高校生活初日
空晴れ渡り、春萌ゆる清々しい朝、希望に満ちた一日がやってきた。
数多くの初々しい学生達が、桜並木を通り学び舎へと入って行く。
かくいう俺も、期待と不安を胸に秘め、これから一年間お世話になる校舎を見上げていた。
すると道の脇から、なにやらガサガサと音がする。
気になって覗いてみると、這いつくばって何かを探している女学生が居た。
これはチャンス! とばかりに話し掛ける。
「あぅ~、無いよ~、どこいったのー?」
「どうしたんだ、何か捜し物か?」
「あっ! ええと~、ネコちゃんが居たから、携帯で撮ろうと思って構えたのねー、そしたらクワッ! ってなって、私ビックリしちゃって携帯がどっかいっちゃったんだー…」
ああ、えっと、より詳しく聞いてみると、猫が携帯のストラップに反応して飛び掛かってきた為に、反射で避けようとしたら携帯が手からすっぽ抜けていったらしい。
「そっか、じゃあ携帯番号教えてくれたら、鳴らして探せるが?」
「本当に! ありがとうー!」
自分の携帯を取り出し、内心ドキドキしながら、さも自然に電話番号を聞いてみると、あっさりと満面の笑みで教えてくれた。
携帯登録女学生、第一号である!
彼女の名前は、綿毛 真由ちゃん18才
髪はショートで茶色がかった天然パーマ、身長は160㎝強で、大きな瞳と下がった眉尻、そして言葉遣いからゆるふわ感が滲み出ている。
ミニスカートと、ニーハイソックスの絶対領域が眩しい女の子である。
その後、無事に携帯を見つけ、真由ちゃんと一緒に体育館へと向かった。
体育館では男女に別れて座ると、禿げた校長の長い挨拶を聞き流しながら、眠い式をなんとか乗り切った。
その後は、玄関ホールに貼り出されたクラス分けを確認する、ドキドキしながら自分の名前と、真由ちゃんの名前を探すと、なんと同じクラス!
小躍りしたい気持ちを抑えながらクラスへと向かう、教室を見回すと真由ちゃんはまだ来ていないようなので、黒板に貼り出された名前を見ながら、指定された席へと座る。
すると後ろから声が掛かった。
「よっ! 俺は斧 大地よろしくな!」
「おう、俺は遠山 五久だ、こちらこそよろしく頼む」
「おっ! 良い握力してるな! 見掛けた事は無いが、どっか体育会系の部活に入ってたのか?」
「ああいや、この高校には三年生から転校して来たんだ」
「へぇ! 珍しいな! じゃあなんか分からない事があったら聞いてくれ! 何でも教えるぜ!」
「なに言ってんのよ、あんたじゃ教えられるような事なんて、大して無いじゃん!」
如何にもスポーツマンといった見た目の大地と喋っていると、横から女の子の声が割り込んできた。
そちらを向くと目に入ってきたのは、身長は165㎝以上、後ろでチョコンと纏められたポニーテールに、勝ち気そうに上がった眉、マンガのキツネのように釣り上がった糸目、大きな口と白い歯を見せている彼女は「シシシシ!」とこちらを見ながら笑っていた。
そして、その横で手を振っているのは、今朝あった綿毛 真由ちゃんその人、とてもホンワカする笑顔を向けてくれている。
「遠山くん一緒のクラスだねぇ、嬉しいなー」
「おっ、真由の言ってたのってこの子か! カッコイイじゃん! あたしの名前は種田 狐兎子、よろしくね!」
「へっ! ウルサイのが来やがったぜ!」
「なんだとー! あんたに言われたくないじゃん!」
「まぁまぁ二人とも…、真由ちゃん、種田さん、こちらこそよろしく頼む、所で3人とも仲が良いが、二年生の時に一緒のクラスだったのか?」
「そうだよー、真由とは親友で、大地とは腐れ縁ってやつね…
っと、それはそれとして、なんか真由とわたしで扱いに差を感じるんだけどぉー?」
「いや、それは…」
「気を遣う必要なんか無いぜ五久! コイツのことは、オイとか、お前とか呼んどきゃいいんだ!」
「ははは、それだと逆に夫婦みたいな呼び方だな」
「いっ、いや、俺はそんな、つもりじゃ」
なんだか一緒になって顔を赤くしている、大地と種田さんを置いて、真由ちゃんに話を振った。
「真由ちゃんは種田さんのこと、なんて呼んでるんだ?」
「私は、たねちゃんって呼んでるよー」
「じゃあ俺も、たねちゃんと呼ぶ事にしよう、それでどうかな?」
「まっ、まぁ! 今回は許してあげるよ! それじゃあ仲良くなった記念に今日はパーっと遊びに行こうじゃん!」