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侯爵様の悪役令嬢(自称)  作者: 杉野みそら
第十二章

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赤い髪の秘密

突然謎の男にいちゃもんをつけられたルシアは、クロイツの名前を聞いて幼い頃を思い出していた。


※改行多くて読みにくいかもしれません!すみません!

 まだ私が小さかった頃。


 カルミナート家の裏庭には、大きな桜の木があって、春になると祖母はいつもその下に椅子を出して、お茶を飲んでいた。


「おばあちゃん見て!また新しいステップできたの!」


 そう言って私は祖母の前でくるん、と回ってみせる。スカートがふわっと広がる。


 その頃の私は、とにかく踊るのが好きだった。

 理由なんてなかった。ただ体が勝手に動くだけ。


「ほっほっほ、ルシアは本当に踊りが好きだねぇ」


 白髪の祖母が目を細める。


「だって楽しいもの!なんだか胸がぽかぽかするの!」


「……そうかい。あの子と同じだね」


「あの子?」


 祖母は少しだけ懐かしそうに空を見上げた。


 春の光が、私の赤い髪を透かしてきらきら光る。


 祖母の指が、そっと私の髪に触れた。


「その色さ」


「その色?この赤い色の事?」


「うん。カルミナートのごく稀な“先祖返り”だよ」


「せんぞがえり?」


 難しい言葉に首をかしげると、祖母は笑った。


「昔々ね。カルミナート家に、真っ赤な髪の踊り子がいたんだ」


「踊り子!?」


 私は目を輝かせる。


「王家の夜会で踊りを披露してね。剣でも魔法でもなく、“踊り”ひとつで、王様も貴族も、みーんな夢中にさせちまった」


「すごい!!」


「それはもうね、“戦よりも強い”って言われたくらいさ」


「踊りが!?」


「そうだよ。あの子が踊ると、争ってた貴族同士が手を取り合った。険悪だった会議が丸く収まった。王様は『この娘がいる限り国は安泰だ』ってね」


 祖母はどこか誇らしそうだった。


 でも。


 ほんの少しだけ、寂しそうでもあった。


「……でもねぇ」


「?」


「そのせいで、恨まれもした」


「え?」


「当時、王家の信頼を一身に受けていたのがクロイツ家だった。代々、政治と軍で王を支えてきた名門さ」


 祖母は穏やかに話し続けた。


「けれど王様は、だんだんこう言うようになった。“彼女の意見を聞こう”“彼女が望むならそうしよう”って」


「踊り子なのに?」


「踊り子だからさ」


 祖母は笑った。


「武器も権力も持たない。ただ人の心だけを動かす。だから王様は信用したんだろうね」


「心……」


「でもクロイツ家から見れば、面白くないだろう?何代もかけて築いた立場を、ぽっと出の娘に持っていかれたんだから」


「……いじわるされたの?」


「たくさんねぇ」


 祖母は遠い目をした。


「悪口も、陰口も、陰謀も。けれどあの子は最後まで言ったそうだよ」


「なんて?」


「『私はただ踊ってるだけです。みんなが笑ってくれたらそれでいい』って」


 その言葉が、なぜか胸にすとんと落ちた。


「……かっこいい」


「だろう?」


 祖母は私の頭をぽんぽんと撫でた。


「だからねルシア。踊りはね、人を奪うものじゃない。人を幸せにするものだ」


「うん!」


「もしその髪が遺ったものなら、きっとあの子が“また踊りたい”って思ったんだろうね」


 春風が吹いた。


 花びらが舞って、私はくるんと回る。


「じゃあ私、いっぱい踊る!」


「おやおや」


「みんなが笑ってくれるまで踊るの!」


 祖母は目を細めて笑った。


「……ああ。きっと似合うよ。お前は、あの子の生まれ変わりみたいだからね」

赤い髪っていいよね。作者は男女問わず赤い髪が好きです!(いらん情報)


カルミナート家やるなぁ!


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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