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侯爵様の悪役令嬢(自称)  作者: 杉野みそら
第十六章 初めてのすれ違い

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青いマカロン

ヴァルターとルシアはいつのまにかマカロンのショーケースを並んで見ていた。


「いや、なんでもない。それよりお前はこの菓子を初めて食べるのだろう?甘いと思うぞ」


 マカロンの味を知らなかった頃は、最初にマカロンを食べた時にその甘さにびっくりしたものだ。だからこそハマってしまったのだが。


「そうなの?なおさら買いたいわ。ねぇヴァルターはどの色がいいと思う?」


「は?俺が選ぶのかよ」


「そうよ、だって私はどの色がどんな味か知らないもの」


「……この桃色のやつはいちごっぽい味がする。緑色のやつはミント系で……」


 って、何を律儀に説明しているのだ!俺は……

 もうマカロンは買えたしとっとと帰ればいいじゃないか。


「わぁ、やはり色によって味が違うのね!じゃあこの青色のマカロンは?」


「……青い色のやつはーー」


「この青色、まるでヴァルターの瞳の色みたいね」


「はぁ!?」


 何を言い出すのかと思えば、青いマカロンと俺の瞳の色が似ているだと??

 そんな事に例えられた事は一度もないぞ!


「それでこの緑のマカロンはフウカに似てる!」


 ふとフウカの方を見ると、確かに緑のエプロンをしているし、緑色の瞳だ。

 だからってマカロンを人に例えるか?


「ブハハッ」


 もう耐えられない!俺は思わず吹き出してしまった。

 こんなところ誰かに見られたら……という思いもあったが面白いものは面白い。


「お前みたいなお嬢様は見た事がない!」


「どうしたのヴァルター。突然笑ったりして……何がおもしろいの?何か面白い事があったの?」


 思えばこんな風に笑ったのは久しぶりかもしれない。それもこんなくだらない事で。


「ヴァルターったらずるいわ!私にも面白い事教えてよ」


 ーー何も知らない人から見たら俺たち二人はどう映るだろうか。

 まるで恋人同士がデートを楽しんでるように見えるだろうか?


 ーーそんな、マカロンのように甘い時間を過ごせたらどんなによかったか。


 どんなに足掻いてもルシアはエルド侯爵の婚約者なのだ。


 胸の奥の痛みに気付かないふりをして。今はルシアに偶然会えたこのひと時を楽しもう。


 こんなに楽しい時間は久しぶりなのだから。


 今だけでいい。

 この時間が終わるまででいい。

 どうか、もう少しだけーー


 * * *


ヴァルターは完全に片思い……泣


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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