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六月十日午前 晴れオトコ

また前半後半にわけます

「…俺は、元に戻りたいです」


「えぇ、お気持ちは察しているつもりです。しかしですね、そうしたくてもこの病気の正体自体がわからないかぎりは100パーセントを保証することなどはどうしても出来ないんです」


「…」


「落ち込まないでください。しかし悪い知らせは全部を聞いてもらわなくてはこっちもどうしようもありません。現実を受けとめていただかないと…」


「わ……わかってます」


「…それではまだいくつか重要事項がありますので、順を追って説明していきましょう。まずですが…」










「あれ?あれれれ?今日はあいつは休み?休みなの?マジで!」


「えっ?…あ、彼?そういや教室にいないね」


「よかったぁ…一時はどうなることかと…」


「ん?どうかしたの?いったいなんのことかな?」


あっと、余計なことは言わない方が良さそうだな。いや、でも…まぁ、愛にはちょっとぐらい言っても問題ないか。


「んー、今日の授業覚えてる?」


「えっ?確か、数学と英語と…」


「今日さぁ、体育あるじゃん」


「あ、そうそうお昼から体育!…あぁ、なるほどね…」


この学校は最近では珍しいらしいんだけど、学校の敷地にプールがあるんだよ。で、せっかくだからと夏場の短い期間だけ体育は水泳をしたりするらしいんだね。


まぁ、先週の体育終わりに先生が言ってたことだから詳しくは知らないけど、どうやら今週から夏休みまではずっと体育は水泳らしい。


「つまり、水着姿は見られたくない、みたいな?」


「うーん、だいたいそんな感じかな?あいつ変に期待してるんだよ、俺が今日女の子用の水着を着るんじゃないかって」


「でも、今は男の子用は着れないでしょ?」


「そりゃそうだよ!だから…まぁとりあえず休もうかな…と。先生も俺の気持ちは察してるだろうから無理矢理授業に出ろとは言わないと思うし」


それに女子の方だって気持ち悪がるのは目に見えてるしなぁ…


「あれ?でもよく考えたら確か去年からって言ってたよね?じゃあ中学三年のときはどうしたの?」


「内の学校、プールなかったんだよ。だからこそ悔しがってるんじゃないかな…」


まぁ、俺としては普通の体育ですら苦痛ですけどね。着替えなんて自分だけ別室でしなきゃならないし…それでもチームとかだけは女子と組ませられるし。体力が落ちるから仕方ないけどさ、気まずいんだよ、それだけでも。


ただある意味救いなのは胸が小さいことだな。そこは変に気にしなくてもいいもんね。大きかったら絶対に邪魔だよ、うん。


それにこの微妙な体型は俺の貞操を守ってくれてる気もする。魅力的な体型だったら、多分本当は男とかいうのも関係なく狙われるだろうからな…


まぁ、男との接触があること、自体が危険だからね…本当はあいつともあんまり関わらないほうがいいのかもしれないけど…知り合いだからまったくというのは無理なんだよね。


今回も水着の件に関してはしつこく食い付いてくるだろうから、接触は本当に最小限に収めようと思ってたけど…心配はいらなかったみたいだ。


「ふーん…なるほどね…じゃあ、まだまったく着たことないんだスク水」


「スク水って…うん、まぁ、一生着ようとも思わないけど」


だいたい最近の高校だったらプールあるとこでもスクール水着は強要はしないと思うけど。


「ってことは最初からその予定で、水着は持ってきてないってことだよね?」


「うっ!」


あ、えっと…その質問には答える必要はないよね?


「…」


「なんで無言なの?それよりさぁ…その袋って…」


げっ!最初から気付いてたのかよ!


「なにが入ってるのかなぁ?」


「……あ…えっと、俺が用意したわけじゃないからね。姉さんが一応ってしつこいから…」


「えっ?お姉さんいたんだ?」


「言ってなかったっけ?それよりもとにかく俺は持ってくるつもりはなかったんだからな!」


「ふーん…まぁ、いいや。でも…中身拝見!!」


あっ、ちょっやめて!!俺だってまだ見てない…


「…予想を裏切らないね」


「何が入ってたの!?」


「あ、代えの下着も…」


「あわわわわ!見るなっ!」


恥ずかしいなんてもんじゃないぞ!いくら女の子だからって見られて大丈夫なわけないだろ!


「へー、今もあんなの履いてるのか…」


…想像なんてして欲しくない!というか結構積極的なんですね!


…どんなのが入ってたんだろ。姉さんが勝手に用意してたからな…


スクール水着!?それに下着は…水色の横縞リボン付き!?姉さん!自分の趣味で入れたな!


「かわいいもの好きなんだね。意外だぁ…」


「違うっ!下着もこれ、多分姉さんが勝手に買った新品だから!普段はこんなのじゃなくて!」


「えっ?じゃ、どんなの…?」


ニヤニヤっていう効果音が似合いそうな顔されても…


そういやいつのまにか他のみんなもこっちを見てるような…大きな声を出しすぎたか?視線が痛い…っていうかスカートに視線が集まってるような?


「あらあら、スカートなんか押さえちゃって!可愛い!」


「め、愛の所為だ!」


「はははは、ゴメンゴメン!もうなんにも聞かないって!」


「もうっ…」


ま、そういうなら許してやるか…もう安心だし…


「…っと、ギリギリセーフ!…あれ?なんだこの空気?」


後ろから呑気な声が聞こえる。さっきまでは間違いなく聞こえなかったはずなのに…まさか、今になって来やがった?来るな、来るな!


「お・は・よ・う。今日は楽しみにしてたぜ?遅ればせながらも来さしていただきましたよ?」


「な、なんで…ただの遅刻かよ……」


「ホームルームが始まってないから遅刻じゃないぞ?」


「そんなのどうでもいいよ!!」










「あれ?どこいくの?」


「…いつもの俺専用更衣室だよ」


まぁ更衣室という名の物置だけどね。


「もしかして、出るの?」


「…あんだけせがまれたらね?」


だって本当に酷いんだぞ?朝からずっと楽しみだなぁ…どんな水着かな…どんな顔するんだろな…どんな風に泳ぐんだろな…ってさ!しかもわざわざ俺に聞こえるように!


「私としては嬉しいけど…そこまでする必要はなかったんじゃないの?」


「…実はね、ちょっとした賭けをしてたんだな、これが」


「賭け?」


「昨日さ、あいつは言ったのよ…明日晴れるといいなって。で、俺は天気予報じゃ降水確率80パーセントだったよって言い返したの」


「ふん」


「で、次にあいつがそんなのわかんねえだろ?俺が晴れると言ったら晴れるんだ。じゃないと明日お前の晴舞台が拝めなくなる!って」


「彼らしいね」


「悪い意味でね。それから俺が…無理無理、50越えはだいたい雨になるって決まってんの、バカじゃない?って言いました。するとじゃあ賭けるか?って言い出して…」


「もし晴れたら水着着てやるってことか」


「そう」


だからあいつがいないとわかって安心したんだよ。朝起きたら外が快晴だったから本当にびっくりしたよ。ま、結果的に負けたわけなんだけどね。


「…そんな約束別に破ってもよかったんじゃ…」


「いや、それはダメだ」


「なんで?いつもの高杉くんなら普通に無視してそうだけどな…」


「まぁ…とにかくだめなんだよ。だから諦めて潔く着替えます」


その代わり大事なものを失いそうだけどね。プライドとか!


「ふーん…ま、私は楽しみにしとくね」


「変に期待しないでください!」


「あ、それよりさ…着方というか…そういうのわかってるの?」


「…?」

そんなの別に…うん…多分こう、イメージで言うと下からぐっとあげていく感じで…


「多分着る自体は大丈夫かもしれないけど、変にずれたりしたらかっこわるいよ?」


「えっ!なんかそう言われると自信が…」


「だから…ね。私が手伝ってあげよっか?」


「いや、無理だって!女子の更衣室には一応入るなって先生に言われてるし!」


「違うよ、私が高杉くんのとこについていってあげるの!」


「でも…そうすると、女子更衣室に戻るまでの時間がかかって迷惑になるんじゃ…」


「はぁ…なに言ってるのかな?」


えっ?俺変なこと言ってないよな?だって俺のとこと女子更衣室は結構距離あるし…間に合ってギリギリのような…


「…私もそっちで着替えるんだよ?」


「……え?」

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