王都の影と新たな始まり
エデリア王国の北側に位置する街、パリオン。
その街に一際大きな屋敷がある。
パリオンを含む王国北側の広大な領地を治める領主の屋敷だ。
屋敷の執務室にて騎士からの報告を聞いた領主は大きなため息をついたのち目の前の騎士へ問う。
「報告は以上か?」
騎士はその質問に対し、
「以上であります」
と答えると、領主は眉をひそめて、
「にわかには信じられんな。本来は貴族にしか扱えぬ魔法を村の少年が扱い、魔獣を灰に変え、村を跡形もなく消し去るなど。確かに稀に魔法の力を発現する平民はおるが、ここまで強力な魔法を使った記録などない」
その言葉に対し、騎士は領主へ疑問を投げかける。
「しかし、領主様。平民が魔法を発現することなんてあるんでしょうか?」
その問いに対し領主は答えた。
「確かに魔法は血統に依存する。しかし、数年に1人くらいは魔法を発現する平民が現れることがある。まさしく神の祝福だな」
領主の言葉に騎士は納得したような表情を浮かべた。
「しかし、あの少年の扱いはどうするのでしょうか?」
騎士の言葉に領主は少し考え込んだ。
「少年は貴族の血統ではない。魔法の才があったとしても、平民の身分だ。私が保護をすれば他の貴族たちの反発を招く」
領主の言葉に騎士は頷いた。
「確かに、貴族たちの反発は必至です。貴族は魔法の才能を独占している。平民の魔法使いなど、貴族たちのプライドが許さないでしょう」
「しかし、少年の才能を無駄にするわけにはいかん。王都の王立学園へ入学させる前提で、孤児院へ預けることにしよう。学園は王族直轄だ。貴族たちの反発も少ないはずだ」
領主の判断に騎士は同意した。
「王都の孤児院であれば、旧知の者がいる。連絡を取れば引き取ってくれるはずだ」
そういうと、領主は資料を作成し、騎士へ持たせた。
「わかりました。では、少年を王都の孤児院へ連れていきます」
こうして、レヴァンは王都の孤児院へ預けられることになった。
王都の孤児院は、王都の外れにあった。
石造りの大きな建物で、孤児たちが暮らしていた。
レヴァンは孤児院の院長に引き渡された。
院長は50代の女性で、優しい顔をしていた。
「レヴァンくんね。ここがあなたの新しい家よ」
院長の言葉にレヴァンは頷いた。
孤児院の生活は厳しかった。
朝は掃除、昼は勉強、夕方は祈り。
孤児たちは皆、神を信仰していた。
レヴァンも一緒に祈った。
「神よ、どうか我らをお守りください」
しかし、レヴァンの心は空っぽだった。
村を失い、家族を失い、神の慈悲など信じられなかった。
孤児院の子供たちも、レヴァンを避けた。
レヴァンの炎の力は、噂で広がっていた。
「魔獣を倒したって本当?」
「怖いよ・・・」
レヴァンは孤児院で孤独だった。
しかし、院長はレヴァンを優しく見守っていた。
「レヴァンくん、神様はあなたを愛しておられるわ。きっと、素晴らしい未来が待っているよ」
院長の言葉に、レヴァンは少し心が温かくなった。
それでもレヴァンは神を信じるには至れていないが。
レヴァンは母を守れなかった後悔から、孤児院へ移った今でも、魔法の練習をしていた。
しかし、簡単な小さな魔法であれば問題なく使うことができるが、大きな炎を出そうとすると父や母の死を思い出し、暴走仕掛けてしまう。
「もう、あんな思いはしたくない。大事なものは自分で守らないと――」
孤児院での生活が3年たったある日、レヴァンに王立学園への入学通知が届いた。
「レヴァンくん、おめでとう。王立学園だわ」
院長の言葉に、レヴァンは驚いた。
「王立学園・・・?」
王立学園は、王国で最も権威のある学園だ。
貴族の子供たちが通う場所。
「あなたの魔法の才能が認められたのよ」
院長の言葉に、レヴァンは頷いた。
こうして、レヴァンは王立学園へ入学することになった。
王立学園は、王都の中心にあった。
大きな石造りの建物で、魔法の才能を持つ者たちが学んでいた。
レヴァンは学園の門をくぐった。
新しい生活が始まる。
しかし、レヴァンは知らなかった。
この学園で、運命の出会いが待っていることを。
そして、自分が禁断の炎の担い手であることを。




