いきなりの同棲
やあ皆、唐突だけど自己紹介をしておこう、俺の名前は遠山 五久、もうすぐ高校三年生の18才だ。
他人を慈しめるようにと付けられた名前だぜ!
顔も体型も普通で、趣味はゲームに漫画、特に目立つ事も無い俺が、現在とてもあり得ない様な事になっている。
「どうして、こうなったんだろうか?」
目の前には、湯気を立てるご飯に味噌汁、肉じゃがにキュウリとワカメの酢の物、というとても家庭的な料理が並んでいる。
「さあ! 食べよっか♪」
食卓を挟んだ反対側には、ニコニコと笑顔を向けて来てくれる可愛い女性。
彼女の名前は向日葵 乃華さん、24才の社会人。
エプロン姿で台所に立つ姿は、とても家庭的で守ってあげたくなる女性だ。
「うん、乃華さん、いただ…」
いただきますを言おうとすると、乃華さんは不満げな顔で声を上げた。
「もう~、イッくんったら、さんなんかつけちゃって…
私達夫婦になるんだから、ハナちゃんって呼んで♪」
「分かったよ、ハナちゃんいただきます」
そう、一番あり得ない事は乃華さんと婚約したという事だ。
何があったのかと言えば。
・おかしな住所を言った俺があまりに真剣に話すものだから、乃華さんも真面目に聞いてくれて、話し合い。
・その後、戸籍から住所を確認しようってなって市役所へ。
・自分の戸籍は疎か家族の戸籍も確認取れず、絶望する俺。
・あまりに悲嘆に暮れているものだから、心配して「けっ、結婚すれば戸籍貰えるんだよ! よっ、良かったら私が結婚してあげよっか?」と乃華さんが言ってくれる。
・驚く事が多すぎて、精神的に参っていた俺は、その提案に一も二もなく頷いた「是非お願いします! 俺と結婚して下さい!」とその場でプロポーズ。
・顔を赤くして、あわあわなっている乃華さんに手を引かれ、乃華さんの自宅へ。
・お腹が減って今に至る。
ただこうしてご飯を食べながら落ち着いてみると、罪悪感が湧き上がってくる、俺は乃華さんの善意につけ込んだ挙げ句、手料理までいただいている。
今はニコやかに接してくれているが、内心どんな気持ちなのかも分からない。
悩み過ぎて悶々としていると、乃華さんがお風呂を勧めてくれた。
「そんな悪いし、乃華さ…ハナちゃんが先に入って良いよ」
ちなみに敬語も早々に止めるように言われている。
「私は長くなるかもしれないし、入って入って!」
「え?えっ?」
乃華さんに無理やり背中を押され風呂場に押し込まれる、仕方が無いので、なるべく早く風呂から上がるとタオルは用意してくれていたが、下着や着替えをどうするか考えていなかった事に気付く。
仕方が無いので、身体を拭いたバスタオルを腰に巻き、乃華さんを呼ぶ。
「ハナちゃーん! 着替えは何かないかな?」
「あっ! ゴメンね! すっかり忘れ…!!」
乃華さんはこちらを見るなり固まってしまった、顔を赤くしながらも目は俺の裸体を凝視している。
視線は首から鎖骨、胸筋、腹筋、そしてヘソから下へと降りていき、股間で固定された。
「ハナちゃん、あんまり見られると恥ずかしいぞ?」
「ごごごっ、ゴメン!」
舐めるような視線に曝され、堪らず抗議の声を上げながら身を捩ると、やっと起動した乃華さんが謝りながら目線を逸らしてくれた。
「そっ、それでどうしようか?」
「えっ? ナニを!?」
「いや、着替えだよ! 着替え!」
「あっ! そうだよね!そうそう! あー…イッくんが着られそうなのが、今ジャージしか無いんだけど大丈夫かな?」
「もちろん、ありがとう」
そう言って、乃華さんが持って来てくれるのを脱衣所で待っていると、ふと思い付く、そのジャージは乃華さんが着ていたものであると。
その事実に気付いてしまってからはドキドキしっぱなしで、いざ着替える時も、これは仕方が無い事なんだと誰に対してか分からない言い訳をずっとしながら着替え。
着替えた後は、あまりに良い匂いに全身が包まれている事にテンパりまくり、何を言われても上の空で、気が付いた時には乃華さんと同じ布団で寝ていた。
あ”ぁ”~~! 寝れるわけが無いんじゃぁ”~!