六月二十三日 彼女
ミスが発覚したので訂正。
と、説明。
主人公の名前は
高杉 陽
彼は
橘 律弥
女の子は
大岡 愛
ある章で主人公の名前が誤表記されてました。これが正しいのでご了承ください。
「気をつけること…それは散々言ったんじゃないですか?」
「いや、それの延長線上です。ひとつ質問いいですか?」
「は、はい…なんですか?」
「あなたには仲のいい友達…まぁそうでなくとも、付き合いの長い、もしくはよく遊ぶ人物ってどれくらいいますか?もちろん男性でです」
たぶん、自分でも気付いてたけど、愛は俺のことが好きなんだろう。
それが恋愛感情なのかはわからないけど、きっと間違ってはないはず。だって…
「陽くん、一緒に学校行こ!」
「…う、うん」
嫌いなやつの家にわざわざ迎えにくるはずがないから。最近はずっとこんな感じなんだけど…実際どうなんだろ。まぁ、それはいいとしてさ、
「…えっと、俺が彼氏でいいんだよね?」
「え、あ、あぁうん。そうだね」
「昨日さ、俺が迎えに行くってことになってたよね?」
「うん…でも、来ちゃった」
うれしい。片目を瞑り上目遣いで、ちょっと舌なんか出したりしてそんなことを言われたらとてもうれしいんだけど…彼氏としては、彼女は迎えに行きたいものじゃない?
男心を維持するためには彼氏気分を味わないといけないのに、出だしからこんなので大丈夫なのかな?
「彼氏ってさ、彼女を迎えに行ってこその彼氏だと思うんだよ。だから、そこはぐっと我慢して俺を待ってて欲しかったな」
「まぁ、いいでしょ?ほら、陽くんてだらしないとこあるから忘れるかもって思って」
「ひどいなぁ。昨日はちゃんと約束通り家まで送ったじゃん。俺は出来る男だよ?」
「出来る男は自分から頑張ったなんて言わないよ。黙ってやるからかっこいいの。でも、陽くんはそれでもいいけどね。なんか背伸びしてるみたいでかわいいし」
かわいいってのはダメだけどなぁ。…やっぱり愛の理想の彼氏像ってのに近づかないとダメなんだろうな…
「…まぁ、なんでもいいや。とにかく早く学校いこ!」
「うん」
一言だけ言って手を差し出す。愛はなにも言わず、ただ笑顔でそれを握り返してくる。
これも最近は慣れてきた。女の子と手を繋ぐなんて機会、数日前が初めてだったのに。おかしな気分だ。
「…ちょっと違うかな?」
「ん?」
「こうだよ」
握り方を少しかえてきた。指一本一本を交互に挟む。しっかりとした繋がり。これだとちょっと身体も近づいてしまう。
「…歩きづらいかな」
「そんなのは気にしちゃだめなの!雰囲気が大事なんだから」
「でもこれってさ、他人から見れば仲の良い女の子同士にしか見えないよね?」
これも最近の疑問。愛が彼女だったらなぁ…なんて思うことがしばしばあって…それが現実になったわけなんだけど、それってどんなに頑張ってもこの姿じゃ友達として見られるのが限界のような気がする。
「…ねえ、陽くんてさ」
「ん?」
「女の子同士の恋人ってのは見かけじゃわからないと思う?」
「そうなんじゃないの?たぶん」
「…例えばさ…」
止まっていても仕方ないので、学校に向かって歩きながら話し始める。軽く握った手を揺らしながら。
「教室のど真ん中で、女の子二人が抱き合ってたら…それってただの仲良しに見える?」
「女の子のスキンシップってそんなものじゃない?」
「まぁ、そうなのかもね…でも、少なくとも私はそうは思わないけど。…最近さ、皆軽いよね。女の子同士でも、男の子同士でも、男女でも。一見しただけじゃ彼氏彼女なんてわかんない。男と女で抱き合ってたとしてもただの友達って場合もあって、両方彼女彼氏持ちなんてね」
「なにが言いたいの?」
「ん?いや、なんでもないよ、うん。あ、でもこれだけは言っておこうかな…」
歩みが止まる。
「私は陽くんにしか抱きついたりしないよ」
また歩きだす。
握った手の力が少し強くなった気がした。
さっきのは…喜んでいいことなのかな?でも…俯き加減で呟いた顔はちょっと寂しそうな感じだったし…
なんだろう。
「…男の子同士でさ、抱きつかれたらどう思うの?」
「ん?今度はそっち?男って…」
「あ、いや、そういうつもりで言ったわけじゃないよ!ごめん、忘れようとしてたのにね…」
確かに、頭の中にはやつの顔が掠めた。でも、そんなのはもう気にしないって。
「大丈夫、だから。男同士…スキンシップならまぁ、汗臭くない程度ならありかな?喜びを分かち合う時とかは乗りでするんじゃない?」
「…そうかな。それがやっぱり一般論か。でも、彼は間違ってたよね。今の陽くんは女の子なのに変なことしようとしてたから」
「まぁ、男の場合のほうが危ない気持ちもするけど、ある意味」
「それもそうだね」
ちょっとほほえんでくれた。
「そっか…陽くんって結構青春とかそういうの信じるタイプなんだね」
「青春って信じるとかじゃないと思うけど。ようは自分が楽しめるかどうかってことでしょ?」
「まあ、ね。でも、そういうの気にしない人…っていうかどうでもいい人っているんだ、実際。例えば私ね」
「え?そんなのおかしいよ。だって、いつも楽しそうにしてるし」
「だからそれは…陽くんがいるから、だよ」
また、ぎゅっと握ってきた。
「多分私、陽くんがいなくなったら何ひとつ楽しめなくなるよ?それだけ大事なの」
「…」
それは友達がいないから?なら、俺はどうなんだ?愛がいなくなったら…一人なのか?
お互いがお互いを必要としてる。だから、恋人なのかな…
でも…なんでだろ、友達っていうほうが自分としてはしっくりくる…
「私はね、一瞬の輝きなんて欲しくないんだ。ずっと、死ぬまで輝いてて欲しいの。だから…嫌、なの青春って言葉」
「…愛?」
「あ、ごめんね。あまり深く考えないでよ!ほら、陽くんとずっと仲良しでいたいって意味だから!」
「あ、う、うん…」
愛は焦ったように言うから…なんか怪しい。昔なにかあったのかな?
「…ねえ、輝きがなくなったものって、必要かな」
「え?どういう意味?」
「だからさ、もう二度と光ることのない電球を持っていたとしても意味ないでしょ」
愛はふっと、立ち止まってもう片方の手で指差す。
その方向にあるのはカバンに付いたストラップ。
「嫌な思い出は捨てようよ。いくらそれを貰ったときがキラキラしてたとしても、もう…それ見ても苦しいだけでしょ?私、陽くんが悲しむのもう嫌。私が悲しくなるのも耐えられない。だから…お願い。忘れようよ、完全に」
違和感がある。確かにストラップは悲しい思い出にしかならない。捨ててもいいかもしれない。
でも…愛が言ってることはなにかおかしい。俺に言ってるような気がしない。
なぜか、愛自身のために言ってる気がする。俺のためよりも、ただ、自分に不満があるから…
「…わかった。そうだね」
俺は…気になりつつもストラップを外した。カバンの中にそっと押し込む。
「…これで、これからは楽しい思い出がいっぱい作れるよ。悲しいことなんて思い出しちゃだめだからね!」
「うん」
「じゃ、急ごっか」
完全に笑顔になった。
とってもかわいい。
だけど、違う。初めて会ったときに感じた笑顔とはまた別の感情を持ってる気がする。
これじゃ…純粋に笑いあえないよ。
学校に着くまでの間、気付かれないよね?こんな気持ち…