イケメンルーキーとお姉さま方
伊藤です。
自分で言うのも何ですが、イケメンなので今日も、モテモテです。
体調をくずした職場の先輩のお見舞い帰りにキレイどころに囲まれています。
先輩のお友達たちです。
お姉さま方です。
なんでだ~
PTAに紛れ込んだようだ・・・というのが正直なところだ。
俺をそっちのけで交わされているのは
健康のこと
子供のこと
旦那の愚痴
職場の愚痴
俺、いなくていいよね・・・
「ところで、伊藤君は彼女いるの?」
「やだ、いるに決まってんじゃン。こんなイケメンなんだよ?」
「いやいや、意外とイケメンほどさびしい青春なんよ。」
「あ~わかる、だって、同期で一番もててたあの子、まだ、独身だもんね。」
「え?あの子、まだ独身なんだ。選んでるからだよ。」
話はまた、俺から離れて、同期一かわいかったモテ子さんが結局、未だ独身だという話題になっていた。
しかし、”あの子”ってあなた方の同期ってことは
もう37ですよね?下手したら40ですよ。
いくつまで女の子は女の子なんだろう・・・
アイスコーヒーのストローをずずーっと音を立ててしまって経理課の恵子さんに睨まれた。
「退屈しているわね?」
「え?いえ、そんなことは・・勉強になります。」
ぴきんってして返事した俺に恵子さんがニヤリとした。
「じゃあ、退屈している伊藤君のために、ミヤコちゃんのお話でも?」
ミヤコさんっていうのは今日、お見舞いにいった職場の先輩だ。
今は妊娠中毒症とやらで入院中。
スーパー庶務さんで、彼女がいなくて職場は結構、大変。
ちゃんと、マニュアルが作ってあって、仕事が止まることはないけど、スピードが・・・。
「ミヤコちゃんがいないと、書類の処理とか大変でしょ?経理関係は私に聞いてくれたらいいわよ。」
と恵子さん。
「ああ、じゃあ、総務関係は私が。」
「電算機も私がいるし、設計さんには、サコちゃんがいるよね?」
「うん。いいよ~伊藤君はイケメンだから助けてあげる。」
わあああ
イケメンで、そしてミヤコさんの後輩で良かった。
各部署、心強い味方を得たよ。どこの職場でもきっと、一番の先輩女子社員が味方だよ・・・。
ミヤコさんの穴を埋めるために雇った派遣社員の子は、就職浪人ちゃんで実は使えなかった。
電話の出方までレクチャーしないといけないなんて派遣会社め!
派遣期間があいまいだったためにこんなことになっちゃったんだそうだけど、教えるのは俺の役目だ。
自慢じゃないがイケメンなので彼女が色気付いちゃって、教えにくい。
これで各部のお姉さま方に彼女をおまかせしてしまえば・・・
「伊藤君?自分で聞きにくるのよ?」
え?あれ?
「いや、俺、別に庶務担当じゃないんですけど・・・直接、うちの派遣社員さんに教えてくださいよ。」
お姉さま方の冷たい視線が俺に集まった。
え?そんなにイケメンの俺に会いたいですか・・?
困っちゃうなあ・・・
「あのね、伊藤君。あの派遣社員の子は多分、今週で会社辞めるわよ。」
「そうね。」
俺以外の全員頷く。
「え?え?なんで?」
そんなそぶりはみていない。
昨日だって、10回目くらいになるスキャナの使い方を教えたばかりだ。
「派遣社員は派遣後2週間はお試し期間で、その間ならこっちがチェンジを要求しても、むこうが辞めてもOKなのよ。彼女、今週で2週間でしょ?」
「なんで辞めるんですか?」
「伊藤君のせいね。」
「そうねえ・・・伊藤君のせいだわね。」
なあんでえええ
だって、俺、がんばって教えたよ?
イラッてしても、がんばって笑顔だったはず。
「気がついてないんだ?」
「そうねえ、気がついてたらもっと・・こう?ねえ」
きょとんとした俺にお姉さま方が爆弾を落とした。
「あのね、伊藤君は教えながら、ミヤコちゃんのノロケを言ってんの。」
「え?」
「これさ~なかなか覚えられないよね~俺も何度もミヤコさんに聞いちゃったんだあ。ミヤコさんがそのたびに優しく教えてくれたから覚えられたと思うんだ。だから君も遠慮しないで何度でも聞いてね?ミヤコさんほどじゃないけど、俺も優しく教えちゃうからさ。」
え?え?
「これが、昨日、伊藤君がスキャナを教えながら派遣の子にいったセリフです。」
「バカだわね。」
「伊藤君は本当にミヤコちゃんが好きなのねえ・・・」
「不毛だわ~」
が~ん!全く気がついていなかった。
恥ずかしくて顔が上げられない。
俺は思っていたよりずっと、ミヤコさんが好きだったようです。
3人目を妊娠していて、妊娠中毒症で入院中の俺の先輩。
長男しか会ってないけどイケメンだったし、会社の評判では旦那さんもイケメンらしい。
年だって俺より15は上なんだよね。
マジ、不毛~
つ~か、恋愛ではないと思いたい。
お姉さま方のニヤニヤからも逃げたいです。