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叛火の遺産〈リベルファイア〉  作者: 夏影 識
第1章
11/11

穏やかな焔と王都の影

 エデリア王国の王宮のある一室。


 会議室として使われているその部屋には、現在、国王をはじめとする王国の重鎮たちが集っていた。


 部屋の中は、重苦しい空気で満たされており、各々の表情は固い。


 各自、配られた資料に目を落とし、その内容に動揺した様子を見せる。


 国王は、資料から目を上げて口を開く。


「まさか、王都にまで魔獣が出現するとはな。南方で魔獣の出現が多発していた時から、王都まで広がるのは時間の問題だと思ってはいたが・・・」


 国王の言葉に、その他の重鎮も資料を読むのを止め、深いため息を吐く。


「しかも、王都の中央。学園周辺に魔獣が出現するとは。陛下、やはりアークはもう限界なのでは?」


 元老の一人が、国王に尋ねる。


「そうだな。しかし、魔獣もよくわからん動きをするものだ。王都の中でも人口が集中している南側居住区ではなく、学園周辺に出現するとはな」


 国王の疑問に、一人の元老が答える。


「通常の魔獣であれば、人が多くいる居住区を狙うでしょう。しかし、今回も出現したのは異様なオーラを放つ魔獣です。過去の事例から見ても、貴族や王族を狙っているように感じます」


「まさかっ!魔族の侵攻準備なのでは!?今のうちに、我が国の魔法戦力を削ろうと考えているのでは?」


 別の元老が声を上げる。


 それを聞いた他の者たちは、口々に否定しようとする。


 しかし、否定しきれないとも頭の中では思っており、最後まで発する前に言葉を詰まらせる。


「今が、決めるべき時なのかもしれんな」


 国王の言葉に、これまで騒いでいた元老たちは、一斉に黙り、国王の方へと視線を向ける。


 次の国王の言葉を待っているのだ。


「生存圏を広げるほかあるまい。アークの庇護は既に弱まり、魔獣がアークの中に入ってきている現状。人口増加に伴い、水資源が明らかに足りなくなっている。これは、神の庇護から出て、自立しろと神が申しているのかもしれんな」


 国王の言葉に一人の元老が口を開く。


「では、()()()()を実行に移すのですね?」


 国王は頷く。


「ああ。我々は、アークの外へと生存圏を広げることとする。さしあたっては、計画案にある通り、アーク周辺の状況を調査する騎士団を結成する」


 その後、指示を受けた役人が部屋を出ていき、いよいよ進められることとなる――



 ――復学試験から、一夜明けた今日。


 レヴァンは、数日ぶりに授業を受けた。


 その休み時間。


 生徒たちは、各々グループで集まって話をしており、初日と同様、レヴァンへと視線が向けられることもしばしば。


 しかし、その視線は初日とは違っていた。


 レヴァンの復学試験での魔法は、すでに学園中に噂として広まっており、下級貴族の子女たちをはじめとする生徒たちからの視線は、初日の冷ややかなものから、どこかこれまでとは違う目を向けるようになっていた。


「闘技場のあの炎、先生たちにも消せなかったみたいだぞ。今度、宮廷魔法師が調査に来るみたいだ」


「貴族の血統なくして、あそこまでの魔法を操るのか・・・」


 そんな声が、廊下や食堂にまで聞こえるようになった。


 そしてなによりも、セレナの影響が強かったであろう。


 セレナは、休み時間が来るたびに、ミーシャを連れてレヴァンへ会いに来ていた。


 最初にセレナがレヴァンの教室へ入ってきたときは、皆驚いた表情を浮かべて、一種のパニック状態にもなっていたほどだった。


 貴族とはいえ、レヴァンが所属するクラスは、下級から中級までの貴族の子供たちがほとんどだ。

王族であるセレナは、彼らでも雲の上の存在だったのであろう。


 そんなこんなで、復学から数日。


 今までは、レヴァンを遠くから噂をしていたクラスメイト達も、自然とレヴァンへ話しかけるようになる。


 レヴァンの魔法制御や、魔法のイメージなどを聞いてくる生徒が多いように感じる。


 時折、恥ずかしそうに話しかけてくる女生徒もいたが。


 レヴァンは、初めて、学園で味方ができたと感じた。


 復学後、セレナは自然にレヴァンの側にいるようになった。


 授業の合間、図書室、裏庭。


 二人は、お互いの魔法について語り合ったりした。


「レヴァンくん、()()()はどういうイメージで出したんですか?普通の炎とは違って、キラキラと光るものが見えた気がしたんです」


 セレナは、復学試験の時の魔法についてレヴァンに聞いた。


 質問されたレヴァンは、ピンときていないようで、答えに迷っている。


「俺にも分からないんだ。詠唱だって気づいたら()()()()が浮かんでいた」


 レヴァンのあの魔法については本人のみならず、魔法についてはレヴァンよりも詳しいセレナでも分からないことだらけだった。


「具体的なイメージもなしに、あんな魔法が使えちゃうなんて。いいなあ、私もあんな綺麗な魔法、使ってみたいです」


 そう言い、セレナは笑う。


 そんなセレナの横顔を見てレヴァンはふと、()()()()()()()を感じた。

それが何なのか、今のレヴァンは知る由もない。


 学園生活は、穏やかに、しかし確実に変わっていった。


 だが、そんな日々も、永遠ではない。


 アークの庇護は、さらに弱まっていた。


 魔獣の気配が、王都に近づいている。


 二人は、まだ知らない。


 これから訪れる、大きな試練を。


 だが、今は――。


 二人は、お互いの魔法を高め合い、静かな時間を過ごしていた。

 これまでは、物語を進めるための重要な部分を描いてきましたが、今回は、「少し休め」の閑話的にしてみました。


 これからもどんどん投稿していこうと思うので、よろしくお願いします。

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