やめんさい!!
エルドの部屋から引きずり出されたルシアはフウカに説教を受けていた。
「お嬢様!!エルド様に言われてたんでしょ!今日は部屋に来てはいけないって」
フウカは腰に手を当て、ぴしりとルシアに言った。
その声音には、叱責と同時に安堵が混じっている。
「ごめんなさい、私やっちゃいけないって言われるともう気になって気になって仕方なくなるの!」
ルシアはえへへ、と笑いながら肩をすくめる。
まるで反省していないその態度に、フウカのこめかみがひくりとする。
「お相手が婚約者で、エルド様だったから許してもらえたんですよ?これがエルド様以外でごらんなさい」
フウカは一拍置き、声を低くする。
「……ど、どうなるの??」
ルシアは思わず身を乗り出した。
好奇心と不安が半々に混じった、実にルシアらしい反応。
「……破談。あるいは命令に背いた罪を問われて断罪コースです。普通の貴族なら、部屋に潜んでた時点で追い払われて牢屋にぶち込まれてますからね?」
その言葉に、ルシアの背筋がぞわぞわと震える。
「なにそれぇ!?私の望んだ世界じゃない!?何故侯爵様はそうしてくれなかったのよ!」
思わず声を張り上げるルシアに、フウカは深くため息をついた。
「エルド様だからですよ!!」
フウカが言い切る!
「エルド様はご自分が惚れた女性、つまりルシア様が傷つくようなことはしたくないしルシア様にはとことん甘いのです」
つらつらと事実を並べた。
「誰が誰に惚れてるですって??」
「"エルド様がルシア様に"です。もう何度もそう言ったはずですよ?お嬢様も何度も言われてるでしょ?」
ルシアは視線を泳がせ、指先同士をもじもじと擦り合わせる。
「う、うう……//それはそうなんですけど。だって……私は悪役令嬢になりたくて……婚約破棄をされたくてゴニョゴニョ」
声はどんどん小さくなり、最後はほとんど聞き取れない。
「つべこべ言わない!」
フウカの声が一段階跳ね上がった。
「もうその悪役令嬢なんたらに夢を見るのはやめんさい!!」
怒りのあまりにフウカは自分の故郷の方言が出てしまった!
「やば、フウカがマジギレした!!」
フウカが本気で怒った時は、決まってこうなる。
そして、その直後に待っているのはーー長い説教だ。
「じゃ、じゃあ私はこれで!」
ルシアはそう叫ぶと、くるりと踵を返して走り出した。
(危なかったぁ〜最近のフウカ怖いのよね……)
背後から聞こえるフウカの声を全力で無視しながら、ルシアは廊下の角を曲がった。
フウカの方言、この世界観で一度やってみたかったんですよね!
ルシア様まだ悪役令嬢の夢諦めてなかった笑
もう無理だよね。フウカじゃないけど、諦めんさい!
最後まで読んで頂きありがとうございました。




