クロイツ家の屋敷
ヴァルターの手紙を読んだルシアとエルドは、クロイツ家の屋敷に足を運んだのだった。
ヴァルターからの手紙が来てしばらくしてーー
ルシアとエルドはクロイツ家の屋敷に足を運んでいた。
二人を出迎えたのはまず何者も侵入を阻むかのように聳える高い塀と、門扉の両隣に立つ女神の像だった。その高い塀の歴史深い佇まいと気高さを感じる女神の像に、ルシアはわぁ、と息を呑んだ。
「侯爵様の本邸も目をみはるものがありましたけど、ヴァルターの屋敷もなかなか趣深いわ!ほら、この女神の像なんか蔦が生え散らかしてて、きっと何年も前からずっとこのお屋敷を守ってきたのね!」
「……ククッ」
エルドはわざわざ言わなくてもいいことを口にするルシアに肩を震わせていた。
(この蔦はわざとこのように生えるようにしているのだが、ルシアにはそう見えるのか。生え散らかしてなどと。相変わらず面白いな……)
しばらくしてヴァルターの従者が恭しく門扉を開けた。
門扉が軋む音とともに、ゆっくりと開いた。
黒鉄の門の向こうには、重厚な石畳の道がまっすぐ屋敷へと続いている。両脇には手入れの行き届いた庭園が広がり、その奥に、森の影を背負うようにクロイツ家の屋敷が聳えていた。
ルシアはきょろきょろと辺りを見回す。
「すごいわ……まるで王城みたい」
「名門だからな」
エルドは淡々と答える。
「クロイツ家は長年王の信任を受けてきた家だ。こういった威厳を示す造りはむしろ当然なのだろう」
「へぇ〜クロイツ家って本当にすごいのね!」
ルシアは素直に感心したように頷いた。
「でも侯爵様のお屋敷の方が落ち着きますわ。ここはなんだか……こう……」
「怒られそう?」
「そう!なんか怒られそうで落ち着かない!」
ルシアがすかさずそう返すと、エルドがまた肩を震わせた。
「君は本当に面白いな」
エルドはルシアの頭にポンと手を置き微笑む。
「私は真剣ですよ??」
ルシアは何が面白いのかわからないといった感じで、少し不服そうに頬を膨らませた。
その時だった。
石畳の先、屋敷の大扉が開く。
現れたのは、黒い礼装に身を包んだ一人の青年だった。
ヴァルター・クロイツ。
クロイツ伯爵家の次期当主が、高い階段の上からゆっくりと二人を見下ろしていた。
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