ルシア覚醒再び
終始リードされたままに終わったヴァルターとルシアのダンス。
そこへ今度はエルドが……
「さて、次は私の番だな」
「えっ?」
エルドのその言葉に、ヴァルターは驚いてルシアを離してしまう。
「いいだろう?婚約者なのだから……」
エルドのその余裕たっぷりの表情にヴァルターの顔が引き攣る。
「ええ!もちろんいいわ!そういえば私侯爵様と踊ったことがなかったわ!ねぇヴァルター、いいでしょ?感想は後で聞かせてね」
ヴァルターの屋敷なのにそれにも構わず、いやただ単に忘れていたのか。何故かルシアが答えた。
「……勝手にしろ」
ひりつく喉から、ヴァルターはようやくその一言だけを絞り出した。
* * *
先程とは打って変わって、音楽が、重く、鋭く、絡みつくような旋律へと変わる。
その途端に、ルシアの持つ雰囲気が変わった。
「この曲……覚えているわ」
(赤髪のカルミナート家のご先祖さまの踊り……王様をも魅了した命の旋律……)
「ルシア……?」
明らかに雰囲気の変わったルシアを心配してエルドが名を呼ぶ。
ゆっくりと顔を上げたその瞳はーー
さっきまでの無邪気な色を、どこかへ置き去りにしていた。
「……いい音楽ね……」
その声音は涼やかに、だけどやけに熱を帯びていた。
(……これは)
エルドの目が細められ、無意識に喉が鳴った。
本能が告げている。
“いつものルシアではない“とーー
「お相手してくださる?侯爵様?」
エルドが言葉を発する間もなく、ルシアはすっと一歩踏み出すと、エルドの手を取りグッとその体を自分の方に引き寄せた。
「……!」
(今、引かれた……?)
あり得ない。
リードする側であるはずの自分が、一瞬で主導権を奪われた。
ルシアの指が、するりとエルドの首筋を這う。
誘うように。
逃がさないように。
導くように。
「さあ、侯爵様」
その声音は柔らかいのに、逆らえない。
そのままルシアの腕はエルドの胸に倒れ込むようにして絡みつく。
エルドは無言のまま、その手を受けた。
ダンスが、始まる。
次はエルド様がお相手です。
何やらルシアお嬢様は覚醒した様子ですね。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




