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夢の狭間
ー 見て見て! 外でお花が咲いてたの!
そう言って少女は家に上がり込む。
ー おお、いらっしゃい。
家主の男性が読んでいた本から目を上げる。
ーあの子なら上にいるよ。上がるといい。
すでに階段を登り始めている少女の背中に、そう声をかける。
ーねぇ!これ何のお花かな!?
少女はそう言いながらドアを開ける。
窓際のベッドには一人の少女がいた。
ーあら、ルー、おはよう。
ーおはよう、じゃないよ!もうお昼になるよ!
ルーと呼ばれた少女は言う。
ーもうそんな時間?昨日夜更かししちゃったから…
ーまた本ばっかり読んでたんでしょ!身体悪くするよ?
ーうふふ、もう悪いのよ?だからベッドにいるんじゃない。
二人はそんなことを言いながら笑う。
何度目だろう、こんなやり取りも。
ーあ!そうだ!ねぇコロン、このお花!なにかな?
思い出したようにルーは聞く
ーへぇ、このお花はね、
ベッドの少女ーーコロンは答える。
ー秋桜っていうのよ。
ーこすもす…?
ルーは花をじっと見つめる。
ーそう、秋桜。
嫌なことなんて全部空が飲み込んで消したような、とても良く晴れた日だった。