はじまり
次の日、学校が終わり急いで帰る健人の表情は電気をもっと明るくしたみたいに嬉しそうだった。
初めてのバイトで、緊張をするどころか由眼と一緒に働くんだという緊張が大きかった。
由眼がいるかどうかわからないのにドキドキが止まらない健人。
店につき裏側から入っていった。
『矢東さん、こんにちわ。早いね!』店長の前田さん、面接と変わらない元気がいい。
『こんにちわ。今日からよろしくお願いします!』
『まずは、みんなに自己紹介をしようか。矢東さんの時間帯のメンバーだ。』夕方から出勤の方が集められた。
『今日から、夕方から出勤する矢東さんだ。わからないことは教えてあげてくださいよろしく!』健人は、お辞儀をして緊張していたがメンバーの中に由眼の姿があった。
『矢東健人です。今日からよろしくお願いします!』みんなに笑顔で迎えてもらい健人に居場所が出来た。
『あのぉ。いつも買い物来てくれてますよね?』優しい声でいつもここに買い物来て聞こえてくる声と同じ由眼が声をかけてきた。
『あ!はい!いつもすいません。ここに来ると幸せになれるといいますか買いやすくて…。』照れながら話をする健人に由眼は優しくほほえんだ。
『水木由眼です。よろしくお願いします。新しい方が矢東さんだと思わなくてびっくりしました!』由眼の話し方が買い物に来ている時と違ってまたドキドキしていた。
『よろしくお願いします。水木さんいつも笑顔で優しくて、他の方も優しくて働きたいと思いました。』由眼は、また健人に笑顔を見せた。
『すごくいい職場なんで仲良くしましょうね!あ!連絡先とか交換しませんか?仕事でわからないことは連絡してください!』由眼の言葉に健人は、ドキドキがさらに激しくなり顔が真っ赤になっていた。
『えっとおお、あありがとうございます!すいませんわざわざ、嬉しいです!』健人は心の中で叫びながらにやけた顔が戻らない。
バイトの日が健人にとって幸せな時間だったのかもしれない。
忙しい時も、大変で辛い時も由眼の笑顔や声で乗り越えられた。
やっていくうちに、由眼との関係が少しずつ変わっていった。
店が閉まり、今日は由眼と健人が閉店作業をする日だった。
健人は、心の中で思った。
由眼に想いを伝えようと決意した。
『水木さん!』由眼は、こっちを振り返り笑顔で健人を見る。
『どうしました?』今がチャンスで逃したらもうないと感じた。
『少し時間あったらお話したいことがあるのでいいですか?』
『はい、大丈夫ですよ!』作業を終わらせ、店の戸締りをして2人は外に出た。ひと気のない方へゆっくりと歩いた。
『すいません、急にお時間いただいて。』緊張がすごいのか手汗がひどい。
『いえ、話ってなんですか?なにか悩み事でしょうか?』心配そうな顔をする由眼に健人は大きく首を振った。
『悩み事ではなく、あの水木さんのこと買い物に来ている時から気になっていて好きでした。』驚く由眼、顔を下に向けて何も返事がなかった。健人は、いてもたってもいられなかった。
『買い物に来てくれたり、バイトまでここへ選んでくれたりありがとうございます…。私は、矢東さんといると落ち着くというか安心出来たんです。私なんかでよかったらお願いします。』由眼の目がまっすぐ健人の方へ向いた。とても可愛くて綺麗だった。
『水木さん、いつも笑顔で優しくて丁寧に教えてくれたりありがとうございます。嬉しい…。好きです。本当に好きです。』健人は、思わず由眼を引き寄せ抱きしめた。由眼の暖かいぬくもりにまた嬉しくなった。
由眼もそんな健人を強くぎゅっと抱きしめていた。
こんな幸せが長く続くように健人は、神様に祈る。由眼という存在が自分を変えてくれたことに感謝して心の中でありがとうと伝えた。
健人は、想う。もし由眼がいなくなったらどうなるんだろうと不安が大きくなっていった。