青いマカロン
ヴァルターとルシアはいつのまにかマカロンのショーケースを並んで見ていた。
「いや、なんでもない。それよりお前はこの菓子を初めて食べるのだろう?甘いと思うぞ」
マカロンの味を知らなかった頃は、最初にマカロンを食べた時にその甘さにびっくりしたものだ。だからこそハマってしまったのだが。
「そうなの?なおさら買いたいわ。ねぇヴァルターはどの色がいいと思う?」
「は?俺が選ぶのかよ」
「そうよ、だって私はどの色がどんな味か知らないもの」
「……この桃色のやつはいちごっぽい味がする。緑色のやつはミント系で……」
って、何を律儀に説明しているのだ!俺は……
もうマカロンは買えたしとっとと帰ればいいじゃないか。
「わぁ、やはり色によって味が違うのね!じゃあこの青色のマカロンは?」
「……青い色のやつはーー」
「この青色、まるでヴァルターの瞳の色みたいね」
「はぁ!?」
何を言い出すのかと思えば、青いマカロンと俺の瞳の色が似ているだと??
そんな事に例えられた事は一度もないぞ!
「それでこの緑のマカロンはフウカに似てる!」
ふとフウカの方を見ると、確かに緑のエプロンをしているし、緑色の瞳だ。
だからってマカロンを人に例えるか?
「ブハハッ」
もう耐えられない!俺は思わず吹き出してしまった。
こんなところ誰かに見られたら……という思いもあったが面白いものは面白い。
「お前みたいなお嬢様は見た事がない!」
「どうしたのヴァルター。突然笑ったりして……何がおもしろいの?何か面白い事があったの?」
思えばこんな風に笑ったのは久しぶりかもしれない。それもこんなくだらない事で。
「ヴァルターったらずるいわ!私にも面白い事教えてよ」
ーー何も知らない人から見たら俺たち二人はどう映るだろうか。
まるで恋人同士がデートを楽しんでるように見えるだろうか?
ーーそんな、マカロンのように甘い時間を過ごせたらどんなによかったか。
どんなに足掻いてもルシアはエルド侯爵の婚約者なのだ。
胸の奥の痛みに気付かないふりをして。今はルシアに偶然会えたこのひと時を楽しもう。
こんなに楽しい時間は久しぶりなのだから。
今だけでいい。
この時間が終わるまででいい。
どうか、もう少しだけーー
* * *
ヴァルターは完全に片思い……泣
最後まで読んで頂きありがとうございました。




