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蒼の大地  作者: 鷲獅子
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chapter01 はじまりは交通事故

異世界に行くまで時間がかかりますのでご注意ください。

■はじまりは交通事故




 ズン――!


 重い音を立てて、一台のワンボックスカーが目の前の塀にぶつかった。


 稀にみる大雪で、スリップした車が反対車線から歩道を乗り上げるのを見ていた俺は、とっさに目の前を歩いていた女性の腕を掴み引きよせていた。

 その直後、目の前で車が石の塀にめり込むのも見ている。


 当然、女性は無事、もちろん俺も、


 しかし、女性の方は現状を理解していないらしい。

 雪の上に座り込み呆然としたまま、鼻先一センチの所で煙を上げている車を見ている。

「車から離れた方がいいぜ」


 とだけ言って、車の運転席側に回り込む。

 運転していたのも女性だった、すぐにドアを開けて聴く。


「大丈夫ですか?」


「は、はい」


 動揺しているが声はしっかりしている。

 ケガがあるとしたら鞭打ちぐらいだろう。


「なら車から降りてくれ」


 ――もうすぐ爆発するから


 という言葉は飲み込んだ。

 これ以上動揺させるのは良くない。


「え・・あ・・」


 と運転席の女性の目が泳ぎ、後部座席を見ようとする。

 そこで俺も気が付いた。


「子供か?」


「はい…」


「俺が降ろす。あんたは自分で降りれるな」


「あ…はい。おねがい、します」


 俺は頷いて、後部座席に回りドアを開ける。

 中には3歳ぐらいの女の子が居た。

 しっかりチャイルドシートに座っていたためケガはなさそうだ。


 ただ、こちらも何が起こったか分かっていないらしい、キョトンとした目で俺をみている。


「もう大丈夫だぞ。今、降ろしてやるからな」


 コクンと女の子は頷いた。


 シートのベルトを外して抱き上げる。ついでに転がっていたクマのぬいぐるみも拾い上げた。


 車から離れると、運転していた女性がヨロヨロと歩み寄ってくる。


「ママ」


 女の子が母親に手を伸ばし、母親も震える手で女の子を抱き寄せた。

 その時、


 ――ぼん!


 意外と地味な音を立てて、車が火を噴いた。

 みるみる火は広がり車体全体を包みこんでいく。


(爆発ってほどでも無かったな・・・)


 俺がそう思っていると、


「あああああ」


 母親は言葉にならない声を上げて娘を抱きしめたまま、その場に崩れ落ちる。

 女の子はきょろきょろ見渡している。


「クマさんは?」


「ここに居るぜ」


 ひょい、とさっき拾ったクマを差し出す。


「クマさんだ。 ありがとう!」


「どういたしまして」


 俺がそう言うと、


 ぱちぱちぱち・・・


 と拍手の音が聞えて来た。

 通勤途中のサラリーマンからOL、小中高校生、トラックの運ちゃんなど・・・


 いつの間にかギャラリーが出来てる。


(・・・いや、手伝えよお前ら)


 そう思い、なんとなく腕時計をみて・・・・


「うわ、遅刻決定」


 ちょっとガックリきた。








「・・・えっと、神糸遠離(かみしおんり)くん。 高校一年生?」


 学生証を見せて名乗ったのに、何故か疑問形で聞き返される。

 平均的な身長体重で髪も染めていない筈なのに、よく聞き返されるのは何故だろう?


「はい。」


「ホントに?」


 警察官にこうも確認されると、さすがに緊張してくる。

 とういうより、白と黒のツートンカラーの車を見ただけで、そわそわしてしまうが。


「戸籍の偽造なんてしてませんよ。なんなら保険証もだします?」


「いや、そう言う意味じゃないよ。事故にあったのに妙に落ち着いているから、それに・・」


 警察官は拳を握りしめて言った


「高校生が暴走する車から女性を護り、その上、燃え盛る車から運転手と子供を助けるとは!!!」


 なんか話しがデカくなってる。


 ・・・あのあと、


 俺は名前も告げつ立去った・・・というか、さっさと逃げたかった。

 しかし、そうは問屋が卸さない。


 立ち去ろうとした所をギャラリーに捕まり、

 駆け付けた、救急車、消防車、警察の方々に説明を求められ、

 ただいま事情聴取中。


「いや~、この事故の話を聞いた時は、どこのスーパーマンとも思ったが、高校生それも一年生とは。驚いたよ!」


「・・・少年マンガやラノベなら珍しくもないですよ」


「はっはっは、そうだな」


 豪快に笑う警察官。

 一息ついた所で、


「ところで、女の人たちは?」


 と話題をすり替えみた。

 警察官は乗ってくれるかな~?


「ああ、運転手の女性は軽い鞭打ちですんだし、女の子は元気だ。ただ…」


 アッサリ乗ってくれた。

 まぁ、俺は容疑者じゃないしね。


「ただ…って?」


「車に轢かれかけた女性の姿が居ないそうだ。君の知り合いかな?」


「いえ、知らない人です」


「そうか、まいったな~。 最近は面倒くさがって事情聴取に協力してくれない人が多くてね」


(・・・・俺も、逃げたかったな)


 などと言う事は言葉には出さず。

 助けた女性を思い出す。


 栗色の髪に白いコートを着た、たぶん二十歳ぐらいの綺麗な人だった。


(背中しか見てないけど。たぶん美人だ……)


 と言うのは置いといて。


「でもあの人、実際には車に轢かれてないですよ?」


「いや、こっちも仕事だから。逃げないでほしい」


 真顔で言われた。


(うわ・・・逃げようとしたのがバレてる)


 さすがは警察。

 マスコミに叩かれてるほど無能ではないらしい。


「そうだな、今日はもう帰ってもいいよ。後で学校に連絡するから、家でノンビリしてても大丈夫さ」


 学校サボってもいいよ~


 って、公務員が進めていいのか?


「いや、今日は学校に行っておきたい日なので・・・」


(明日から、通えなくなるからな~)


 という俺の事情を知らない警察官はにこやかに。


「おっ。真面目だな」


 そう言って


「ああ、そうそう。人助けってことで市長から表彰状もえるぞ良かったな」


(うげげ!)


「ん? どうした」


 表情が読みにくいと言われる俺だけど、百戦錬磨の警察官には分かるらしい。


「いや、その。俺、明日から学校にいけないんです。退学くらったんで」


 深刻な顔になる警察官。


「君がか? 何をやらかしたんだ」


 俺は息を吐くように言った。


「・・・市長の息子をぶん殴りました」


「・・・・」


 警察官が何とも言えない、苦~い顔をした。







親が子供に付けなさそうな名前の主人公です。

RPGで言うと既にレベル50くらい(ラスボス倒せるな~)


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