ただそばにいてくれるのなら
あの時の衝撃を、幼い頃の私はどう思ったのだろう。汚い大人の世界しか見てこなかった私に、その少女の純粋で突飛な言動はさぞかし眩しく映っただろう。
「侯爵様あそこを見てみて!!大きなカエルよ!」
(ああ……)
目の前で川を覗き込んでいる今のルシアと、あの時の少女の姿が、ぴたりと重なる。
「侯爵様??」
ルシアが不思議そうにこちらを見上げる。その姿に私はふっと微笑む。
「いや……昔のことを思い出していたんだ」
「昔?」
「……溺れかけた令嬢がいてね」
「えっ、それは大変!助かったの?」
「ああ。助かったよ。……随分と変わった子だった。溺れかけたというのに終始キョトンとしていて」
ーー髪も瞳もキラキラ輝かせて……
まるで今の君のようだった。
「わぁ無事でよかった!そんなことがあったんですね!侯爵様って昔からお優しいのね」
「……ああ」
何も知らない顔で相槌を打つルシアを見て、胸の奥がじんわりと温かくなる。
(まさか、あの時の少女がーー)
いや、今はまだいい。
気付かなくてもいい。思い出さなくてもいい。
ただこうして、ルシアがそばにいてくれるのなら。
すみませんちょっと短めでした!
思い出さなくていいんかい!さすが侯爵様大人!これが大人の余裕ってやつか!
最後まで読んで頂きありがとうございました。




