いつもとのギャップ
主役級のドレスを着て自分でも驚いたルシア。
その姿を見たエルドは……
「ルシア……君はなんて……」
その瞬間、言葉を失った。
扉の向こうから現れたのは、いつものルシアではなかった。
いや間違いなくルシアなんだが。
いつもは忙しなく動き回り、勝手に行動し、思ったことをすぐ口にして、少し目を離すと何かをやらかしているーーあのルシアが。
今は、静かにそこに立っていた。
絹の光を含んだドレスが、彼女の動きに合わせてわずかに揺れる。布が擦れる音さえ、耳に残る。いつもと違う優雅な動き。完璧な淑女がそこにはいた。
初めてだ。
こうして「まともな」ドレスを着た彼女を見るのは。
ドレスの夜色が、赤い髪をより鮮やかに際立たせ、その隙間から覗く金色の瞳が、光を受けて静かに揺れている。
(……参ったな)
これまでのルシアとのギャップに、私は思わず髪をかきあげる。胸の奥が、ひどく落ち着かない。
(ルシアは気づいていないのか……)
この姿が、どれほど危険か。
この姿が、どれほど周囲の視線を集めるのか。
ーー誰にも見せたくない。
私は素直にそう思った。
「……ルシア」
名を呼ぶだけで、胸が熱くなる。
「侯爵様!見て!私こんなドレス初めて着ましたよ」
そう言ってルシアは私の前でふわりと回ってみせた。ひらひらとドレスの裾が揺れて煌めく。
「ああ、見違えたよ。美しいな……ルシア」
「う、美しいですってぇ!?そんなこと今まで言われたことがないわ!//」
……だが、中身はルシアのままだな。私はそのことになぜかひどく安堵した。
私の前では、私しか知らないルシアだ。
「本当だよ、美しいルシア。さあ私の手を取って」
「えっ、はっはい!」
ルシアの金色の瞳が、私を不安そうに覗きこむ。
「大丈夫だよ。私がいるから」
侯爵様、ルシアお嬢様に翻弄されてますね。
ルシア様もわざとじゃないのがまたいいよね……
ドレスの描写と男の人が振り回される系の話大好きなんです。もう少しやらせてください。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




