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侯爵様の悪役令嬢(自称)  作者: 杉野みそら
第十五章

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ルシア覚醒再び

終始リードされたままに終わったヴァルターとルシアのダンス。

そこへ今度はエルドが……

「さて、次は私の番だな」


「えっ?」


 エルドのその言葉に、ヴァルターは驚いてルシアを離してしまう。


「いいだろう?婚約者なのだから……」


 エルドのその余裕たっぷりの表情にヴァルターの顔が引き攣る。


「ええ!もちろんいいわ!そういえば私侯爵様と踊ったことがなかったわ!ねぇヴァルター、いいでしょ?感想は後で聞かせてね」


 ヴァルターの屋敷なのにそれにも構わず、いやただ単に忘れていたのか。何故かルシアが答えた。


「……勝手にしろ」


 ひりつく喉から、ヴァルターはようやくその一言だけを絞り出した。


 * * *


 先程とは打って変わって、音楽が、重く、鋭く、絡みつくような旋律へと変わる。


 その途端に、ルシアの持つ雰囲気が変わった。


「この曲……覚えているわ」


(赤髪のカルミナート家のご先祖さまの踊り……王様をも魅了した命の旋律……)


「ルシア……?」


 明らかに雰囲気の変わったルシアを心配してエルドが名を呼ぶ。


 ゆっくりと顔を上げたその瞳はーー


 さっきまでの無邪気な色を、どこかへ置き去りにしていた。


「……いい音楽ね……」


 その声音は涼やかに、だけどやけに熱を帯びていた。


(……これは)


 エルドの目が細められ、無意識に喉が鳴った。

 本能が告げている。


 “いつものルシアではない“とーー


「お相手してくださる?侯爵様?」


 エルドが言葉を発する間もなく、ルシアはすっと一歩踏み出すと、エルドの手を取りグッとその体を自分の方に引き寄せた。


「……!」


(今、引かれた……?)


 あり得ない。


 リードする側であるはずの自分が、一瞬で主導権を奪われた。


 ルシアの指が、するりとエルドの首筋を這う。


 誘うように。


 逃がさないように。 


 導くように。


「さあ、侯爵様」


 その声音は柔らかいのに、逆らえない。

 そのままルシアの腕はエルドの胸に倒れ込むようにして絡みつく。 


 エルドは無言のまま、その手を受けた。


 ダンスが、始まる。


次はエルド様がお相手です。

何やらルシアお嬢様は覚醒した様子ですね。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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