喜んでもらいたくて
ヴァルターと一緒に買い物をしたと聞いたエルドは、激情のままにルシアを強く抱き寄せた。
その腕には、いつものような穏やかさはなかった。
しばらくして、侯爵様が低い声を落とした。
「何か勘違いをしているようだが……私だって怒る時はあるんだ」
「ッ!!」
怒る?侯爵様が?
今まで私が何をしても、怒らなかった侯爵様が?
「特にルシア、君のことに関しては」
「……っ……」
いつもは心地よいはずの侯爵様の低い声が、何故か今夜は怖くて涙が出そう。
侯爵様、何を考えているの?
どうして怒っているの?
「ヴァルターと、私の好みの他に何を話した?」
「な、何……を……?」
あっ、
その時初めて侯爵様とまともに目が合った。
侯爵様……どうしてそんな顔をするの?
そんな、傷ついた狼みたいな顔を。
「ルシア……」
「……ッ!」
私の名を呼んだあと、侯爵様はいきなり深いキスをしてきた。呼吸さえままならない。奪うような。
大人のキス。
「……やっ、やだ!!」
必死に侯爵様の腕の中で暴れたけど、びくともしない。
「ふぇっ、侯爵さま……」
いつのまにか私は泣いていた。
侯爵様が何故怒っているのかわからなくて。
侯爵様が私の話を聞いてくれないのがただ悲しくて。
「……ッ!」
泣き出した私に驚いたのか、侯爵様が腕を緩めた。
「グスン、侯爵様……どうして……どうして私の話を聞いてくれないの?」
侯爵様……
私はただ侯爵様に。侯爵様に喜んでもらいたくて来たのに。
「ッ!ルシア……!ごめん……!」
「もういいです!侯爵様なんて嫌いです!バカバカ!」
再び私を掴もうとする侯爵様の腕を振り解いて、私は慌てて部屋を出た。
バタンッ!
「ルシア!!」
残されたエルドの部屋には、メッセージカードとマカロンの箱が入った袋が転がっていた……
ルシアちゃん( ; ; )
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