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侯爵様の悪役令嬢(自称)  作者: 杉野みそら
第十章

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その可愛い顔をやめてくれ

「侯爵様、アキラとどんな遊びをしていたんですか?」


 私の手に頬を擦り寄せて……

 

 そう言って目を輝かせるルシア。ああ……ルシア。君はどうしてこのエルドの心をかき乱すのだ。


 ……無意識にやっていることだろうが。それが余計に憎たらしい。でも余計に愛おしい!これが悪役令嬢か……参ったな。


 心の中でルシアに本日何度目かの白旗をあげながら、私は首を振った。


 川のせせらぎが、私の心を徐々に落ち着かせて行った。


「……そうだな。そんな特別な遊びじゃないよ。かくれんぼをよくやった」


「え?」


「かくれんぼ。あれだけは普段口うるさい父母も文句を言わなかった。アキラもいたことだしな」


「そうだったんですね……」


 ルシアがまたキラキラと瞳を輝かせる。ああ、その可愛い顔をやめてくれよ。こちらの心臓がもたないんだ……


 軽く咳払いをし、息を整える。


「屋敷の裏庭や、さっき君が隠れていたあの場所。人目につかない所ばかり選んでね」


「追いかける方ですか?それとも隠れる方?」


「隠れる方だ」


 即答すると、ルシアが小さく笑った。


「ふふふ!侯爵様、意外と似合います」


「そう言われると複雑だな」


 私は苦笑しつつ、指先でベンチの縁をなぞる。


「見つからないように、息を殺して。誰にも見つからずにいると……妙に安心した」


 それは遊びというより、逃げ場所だったのかもしれない。


「当時の私は、周囲から“次期侯爵”として扱われていた。失敗も、弱音も、許されなかった」


 だからこそーー


「何も求められない場所に、少しだけいられるのが、好きだったんだ」


ちょっと今回はしっとりとしたお話でしたね。

個人的にエルドの心の声はお気に入りです。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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