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六月十二日 変態

「月経…生理ってやつですか?」


「あぁ、その方が馴染み深いでしょうか?まぁ、男はあまり口にしないんですけどね。少しぐらいは知ってるでしょう?黄体ホルモンであるプロゲステロンと、一般に言う女性ホルモンであるエストロゲンなどで開始や周期が決まります。最初のころは安定しませんが、だいたい28日前後の周期でサイクルすると言われていますね」


「それが?」


「ようはあなたにも月経は訪れると言いたいんですよ。だいいち女性器がありますからね。ただ、言った通り28日周期ですから一ヶ月の間に入るか入らないか、と言ったところでしょうか」


「つまり一回はあると?」


「そうですね、そうかも知れませんしそうでないかもしれません。ただ、絶対にあるとは限りませんから。あっても二回、と言いたいだけです。実際一年目の六月に生理が来たという話はあまり聞きませんからね」


「よかった…」


「安心はしないでください。それはあくまであなたが男としていられた場合です」


「え?」


「だからですね…もし、六月中に生理が来てしまえば危険サインってことなんですよ」










「情けない本当に情けない…ずびっ」


まさかこんなにも風邪が辛いなんてね。プールではしゃいだ所為だろうな…昨日の時点で休んでいれば拗らすこともなかっただろうに…風邪なんてすぐ治るとか思ってた俺がバカだった。


今は体力が男の時ほどないってことに気が付けばよかったんだ。無理なんて出来っこなかったんだよ。


「てぃ、てぃっしゅ…」


鼻水が止まらない。夏場なのに寒気もする。でも暑いのか寒いのかよくわかんない。汗も止まらない。ベタベタする。シャツ着替えようかな。喉乾いた。でも誰もいない。


平日なんかに家に誰か残るわけなんてないんだよ。だから俺一人。つまり、喉が乾いたても自分で水なりなんなり用意しなきゃいけない。


あぁ、誰か看病してくれる人が一人でもいたらよかったのに…


「ずびっ!ずびびっ!」


もう鼻も痛くなってきた。何回噛んだかもわかんないや。


…あれ?ティッシュもうないじゃん!くそ…卸してこなくちゃ…確かリビングに買ったばかりのヤツがまだあったはず…めんどくさい…






えっと、ティッシュの前に冷蔵庫っと…あっ、麦茶があるじゃん。ひとまずこれで水分補給だな。


「んっ…んっんっ…ぷはぁっ!」


あー生き返った!なんか一気に調子が戻った気がするぞ!やっぱり麦茶は偉大だ。よし、どうせなら元気な今のうちに汗を流してしまおう!


昨日はぐったりでお風呂に入れなかったからなぁ…髪が長くなるとね、やっぱ気になっちゃうんだよ。汚いからとかじゃなくて…なんだろう…どっちかっていうと綺麗にしておきたいって感じかな?


男の時は一日ぐらいお風呂に入らなくたってどうってことなかったけど…不本意にも今は女の子の身体だからね。不潔にしておくのは気が引けるんだよなぁ。


自分自身小綺麗にしている女の子の方が絶対に好きだし、ちょっとだらしない女の子は嫌だしなぁ。家の中だからどうでもいいんじゃないの?って思ったりもしたけど…それはなんか違うんだよ。


「んー、考え方が女の子よりになってるのかな?危ない危ない!でも…汗を流すくらいは一般常識だから関係ないよね!」







そういや、自分の裸見るの慣れてきたなぁ。去年なんてお風呂の時やトイレの時は目を伏せながらだったのに。最近は普通に見てる気がする。


むしろ胸が小さいのを気にしてしまうぐらいだ。大きすぎるのは確かに邪魔なんだろうけど…せっかく女の子の身体なんだから大きいほうがよかったなんて思っちゃう自分がいる。


おかしいな。うん、おかしい。でも、愛はかわいい体型とか言ってたよな?…なら別にいいか。


そういや…髪洗うのに時間かけるようになったなぁ…前はくしゃくしゃ掻いてるだけだったのに。男のときはシャンプーだけのときもあったのに、今はコンディショナーまでしてる。


「ま、女としての最低限だから仕方ないか。うん、マナーマナー」


そんぐらいに思ってないとやってけない。現実逃避にも思えるけど…もういいや。気にしない。


とりあえずさっさと出てしまおう。










あれ?おかしいな、入る前はあれだけ体調がよかったのに…なんだろう、頭がぽわぽわする。シャワーで逆上せたのかな?血行がよくなった所為かな?


とにかく早く布団に戻らないと…あっ、ティッシュも持ってかなくちゃ…あと…ペットボトルのスポーツドリンクとあと…えっと…あれ?


「やばっ…頭回んない。何すりゃいいんだっけ?」


…動き回るのはよくないことぐらいはわかる。だから…うん、とにかく布団だ。


「あっ…あぁ…」


身体が重い。いや、軽いのかな?結構楽に動けるような…足元が浮いてるような…あ…れ…?











「…?」


「…」


「……」


俺、布団で寝てたっけ…シャワー浴びたとこまでは覚えてるんだけどな…どうしたんだっけ。つうか、それよりも…


なに?これ?重いんだけど。


「…あれ?お前がなんで…」


ベッドにあいつがもたれかかってた。だから重かったんだ…って!!


「おい、起きろよ。おい、何勝手に住居侵入してんだよ!!」


ペチペチ


「…」


「重いってんだろ!」


ペチペチペチペチ


「うん?ん…んぁ…」


「うわっ!どこ触ってんだよ!変態!」


バチンッ


「痛っ!!!!」


や、やっと起きたか!あぁ、びっくりした…


「あ…起きたのか?」


「起きたのかじゃないよ!お前!なんで人の家に勝手に入って来てんだよ!それどころか部屋にまで入ってくんなよ!死ぬほどびっくりしたよ!」


「あ?お前の面倒見てくれって言われたから来てやったのに…はぁ?つうか、びっくりしたのはこっちだって、なんせ玄関開けたら廊下に倒れてたんだからな…」


あ、そうか…俺、気絶してたんだ…うわぁ、本当に虚弱体質もいいところだよ。


いやいや、それはわかったけど…えっ?こいつなんて言った?


「とりあえず起きたんならなんか食うか?簡単なもんなら俺にだって…」


「ちょっと待ってくんさい」


「あっ?なんだよ、変な言い方して」


「いや、それだけ俺も戸惑っているといいますか、なんといいますか…えっ?頼まれた?俺の世話?」


「お前にも連絡するっておばさんが言ってた筈だが?」


えっ、嘘…あれ?あ、本当にメール来てるよ。なになに…


《ちょっと今日母さんもお姉ちゃんも帰れないみたいだから、代わりにリーくんに世話頼んどいたからね。ほら、男がいたほうが安心だろう(笑)》


「倒れてた時にメールが来てたのかもしれんな。まぁ、だからその…今日は俺に任せとけ!」


「えっ、えぇ!!」


母さん。むしろ不安ですよ…

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