侯爵様はずるい
ありがちなハプニングで、いつのまにかルシアはエルドの上に跨っていた。
胸の上にまたがったまま、ルシアは固まっていた。
もう今は隠れることも忘れ、降りる勇気も失ったまま、ただ両手をどうしていいかわからず宙に浮かせている。
(ずいぶん大人しくなったな。前は自分からノリノリで乗ってきたのに……おもしれー女)
「……さっきまでの勢いはどうした?私を挑発した時の勢いは」
「あ、あぅ……//」
(侯爵様、ずるいわ。私はドキドキして気が気じゃないのに。もしかしてこの状況を楽しんでるの?)
「以前は積極的に私の胸に乗ってきたのに」
そう言って、私はゆっくりと上体を起こした。
「ふぁっ//」
自然と距離が縮まり、視界いっぱいにルシアの顔が迫った。美しい金色の瞳……
「以前はマッサージと称して乗ってきたな。あの時の私は心臓が飛び出しそうだったんだぞ」
「ち、近いです、侯爵様……!」
どうやらルシアはそれどころではないらしい。
自分から距離を詰めてきた時のルシアはどこへやら。
「どうやら今度はルシアの方が心臓が飛び出しそうなのかな」
じゃあこちらも、お返しとするか?
「えっ?」
私はルシアの小さな顎を指でこちらに向ける。
ルシアは視線を逸らそうとするが、顎に添えられた指がそれを許さない。
逃げ場を失ったルシアの頬が、みるみるうちに赤く染まっていく。
何度となくしていることなのにこの反応。可愛い……
「そんな顔をされると……」
思わず低く、困ったような声が出た。
「反則だよ、ルシア」
「は、反則って何がですか!?」
動揺する声。潤んだ瞳。
それを間近で見て、私の胸が思わず跳ねる。ゴクリと無意識に喉が鳴る。
ーー可愛い。
(……あ……今侯爵様、私の名前)
気づいた時には、もう遅い。
そっと距離を詰め、触れるか触れないかの一瞬のためらいのあとーー
ようやくルシア様にも恋心がわかったのでしょうか?
それにしても今回のエルド様は積極的ですなぁ!
最後まで読んで頂きありがとうございました。




