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六月五日 前の席

「…それってどういう…」


「言ってしまえば簡単な症状です。身体が女の子になってしまうんですよ」










やった、ついに春到来!というよりも高校に入って初めての友達が出来たってことに感激!しかも女の子!これはなかなかないんじゃないかな?


昨日だってずっとメールしっぱなしだったもん。迷惑かな?なんて思ったけど、絶対に返信してくれたからきっとあっちにも少しぐらいは気があるよね…えへへ。


あ、今日も雨か…ん?メール来てるな?どれどれ…うへへへへ…雨ぐらいじゃもう凹まないね!


さてと、さっさと用意して…うーん、セーラー服も着慣れて来ちゃったな。早く着れるようになったのはいいんだけど、なんだかなぁ。あ、時間やばいな。朝ご飯は飛ばそう。母さん、ごめん!


行ってきます!






「よっ!おはよー」


「…は?」


なんで玄関出てすぐにこいつがいるの?やっぱりストーカーなんじゃないの?


「な、なんだよその目は!せっかく迎えに来てやったってのによ」


「迎え?なんで?」


「だってお前…俺ぐらいしか友達が…だからその…や、優しさだ」


「ふーん」


そんな照れながら言ったって全然かっこよくないし。ばばーんと決めようとでも思ってたんだろうけど残念。そのご厚意にはまったく与らせてあげませんよっと。


「…って、せっかく待ってたのになんですたこらさっさと俺を置いて行くんだよ!」


「別に頼んでないし」


それに友達がいるやつだって登校は一人が普通でしょ?そりゃ家が近けりゃ一緒にってのも考えられなくはないけど。こいつの家結構遠くなかったっけ?わざわざ来てるって考えると…ちょっときもい。


「まったく…人の気も知らないで」


「知りたくもないって。…あと、俺、友達出来たから。お前に心配される筋合いはもうないんだよね」


「は?友達?嘘だろ?だって昨日だってクラスの奴らが…」


「やっぱり俺のこと話してたんだ」


「あ、いや、違っ…俺は奴らが言ってたのを聞いただけだから。別にお前がどうとかは…」


「いいよ、別に。もう気にすることもないもんね。俺の青春は始まってるんだし」


「青春ねえ…青春?まさか!女?」


あれ?さすがに意外だったのか。ま、俺自身も最初の友達が女の子になるなんて思わなかったけど。


「うん、そう、前の席の女の子。おとなしそうな感じのかわいい子だったよ」


「おいおい、レズはねえよさすがに」


「男だったらホモだと思うけど?それに俺は男が元だし。七月になって男に戻れるから…な?」


「くそぅ…」


やれやれ、そんなに悔しがってさ。まさか俺に先を越されるとは思わなかったんだろうね。いい気味だ。…まぁまだ友達になっただけなんだけど。


「ほらほら、いつまでそんなに悔しがってんだよ!遅刻するだろ?早く行こうよ」


「…いや、だってよ…まぁ、いいか。まだ高校生活は始まったばかりだ。チャンスはいくらでもある…」


「そうそう。そんなに気を落とすなって。クラスで人気のお前なら誰でもすぐに落とせるよ」


「…はぁ、お前は本当に…」


キンコーンカンーコン…


あ、チャイムだ。急がないと…うわぁ、ヤバイ!校門に先生が!


「あわわわわ、どうする?」


「どうするもこうするもそのまま行くしか…」


「じゃあ行ってこい!」


「うわっと!?」


やつを思いっきり押し出してやった。で、あいつだけ先生に見つかりますっと。俺は角で様子を伺って…


「お前!一年の分際で遅刻とはいい度胸だな?」


「あ、いや、違う、違うんです!」


「違わないだろうが!どうやら今日のビリはお前だけのようだからな?今からみっちりと指導してやる」


あ、そういやこの先生、熱血体育教師って聞いたような…今どき珍しいくらいの熱血っぷりで生徒たちを苦しめてるとか…あぁ、悪いことしたな。


…連れてかれちゃった。今校門の前には誰もいない…


お邪魔しまーす…





「おはよー」


愛が俺が席に着くと開口一番にあいさつしてくれた。なんか幸せだなぁ。


「チャイム鳴ったよね?大丈夫だった?確か体育の先生だったような気がするけど…あの人厳しいって聞いたよ?」


「大丈夫大丈夫!うまいこと逃れてきたから!」


「ん?ならいいけど…でもよかった、なんともなくて」


「ん?なんのこと?」


「あ、いや、昨日のメールで散々愚痴ってたからね、学校嫌でもう来ないのかなって…」


本当に優しさなぁ。嬉しさで胸がいっぱいになりそうだよ。とは言ったものの、女の子になっても膨らまない胸はしゃれにならないよね?まぁ、邪魔になるからいらないけど。


そういや、愛も胸は小さいよなぁ。身長も低めだし。玄関に置いておきたいサイズって感じだな。でも同じくらいなんだよなぁ、俺も。よく考えたら結構合うのかな俺たち。


「…どこ見てるの?」


「あ、いや、なんでもないよ。それより心配ありがとうな。むしろあのメールで散々愚痴ったからストレスも発散出来たんだよ。愛のおかげ、本当にありがとう」


「えへへ、どういたしまして」


か、かわいい!今の時代に素でえへへ、なんて言う女の子初めて見たよ。なんか愛ってなにもかもが新鮮だなぁ。


「あ、髪の毛跳ねてるよ」


「え?よくわかんないけど…」


「はい、鏡!寝癖くらいちゃんと直そうよ」


「いいよ、別に」


「今は女の子なんだからだめでしょ?せっかく可愛いのに台無しになっちゃうよ」


可愛いのは愛の方だよ、なんてのはさすがに言えない。言ってみたいけどちょっと臭いよね。それにまだまだ早い、うん早い。もとゆっくり仲良くなって行きたいんだ…


「もう、私が直してあげるよ」


そういって小さなポーチから櫛を取り出した。んでその櫛を使って俺の髪を梳かしていく…


うわぁ、不意打ちだ。正面の席だから俺の頭を梳かしている愛のちょうど胸あたりに視線が行くんだよ。セーラー服だから首元の鎖骨とかもチラチラ見えてなんか…こう…男としては堪らないものが…


あ、なんかいい匂いがする。香水かな?男の身体の時は苦手な匂いだったのに…それとも愛の匂いだからかな?うん、とってもいい匂い…


「はい、終わり!これでちょっとはましになったかな…ん?どうしたの?」


「え、あ、あう…なんでもないよ」


「もう、なんかぼーっとしてたよ?女の子は常に警戒心ってものを持ってなくちゃ!野蛮な男に襲われてからは遅いんだよ?」


「う、うん…そうだね、気を付けるよ」


「高杉くんはかわいいから特に注意しなくちゃ。私でも襲っちゃうよ!…なんてね」


「え、あ、あはははは」


…うう…ちょっとドキドキしてる。もうなにもかもが不意打ちだよ。もちろん冗談だろうけど…冗談だよね?


「…あれ?そういや、今日はいつもの彼はいないの?」


「いつもの?あいつ?あ、そういや…」


今ごろこっぴどく叱られてるんだろうなぁ…まぁ、知ったこっちゃないね。それよりも愛との時間を楽しむために帰って来てくれないほうがいいかも。


って、それは言いすぎかな?

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