その可愛い顔をやめてくれ
「侯爵様、アキラとどんな遊びをしていたんですか?」
私の手に頬を擦り寄せて……
そう言って目を輝かせるルシア。ああ……ルシア。君はどうしてこのエルドの心をかき乱すのだ。
……無意識にやっていることだろうが。それが余計に憎たらしい。でも余計に愛おしい!これが悪役令嬢か……参ったな。
心の中でルシアに本日何度目かの白旗をあげながら、私は首を振った。
川のせせらぎが、私の心を徐々に落ち着かせて行った。
「……そうだな。そんな特別な遊びじゃないよ。かくれんぼをよくやった」
「え?」
「かくれんぼ。あれだけは普段口うるさい父母も文句を言わなかった。アキラもいたことだしな」
「そうだったんですね……」
ルシアがまたキラキラと瞳を輝かせる。ああ、その可愛い顔をやめてくれよ。こちらの心臓がもたないんだ……
軽く咳払いをし、息を整える。
「屋敷の裏庭や、さっき君が隠れていたあの場所。人目につかない所ばかり選んでね」
「追いかける方ですか?それとも隠れる方?」
「隠れる方だ」
即答すると、ルシアが小さく笑った。
「ふふふ!侯爵様、意外と似合います」
「そう言われると複雑だな」
私は苦笑しつつ、指先でベンチの縁をなぞる。
「見つからないように、息を殺して。誰にも見つからずにいると……妙に安心した」
それは遊びというより、逃げ場所だったのかもしれない。
「当時の私は、周囲から“次期侯爵”として扱われていた。失敗も、弱音も、許されなかった」
だからこそーー
「何も求められない場所に、少しだけいられるのが、好きだったんだ」
ちょっと今回はしっとりとしたお話でしたね。
個人的にエルドの心の声はお気に入りです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




