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3

午前授業を全て終え、昼休みの時間になる。

 隣のみうさんは、授業が終わるとどこかに行ってしまい。

 俺はとりあえず自分の弁当に手を伸ばす。


弁当は、俺の母。茜お手製の弁当となっている。

母の弁当は、いつも俺のことを未だに小学生だとでも思っているのかキャラ弁だったりと大変恥さらしな弁当である可能性が高いが、上手いので文句は言えない。

 今日の弁当は、たこのウインナーと卵焼き。それと冷凍食品の数々。

「お兄ちゃんー、お昼いっっしょにたぁーべよ!」

 我が愛しさ余って憎さ百倍の愚妹が、教室の中へと入っていく。

「おい、沙織。俺のことは、そろそろお兄さんとかそんな感じで呼べよ」

「えー、私十六年間お兄ちゃんのことをお兄ちゃんと呼んでるんだよ? むしろ、この歳になってもお兄ちゃんなんて呼ばれるなんて貴重だよ? 私は、希少価値だよ?」

「そんな価値なんかいらない」

 俺が一蹴すると、沙織は頬をぷくっと膨らます。

 そこに、みうさんが帰ってきた。

「あら、この子は?」

「あっ、こいつは」

 俺の説明を待たずに勝手に沙織は、自己紹介を始める。

「私、妹の沙織っていいます! もしかして、先輩が今日転校してきた方ですか?」

「そうなの。ええ、そうよ。よろしくね、沙織ちゃん」

 その煌びやかな笑顔を沙織へと向けると沙織は、そのみうさんへとむぎゅっと抱きつく。

「え、ええっと」

 顔を瞬間的に困らせているみうさんは、とても可愛らしくもっと見ていたかったが。あまりにも可哀想にも見えたので。沙織を引き剥がす。

「お兄ちゃん、せっかく今寝そうだったのに!」

「お前は、コアラか。みうさんに迷惑だろ」

「あ、ううん。私は大丈夫だから」

 にこりと俺にその微笑みを向けてくれる。これが、惚れてしまった時に感じる胸の鼓動という奴なんだろう。恋愛が、まさかこんなに体に異変を来すなんて。

「それじゃ、一緒にお弁当食べませんか? 妹もみうさんともっと話したいだろうし」

 俺は、妹をエサにみうさんとの食事機会を得ようとし

「あ、いいんですか? ならご一緒させていただきますね」

「お兄ちゃん、さっすがー!」

 二人が、きゃっきゃっと騒ぎ始めたと同時に他の男子連中から俺に殺意のこもった視線を向けられる。

(どうだ。男子共よ。俺は一歩リードしたぞ!!!!!)




 放課後になんとなく、図書室に寄るとそこには麗しの女神みうさんが先にいらっしゃっていた。

「あっ、みうさんじゃないですか」

「一ノ瀬くん」

 本の静かな空間に彼女という存在はとても似合っていた。

「本好きなんすか?」

「うん、本読んでると落ちつくし。あっ、いけないそろそろ帰らないと」

 みうさんは、またねと言い残すと帰ってしまった。せっかく、本の話で盛りあがろうと思ったのに。

 みうさんが座っている席を見ると、そこにはブックカバーを付けた本が一冊置いてあった。

「忘れものか?」

 俺は、その時なんで開いてしまったのか分からないが。

 とにかく、彼女の読んでいた本が気になってしまったのだ。

「こ、これは」

 彼女の本の内容は、ガールズラブと言われる女性同士の恋愛を描いているジャンルのお話で。

 俺は、驚いて。そっと本を戻そうとした時。

「読んでしまったんですね」

 背後から、少し弱々しい声のみうさんの声が聞こえた。


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