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六月二日 知り合い

稚拙な文章かもしれませんが一話だけでもよろしくお願いします。

六月が嫌いだ。


梅雨が嫌いだ。湿気の所為で髪がくねくねになる。ともなれば、雨がかかると極端にストレートになって顔や身体に張りついたりする。不快極まりない。


だけど何より嫌いになったのはあいつが構ってくるからだ。前までは無視してたのに、俺がこんなのになったと知った途端に高校を同じとこに決めやがった。ストーカーかっつうの。


たった一ヶ月のためだけに、なぜそこまで人生を壊したがるかな? いや、正確に言えば高校三年間だから三ヶ月、かな? だとしても俺から言わせてもらうと勿体ないとしか思えない。


だって俺が四苦八苦してるのをたった三ヶ月拝めるだけだぞ? それに何の意味があるっていうんだよ。だいたい六月以外は何も面白くないだろうに。変態なのかお前は。


お前の所為で俺の方が面白くなくなったよ、高校生活。残念だよ、新しいスタート切ろうと思ってたのにさ。顔見知りがいたら意味ないじゃん。まぁ、お前は顔見知りどころか親友とか言いたがるんだろうけれど。


顔見知りがお前だけって言えば確かに寂しかったと言えば寂しかったんだけど、全然大丈夫だったし。ま、新しい友達が出来るまではお前を知り合いとして認めてやらなくもないよ。


優しいだろ? 俺。お前みたいな変態野郎を知り合いとして認識してあげるんだぞ? 仏様みたいだろ? いや、女神様か、今の時期は。……って、そんなことどうでもいいか。










「起きろよ」


「……ん、なに? うるさいな、今は鬱の季節なんだから少しぐらい寝かせてくれよ」


「鬱の季節は五月だろ?」


「六月病ってのもあるの」


「それってなんか違わないか?」


「いいじゃん。そんな変わんないし」


ったく、別に一ヶ月違うだけなんだからそんな細かいこと言わなくてもいいだろ? それに俺の鬱はお前がいる所為でオールシーズン絶賛継続中だってのに。


「……お前さ」


「なんだよ」


「友達いねえの?」


確かに1人で机に突っ伏してたけど……だけどそれで友達いないって認識はおかしいだろ? 俺を馬鹿にしてるとしか思えないぞ!


「はん、何を根拠にそんなことを? ちょっと眠かっただけだ」


「じゃあ、なんで昼休みなのに学食にもいかねえんだ?」


「……俺、コンビニでパン買って来てるし。カフェオレだって買ってるし」


「カフェオレ? またそんなお洒落なものを? お前変わったなぁ」


別にカフェオレでいいじゃんか。だってパンって言ったらコーヒーかミルクかで迷うだろ? けどカフェオレなら両方を満たせるんだぞ?


「ま、いいけどさ。んじゃ俺も」


「ってなんで俺の前の席に座るんだよ」


「ここで食べるからだろ? 俺もパンだし。ま、飲み物はイチゴ牛乳だけどな」


「じゃあ俺とたいして変わらないじゃんか。お前も牛乳ものじゃん」


「そうだな、じゃあお揃いか?」


「食べものにお揃いとかねえから。つうかまったく揃ってねえし!」


「ははは、なんだよ、少し元気出てきたんじゃないのか? さっきまであんなに宝くじが外れた!みたいな表情だったくせに」


「うるさい! 黙れ!」


「だから言っただろ? 俺がついて来てよかっただろって。お前、俺がいなかったら毎日一人飯なんじゃねえの?」


「馬鹿にすんな! こんなの今だけだ! それに……そう、俺は静かなお昼が好きなんだよ!」


「寝ていたヤツがなにを言うか。どうせまた授業さぼって屋上にでも行ってそれ食おうとしてたくせに」


くっ……ほら、こいつ痛いとこばっかついてくる。妙に俺のことわかりすぎてる。だから嫌なんだよ。こいつといるのは。本当に意地悪――。


「なんてな。違うんだろ? 今日は一人で飯を食おうと思ってた俺に慈悲の心を持って一緒にお昼を過ごしてくれるんだろ? 優しいよな、お前は。あぁ、ありがたやありがたや。ささ、旦那。そのパンを早く開けて食べましょうぜ」


「……あぁ、そうだよ。感謝しろよ――」


こういう気遣いが俺にはグサッとくるってわかってないのか? いや、わかってるんだろうな……わかっててこういうこと言って俺の不機嫌顔を見て楽しんでいるんだ。きっとそう。


まあ、いいや。とりあえずパンをだそう。ちょっとはお腹減ったし。互いにコンビニのビニール袋から出てくるパン。俺はメロンパン。こいつは焼きそばパン。


「いただきます」


「いただきます! っと」


メロンパンっておいしいと思わない? 最近はメロンの果汁が入っててイイ香りするし。でも、ちょっと甘すぎるだよな、このメロンパン。それでもなぜか食べたくなるんだけど。本当不思議だ、梅雨でベタつく季節で口の周りがさらにベタつくっていうのにさ。


……やつの手が止まってやがる。しかもなんかこっち見てるし。


「なぁ」


「なんだよ」


「お前のメロンパン、ちょっとくれねえ?」


「……いいよ、本当にちょっとだけな」


そういってやった瞬間、こいつは俺の差しだしたメロンパンに思いっきりかじりついた。実に三分の一が取られた!


だが、ただではやられるものか! 逆に俺は隙だらけのやつの焼きそばパンにかじりつき返してやった。――でも口が小さくて取られたほどの量はとり返せなかった。


「はは、残念でした!」


「くそ……最悪」


「甘くておいしかったぞ、メロンパン。で、焼きそばパンはどうだった?」


「ふん……ソースがちょっとしょっぱいかな。まあおいしいけど」


「そっか。じゃ、残りをいただきますかね」


そういって俺のかじりついたところから再び食べ始めてた。悔しいけど、焼きそばパンなんてそんなにいらないからメロンパンの残りを食べることにしよう。……あいつがかじりついたとこから食べなきゃいけないのが癪だけど、仕方ない。


……うん、甘い。さっき食べたときより甘くなってる気がする。多分気のせいだろうけど。


とぼやぼやしてた所為か、気がつけばやつの手の中はからっぽだ。指先を舐めながらこっちを見てる。


「ごちそうさまでした」


「もふっ? はやひよ!」


「お前が遅いんだよ、ちび!」


ちびって……元はもう少し大きいし! そんなこと言われる筋合いないから!


「ほら、さっさと食わないと授業始まるぞ」


「ふぁ、ほんほら!」


「ったく、寝てたからそんなことになるんだよ」


「うるふぁい!」


食べ始めたの同じだから寝てたことは関係ないだろう! いちいち癇に触るこというやつだ。


やつの戯れ言を聞きながら急いでメロンパンを咀嚼した。ああ、もう味もなにもわかったもんじゃない。く、苦しい……。


やつはそんな焦る俺を見ながら俺のカフェオレに手を伸ばし始めやがった。ってか、それがないと飲み込めねえし!


ごくごくと喉を鳴らして美味しそうにストローから吸っている。本当美味しそうに。あぁ、俺のカフェオレ。


「ぷはっ。カフェオレも悪くないな! ちょっとコーヒー成分が足りないけど……っておいおい、冗談だろ? なに泣いてんだよ」


「なっ! 泣いてなんかなっ! ……げふげふっ!」


「ああ、女がそんなはしたなくえづくなよ」


「メ、メロンパンが……」


「やれやれ、ほら、イチゴ牛乳やるから」


何がやれやれだ。お前が俺のカフェオレを奪ったからだろ! それに女とか言うな、なんか余計恥ずいから!


……ったく、言われなくてもイチゴ牛乳で我慢するよ!


「ごくごくっ」


「へえー両手で持って飲むんだ」


「……ぷはっ! 仕方ないだろ! 片手で飲みたくても手が……」


「小さいから無理だもんなぁ」


「わかってるな言うな馬鹿!」


「はいはい」


……悔しい。本当に悔しい。でもやつのイチゴ牛乳は全部飲み干してやれなかった。正直お腹いっぱいだし。これ以上食べたらぽっこりお腹が出ちゃう。さすがに恥ずかしいし。


「なんかさ……今のお前を例えると――」


「な、なんだよ」


「低燃費って感じだよな」


「うるさい!」


そう怒鳴ってやったらやつは降参したと言わんばかりに手をひらひらと降って自分の席に戻っていった。イチゴ牛乳を飲みながら。


「あっ、そうそう」


首だけ振り向く。


「口の周り、ついてるぞ、メロンパン」


「余計なお世話だ」


べーしてやった。で、すぐに口の周りをハンカチで拭いた。よくよく考えるとあっかんべーなんてちょっとあれだよな……うわ、恥ずかしくなってきた。あいつ何も思ってないよな? 願わくば忘れてくれ!




その後は一時の平穏。周りががやがやしてる中で一人席にぼーっと座る俺。すぐにチャイムが鳴って先生が来た。数学の先生だ。つまり数学の授業だ。……苦手だ。よし寝よう。


……まったく、あいつの所為で昼休みに寝られなかったじゃんか。


ホント最悪だよ。

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