ヴァルターからの手紙
一方その頃ルシアお嬢様は……
「あの、お嬢様?その〜……お嬢様宛てに手紙が届いてます」
「えっ?!また!」
婚約発表の場でルシアが踊りを披露した日から、いつのまにかできていたファンやら、ルシア同盟やら、貴族やらからぜひ我が家でもカルミナートの見事な踊りを!と熱望する手紙がルシアの元に毎日のように押し寄せてきていた。
「……そんなこと言われても困るわ。私はあくまで侯爵様との婚約を認めてもらう為に踊っただけなのに……」
「はい、それはわかっていますからエルド様からきちんとお断りしてもらっていますわ。ですが今回の手紙は少し……」
フウカは見てもらった方が早いと言わんばかりにルシアに手紙を押し付けてきた。
(この封蝋は、クロイツ家のもの……ヴァルターだわ!)
「あの時のダンスの感想を書いてくれたのかしら??」
フウカはさぁねぇと言った感じで肩をすくめた。ルシアは封蝋をぺりぺりと剥がし、椅子に腰掛けて読み始めた。
『ルシアへ
先日の件についてだが、まだお前に伝えていないことがあったのを思い出した。
……いや、正確には「言う必要はない」と判断していただけだ。
だが、お前がやたらと俺の感想を気にしていたようだからな。放っておくと、いつまでも騒がれそうで鬱陶しい。
だから仕方なく書く。
踊りの感想だが。その……悪くなかった。
いや、違うな。
あれは反則だ。
あんなものを至近距離で見せられて平然としていられる男がいるなら、ぜひ会ってみたい。
目障りなほど楽しそうで、馬鹿みたいに眩しくて、気づけば目で追っていた。
不本意だが、認める。
見事だった。
だからもう一度確認させろ。
次はもっと近くで見たい。
いや、違う。見るだけでは足りん。
俺と踊れ。
これは命令だ。
お前が望むなら、その時にいくらでも感想を言ってやる。
ヴァルター・クロイツ
追伸
断るという選択肢はないと思え。』
(ええ〜?何なのこの手紙??これって私と一緒に踊って欲しいってことかな……)
「どう思う?フウカ……」
「何のことかな?」
「あ、……」
ルシアが振り返ったそこには、フウカの代わりにエルドが立っていた。ルシアは目を輝かせ、みるみる笑顔になった。
「侯爵さま!ヴァルターからこんな手紙が届いたんです。私の踊りを褒めてくれてるんだろうけど、どういう意味かわからなくて……」
ルシアから手紙を受け取り、目を通したエルドはフッと鼻で笑った。
(クロイツ卿、お前もルシアに心奪われたのか。だが残念だな、ルシアはすでに私の……)
「ーーどうやらヴァルターは君と踊りたいらしい。私はいいと思うよ。とても良い提案だ」
「えっ?いいんですか?」
「ああ」
そう言ってにっこりと微笑むエルド。だが瞳の奥は笑ってはいなかった。
(ーーこのエルドの目のつかない所でルシアを誘うなど)
ヴァルター、恋に狂うのは結構だが、それはあくまでルシア以外での話。
ーー私のものに触れる覚悟は、あるのだろうな。
「楽しみだな」
「ええ!私も楽しみですわ!ヴァルターと踊ったら、今度こそヴァルターは私の目の前で感想を聞かせてくれるんだものね!」
ルシアは相変わらずズレた回答を返す。
ガシャーン!!
どこかでフウカがずっこけた音が響いた。
ルシアお嬢様。違う、そうじゃない笑
果たしてヴァルターとルシアは踊るのでしょうか?
最後まで読んで頂きありがとうございました。




