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カレーが辛いことに関する苦情について

作者: 潮路


 今月一日、県内のカレー専門店「ザンバラ」にて口論の末、タレントの胃もたれ次郎さん(25)が軽傷を負ったことが発覚しました。

 経緯を確認しますと、胃もたれさんは、「ザンバラ」店長の照井でるい 品二ひんじさんに対し、「食べたカレーが思ったよりも辛かった。謝罪と慰謝料を要求する」との発言をし、それに対し照井さんが反論。口論となった末に、胃もたれさんが投げつけた皿の破片が、自身の靴の中に入り込んだ結果、移動のはずみで足裏を切ったとのことでした。

 警察の調べに対し、照井さんは「言い分を変えるつもりはないが、辛さについて、もっとわかりやすいように表現する」と回答しているとのこと。

 以上、ニュースの時間でした。



 カレー騒動、続報です。

 今月二日、県内のカレー専門店「ザンバラ」にて、タレントの胃もたれ次郎さん(25)が再び口論を起こし、結果として軽傷を負ったことが判明しました。

 経緯を確認しますと、胃もたれさんは、「ザンバラ」店長の照井 品二さんに対し、「先日出した指示も無視して、再度辛いカレーを提供した。謝罪と慰謝料を要求する」との発言。対して照井さんが提示した「辛い商品には炎のマークを付けるようにしている」という内容に対し、「炎のマークが付いていないカレーを選んだのに辛かった」と反論。口論となった末に、胃もたれさんが投げつけようとした皿に入っていたカレーに指を突っ込み、軽いやけどを負ったとのことでした。

 警察の調べに対し、照井さんは「言い分を変えるつもりはないが、辛さについて、対象を全商品に広げてみることにする」と回答しているとのこと。

 以上、ニュースの時間でした。



 カレー騒動、また続報です。

 今月三日、県内のカレー専門店「ザンバラ」にて、タレントの胃もたれ次郎さん(25)が三度目の口論を起こし、結果として軽傷を負ったことが判明しました。

 経緯を確認しますと、胃もたれさんは、「ザンバラ」店長の照井 品二さんに対し、「メニューに対して意味の分からない表記をし、自分を幻惑した。謝罪と慰謝料を要求する」と発言。対して照井さんは「全商品に対して五段階の辛さ度を追記した」と回答。「その辛さ度は誰目線なのか。段階ごとにどれだけの開きがあるのか」という胃もたれさんの質問に対して、律儀に解説をしている内に、胃もたれさんが立ちくらみを起こし、そのはずみでテーブルの角に頭を打ち付けたとのことでした。

 警察の調べに対し、照井さんは「言い分を変えるつもりはないが、辛さについて、ちゃんとした尺度を用いるようにする」と回答しているとのこと。

 お二人の関係が修復されることを祈っております。

 以上、ニュースの時間でした。



 祈りも虚しく、カレー騒動、更なる続報です。

 今月四日、県内のカレー専門店「ザンバラ」にて、タレントの胃もたれ次郎さん(25)がいざこざを起こし、結果として軽傷を負ったことが判明しました。

 経緯を確認しますと、胃もたれさんは、「ザンバラ」店長の照井 品二さんに対し、「メニューに記載している『すこびる』とは何ぞや。謝罪と慰謝料を要求する」と要求。対して照井さんは「辛さ度という抽象的な観点はなくし、スコビル値という辛さの単位を用いた」と解説。「スコビルがどんなものかも知らないのに、意味はあるのか」という胃もたれさんの指摘に対し、納得した様子を見せておりました。

 あわや決着かと思いましたが、四度ものクレームについては、照井さんが認めても、他の来店客が納得しておらず、店外へと追い出され、その際に何もないところでつまずき、ひざをすりむきました。

 警察の調べに対し、胃もたれさんは「これでスコビル値に対する情報と、そのスコビル値をカレー以外の食べ物で表現すると何になるのかの比喩を追加すれば完璧だろう」と得意げな表情を見せていました。

 ようやく決着となるのでしょうか。更に聞き込み取材を続けていきたいと思います。



 過去四度に渡ったカレー騒動、まさかの結末です。

 今月五日、県内のカレー専門店「मसालेदार」にて、タレントの胃もたれ次郎さん(25)が意識不明の重体となっていたことが判明しました。

 経緯を確認しますと、胃もたれさんは同日、四度のクレームを行ったカレー専門店「ザンバラ」を出入り禁止になっており、近くにあった「मसालेदार」に移動。

 ヒンディー語で書いてあって良く分からない中、適当に商品に指を向けて「सुपर गर्म करी」という商品を注文したようです。そして、それを口に入れた瞬間、椅子から崩れ落ちるようにして倒れ込んだようです。

 取材班が確認したところ、「सुपर गर्म करी」は日本語に訳すと「超激辛カレー」という意味合いであり、とても常人では食べることが出来ない代物だということが判明しました。

 本日(六日)未明ごろ、病院内で意識が戻った胃もたれ次郎さんは、取材班に対し「辛さ度もスコビル値も載っていなかったから注文した」とか細い声で報告。

「मसालेदार」のメンバー一同は心配しきった様子で、胃もたれさんの身を案じていました。

 通訳を介した店主からのメッセージを以て、ニュースの締めと代えさせていただきます。


「今回は雇ったシェフの腕が至らず、本当に申し訳ないことをした。詫びとして店主の私が作った特製の『सुपर गर्म करी』でもてなそう」 

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― 新着の感想 ―
[良い点]  笑いと恐怖、笑いと怒りはやっぱり紙一重なんだな、と感じる良作でした。  当人が大真面目なのが、やはり私の中でポイント高かったです。そして、さりげなく祈られたり出禁になっちゃったりしている…
[良い点] 最近世間でありがちなクレームへの風刺的な作品かと思ったら良い意味で裏切られました。 読み進める内に、いちゃもんの正誤や辛いの苦手ならカレー食べにこなきゃいいのにとか、そういったマジレスが遠…
[良い点] 笑いました。 いや、コレ、マジで面白い。 ばかばかしいんですけど、当人たちは大真面目ですからね。
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