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侯爵様の悪役令嬢(自称)  作者: 杉野みそら
第十三章

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因縁の踊り子

ルシアの完璧な踊りを見せつけられたヴァルターは、目を奪われながらも過去を思い出す。

クロイツ家に代々伝わる戒めを。


※ヴァルター視点です。

※改行多いです。

 幼い頃から、何度も聞かされてきた話がある。

 それは誇りではなく、戒めとして語られる一族の過去だ。


【クロイツの男たるもの、踊り子に心を奪われるな】


 物心ついた頃から、祖父も父も、そう言った。最初は意味がわからなかった。だが書庫で古い記録を読んだ時、ようやく知ったのだ。


 かつて我が一族は、王に最も近い名門貴族だった。


 軍功、財、発言力、すべてを持っていた。

 王の右腕ーーそう呼ばれていた時代さえある。


 だがたった一人の女がそれを崩した。


 それが赤い髪の踊り子だった。


 突如現れたその女の踊りに、むせ返るような赤い髪に、王はすっかり心を奪われてしまった。


 王は彼女を寵愛し、夜会の中心に据え、やがて(まつりごと)にも口を出させた。


 踊り子の生家はカルミナート家だという。

 王の心を奪うその日まで、カルミナートは俺と同じ伯爵家でも立場はうんと違っていた。


 我がクロイツ家は数ある伯爵家の中でも特に秀でていた!


 ーーそのはずだったのに。


 小さな新興貴族にすぎなかったその家は、踊り子の才能の後ろ盾によって急速に力を得た。


 代わりに、切り捨てられたのがクロイツ家だった。役職を奪われ、領地を削られ、発言権を失い。


「踊りなどに国が動かされてたまるか」


 父は酒に酔うたび吐き捨てた。


「色香と芸でのし上がった成り上がりどもめ」


 祖父は拳を震わせた。


 そして最後に、必ず同じ言葉を言う。


「踊り子は、我らの(かたき)だ」


 だから俺は軽蔑してきたのだ。


 芸事など。

 踊りなど。

 人の心を誑かすだけの、くだらない見世物だと。


 ……そう、思っていたのに。


 広間の中央で赤い髪が飜る。


 花が咲くようにドレスが舞い、空気が震え、視線が吸い寄せられる。


 誰も瞬きをしない。


 誰も息をしない。


 ただ、目を奪われる。


 ーーそしてそれは俺も同じだった。


 ……馬鹿な。


 足が動かない。

 目が逸らせない。

 胸の奥が、焼けるように熱い。


 これが……これが、あの時代に王を狂わせた力なのか。


 我が一族からすべてを奪ったものなのか。


 ……冗談じゃない。


 屈するか。

 認めるものか。

 そう思うのに。


 心が、勝手に揺れる。


 悔しいほど、美しい。


 握った拳が震える。


 ああ、くそ。


 なんなんだ、これは。


 どうしてーー


 どうして俺は、あいつから目が離せない……

それは完全にクロイツ家の逆恨みでh()


しばらく更新できなくてすみませんでした。寒い日が続くのでどちら様もお身体に気をつけてお過ごしください。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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