はいない筈だじょー。


「鞭打ちは好きだった筈よ、バフォメットって」


「サタナキア先輩はS系で有名ですし。お似合いな二人ですよね」


………お二方の解説に感謝します。

さて、第一試合が終わり、興奮を増したコロシアムですが、第二試合の開始時間が迫ります。続く、第二試合の事について尋ねたいのですが、お二方はどのような展開になるとお考えですか? 対照的な解説者お二方のお考えをお聞きしたいと思います。

まずは、我ら放送研究会は怪しげな事など何もしていません。疑わしい目をせず、安心して職務に励んでほしい苦無彩影先生にお尋ねします。


「え? ああ、はい。第二試合は深刻な展開になると予想しています」


 深刻な展開? はて、はて。謎めいた言葉ですね。まるでミステリーだ。苦無先生、何故のコメントでしょう? 


「詳しくは言えません。控えさせていただきます」


 控える? まさか、糞試合の予想ですか? また、糞試合? 永遠に糞試合? 臭うのか? 臭うんだ、 臭うに違いない! くっさー。 全くも―、オッズに影響する事は控えてください。


「え? ナンダって? 」


 うるさい、ブス。痛ってー! あーー、ミゾに、鳩尾に手裏剣がぁ!


「マジでもうウンザリ。バニー、あなたに預ける」


「えー。貸し一つですよ」


「良いわよ。一つでも、二つでも」


「余程、嫌なんですね」


 ショッキング! 嫌われることもレポーター、解説者の仕事です。相手を動揺させる事が良い情報を引き出すコツ。とはいえ、真正面からいわれりゃ、ショックデカ!


「嫌われているだけで、情報なんか引き出せていないわ。自慰君」


 ショックキング! さらに倍。酷いよ、酷いよぉ、でも大好きだァ! バニー・ピンクパンサー。


「ああ、ハイハイ。他を当たってください」


 ああ、撃沈。バイキング。


「え? いつ出港したの? 全然、分からなかった」


 ランキング、ムシキング、ハイキング、クリスタルキング、スパンキング、キングオブファイター、そしてキング・バフォメット! さあ、試合を開始してくれ! レフリー、キング・バフォメット! 君の采配で、小鯉がドラゴンへと生まれ変わる。昇天するドラゴンの姿を見せてくれ! 試合開始の時刻は迫った。さあ、ゴングを鳴らすのだァ!


「先生。ゴブリンって、タフですよね」


「タフねぇ。この場合もタフって云うのかなぁ」



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