6月1日 初心者
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「……あの、明日からはもう学校に行っていいんですよね」
「通えるように手配できますが……無理して行かなくても特別欠課として扱ってもらえますよ。しばらく身体的にも精神的にも様子をみるとか――」
「いや、大丈夫です。ちゃんと学校には行きます。というか……ここで休んだりしたら受験もあれなんで」
「そうでしたね。忙しい時期ですから…まぁ、仕方ありませんか。ですが、人間関係などはくれぐれも注意してください」
「わかってますよ。いきなり男が女になれば…みんなやっぱりビックリしますから。うーん…まぁ、そこら辺はがんばりますよ」
「意外と楽観的なんですか? 結構厳しい状況下に立たされていると思いますけれど」
「そりゃそうですけど…素晴らしい高校ライフを手に入れるにはここで挫折するわけには行きませんからね。たとえ今辛くても来年は苦労したくないですから」
「そうですね。いい心がけです。いつまでもそうやって自我を貫くことが出来ればこの病気に屈することもないのかもしれませんね」
「――先生、今日は本当にいろいろとありがとうございました」
「いえいえ、私にできることは病気について教えてあげることぐらいですから」
「いえ、とんでもないです」
「そう言っていただけるとこちらも幸いです。さて、大丈夫ですか? 入り口までは送っていきますよ。まだうまく歩けないでしょうから」
「あ、ありがとうございます」
「――おや? 来客ですか?」
「えっ?」
「どうやらお迎えが来ているようですよ」
「母さんか、もう来てくれてたんだ」
「いや、どうやら男の子がこちらの部屋に来ているそうです」
「男?ん……?」
「あれ、覚えがないんですか? 名前は橘と言っているみたいですが……」
「あ、あいつか……」
「お友達ですか?」
「いやいや、そんなもんじゃないですよ、あいつは」
「おや、そうですか? とても心配そうな面持ちらしいようですが……」
「……あいつに心配されても」
「しかし、あなたは結構うれしそうな顔をしているように見えますが?」
「冗談言わないでくださいよ。あいつはただのクラスメートなんですから」
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