燃える命の踊り
ルシアが本気の踊りを見せる時!
(大丈夫……落ち着くのよルシア)
手のひらがじんわり汗ばむ。
けれど、不思議と足は震えなかった。音楽も人々の喧騒も。瞬きのうちに遠ざかっていく。
昔からそうだった。
勉強も作法も失敗ばかり。
貴族令嬢らしく笑うのも苦手。
でも――
踊る時だけは。
(体が、勝手に動くの)
私は、そっとドレスの裾をつまんだ。
一礼。
そして――
す、と金色の目が開き、滑るように床を踏み出す。
その瞬間。
空気が、変わった。
ひらり、と夜色のドレスが弧を描く。
足音がほとんどしない。跳ねるのではなく、流れる。
まるで水面を渡る月光のように。
「……っ」
誰かが息を呑んだ。
私は気にせずくるりと回る。赤い髪がふわりと広がる。それは灯りを受けて、炎のように揺れる。
血の色ではない。
燃える命の色。
生きている色。
ステップは軽やかで、それでいて芯が強い。つま先が床を叩くたび、確かなリズムが生まれる。
音楽も私の踊りに合わせているかのように鳴り響く。
観客の呼吸も、いつの間にか私の動きと同調していた。
跳ねて。
翻って。
沈む。
また舞い上がる。
喜びも、
寂しさも、
祈りも、
全部混ぜて、ただ身体で語る。
言葉よりもずっと正直に。
――どうか、見て。
――私は、ここにいる。
胸の奥にあった感情が、踊りに溶けていく。
ふと侯爵様の方を見ると、ポカンと口を開けているのが見えた。
ーー侯爵様にも伝わったかしら?
私の踊り、私の情熱、私のーー
精一杯の気持ち……!
ルシアお嬢様の見せ場。
一度描きたかったシーンパート何個目かです。汗
踊りのシーンって好きなんですよね。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




