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侯爵様の悪役令嬢(自称)  作者: 杉野みそら
第十六章 初めてのすれ違い

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言う事を聞かないご令嬢

シオンベルクの街で偶然出会ったヴァルターとルシア。

ヴァルターは屋敷でのダンスの事もあって会いたくなかったようだが、ルシアはそんな事も知らず距離を詰めてきて……

「ヴァルター!」


 最悪だ。そう言えばここシオンベルクは、エルド侯爵の治める領地でもあったのだ。


 もちろんその婚約者のルシア・カルミナートももちろんいるわけで……


(何もこんな時に会わなくてもいいだろ!)


「ヴァルター!こんなところで会うなんてびっくりね。あなたの家からずっと遠いはずなのに」


 先日のダンスの事もどこ吹く風。俺の気も知らずに相変わらず距離感無視で話しかけてくるな。

 エルド侯爵とのダンスを見せつけられた後、どれほど俺と俺の一族が悔しがったかこの女は知らないのだ。


 父親にはこっぴどく叱られ、『もうカルミナートと関わるな』とまで言われたばかりなのに。


 そう言えばエルド侯爵がいないな。今日は留守か?


 しかしさっきからこのルシア、エルド侯爵の婚約者という自覚はないのか?というほどの距離感だ。


 ふと見ると、ルシアの侍女らしき女がまたか……という感じで顔を覆っていた。


 俺はその姿を見て悟った。おそらくルシアはずっとこんな感じなのだろう。

 人の事などお構いなしに無意識に距離を詰めて……


「ねぇヴァルター、何を買ったの?」


 ルシアは俺の買ったばかりのマカロンの箱を指差して言った。


「ねぇ何を買ったの?」


「……ここに並んでる菓子だ」


 俺は色とりどりのマカロンを指す。


「まぁ……とっても綺麗」


「まさか知らないのか?マカロンを?」


 貴族なのにマカロンを知らないとは驚いた。庶民には買えないものだぞ。ルシアは一応伯爵家の令嬢のはずなのに……


「うーん、そういうお菓子ってお茶会とかで出されるものでしょ?私はどうもそういうの苦手で……ほとんど参加しなかったの」


 ルシアはえへへ、という感じで頬をぽりぽりとかいた。


「お前は一応伯爵家の令嬢だろう。そういうのは参加したくなくても参加するものだ」


「だってつまらないんだもの!それより私も買おうかしら、マカロン」


 俺は驚いた。「つまらないから」という理由でお茶会に出なかったなんて聞いた事がないぞ……


 ……エルド侯爵もこんな令嬢には会った事ないだろう。エルド侯爵には悪いが、少し同情する。きっと礼儀作法を一から教えないといけないのだろう?

 しかもこんな跳ねっ返りの、言うことを聞きそうにない女に……


「どうしたのヴァルター?まるでフウカみたいな顔して」


 フウカとはルシアの侍女だ。なるほど……フウカにも同情する。

個人的に

「どうしたのヴァルター?まるでフウカみたいな顔して」

このセリフ好きです。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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