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バイト探し



 お昼ご飯の時間、最早いつものメンバーと化した4人で喋っている。



「なあ大地、バイトを探そうと思うんだが、何処か良い所を知らないか?」


「いや、俺は今まで部活ばっかりでバイトしたこと無いんだ、そう言うのは、たねの方が詳しいハズだぜ」


「ん? あたし? バイトしてたって言っても一カ所だけだよ?」


「へー、どんな所だったんだ?」


「あたしが働いてたのは、ビルの2階にあるちっちゃなバーだったんだけど、そこのマスターも一緒に働いてたバイトのお姉さんも、みんな面白い人だったよ!」


「ほう、ちなみに給料や仕事内容はどんななんだ?」


「んーと、時間は未成年だったから午後8時~10時までで、コップやお皿洗ったり、テーブル拭いたり、お客さんと喋ったりしてたよ、そんで時給は1000円貰ってた!」


「ふむ、良さそうな所だな」


「じゃあ紹介してあげよっか? 採用されるか、わかんないケド」


「それは有り難いな、是非とも、よろしく頼む」





 放課後になり、(くだん)のバーへと着いた。


 狭い階段を上り、まだ準備中と(ふだ)が掛けられた扉を開けて、間接照明のみの薄暗い部屋へと入った。



「ハーイ、いらっしゃーい! ごめんなー、まだ準備中やねん」



 テーブルを拭いていた手を止めて対応してくれたのは、身長174㎝頃、長い金髪を上の方で(まと)めてお団子にしている、服装は白いYシャツに、赤と黒でデザインされたベストと、黒のズボンを穿()いて、まさに男装の麗人といった感じだが、表情はニコニコとして人懐っこいネコのような女性だった。



「こんにちは! スズミン先輩お久しぶりです!」


「お! なんやコトコンやないか、なんや、ウチに会いたなったんか?」


「アハハッ! 五久くん、このエセ関西弁を喋る人は猫三宅 鈴美(ねこみや すずみ)さん、今日言ってた面白お姉さんだよ!」


「なんやエセって! 三年も関西住んどったら、立派な関西人や!」


「で、スズミン先輩、彼は遠山 五久くん、ココでバイトしたいって言うので連れて来ました!」


「わー! スルーしおったー! …まぁええわ、なんやカッコイイ()やないか、コトコンの彼氏か?」


「違いますよ! ただのクラスの友達です!」


「ふーん… まぁええわ、マスター! バイト希望の子やけどどうする?」


「…連れて来い」



 それまで、カウンターの奥で準備をしていたマスターが現れる。


 マスターは、白Yシャツに黒1色のベストと蝶ネクタイ、髪型はオールバック、さらにチョビ髭をたくわえ、30代前半位のダンディないかにもといった、おじさまだった。


 カウンター前に招き入れられた俺は、マスターの前に立つ、無言で下から上までじっくりと観察されると、椅子へと促された。



「では面接を始める」



 二人席の小さなテーブルに向かい合って座ると、おもむろにマスターが喋り出した。



「私には5才になる可愛い娘がいるんだが、最近私を避けるようになったんだ…」


「…何かあったんですか?」


「口がね…臭いんだって」


「ガムや市販の錠剤等ではダメだったんですか?」


(コクリ)


「じゃあネットで検索してみましょうか、口臭にも色々な理由があるみたいですし、きっと解決法もありますよ」



 その後、携帯の使用許可を取り、マスターに質問しながら、解決方法を模索(もさく)していった。


 ある程度、解決に目処(めど)が立った所で「じゃあ奥で制服に着替えてもらおうか」と言われる。


 どうやら面接には合格したらしい。





「また明日、学校でね!」



 たねちゃんと別れ奥へ入り、着替えて戻ってくると、笑顔の鈴美さんに呼ばれる。



「うちがあんたの教育係やから、これからはスズミン先輩と呼ぶように!」


「はい! スズミン先輩!」


「にゃはは! ええ子や、素直な子ーは嫌いやないで」



 それから、スズミン先輩にテーブルの拭き方から、食器の洗い方、おつまみの位置など初歩的な事を教えてもらった。


 今日は開店まで時間が無いので、開店作業や店内の掃除の仕方はまた明日だ。



 そうこうする内にお客様がやって来た。



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