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収束する運命


「千年前から生き続ける、レンシアラの支配者か……とうのレンシアラ人も、自分達がそんな奴の手のひらの上だなんて、気付いてもいないんだろうね」


「だろうな……じゃなきゃ、キルだって最後にあんなことを俺に頼むはずがない。あのくそ野郎に好き勝手されて、一番悔しかったのはあいつのはずなんだ……っ」


「……だとしても、なんの考えもなしにそんな事実を公表すれば大変なことになるわ。レンシアラが迫害されるだけならまだしも、それ以外の無関係な人まで尾ひれの付いた噂や思い込みで迫害されかねない。まったく……まさかレンシアラの保有する技術が、そこまでだったなんてね……」


 天帝戦争終結間際。


 緊急の招集を受けたエオインとソーリーンは、ヴァースからキルディス事件の真相を打ち明けられた。


 これまで、レンシアラの指導者についての情報はどれだけ調べても闇の中だった。

 レンシアラの内情を探り続けていたソーリーンも、レンシアラには指導者と呼べる特定の個人はおらず、共和制のような集団による統治体制と断言していたほどだった。


「……俺はキルに、レンシアラ人の歴史を終わらせて欲しいって頼まれたんだ。勝手に容れ物にされた、レンシアラ人の呪いを終わらせて欲しいって……」


「それはつまり、レンシアラ人を皆殺しにするってことかい……?」


「そうなったら、私達は英雄どころか歴史に残る大量虐殺者になるでしょうね……」


「いいや。俺だって、罪もない大勢のレンシアラ人を殺すつもりはないさ。けど、あのくそ野郎をこのまま逃がすつもりもない……!」


 ヴァースの瞳に浮かぶのは、激しい怒りと憎悪。

 その怒気はまっすぐレンシアラの方角を見据え、その先にいるであろう仇敵の姿を鋭く射抜いていた。


「奴のふざけた不死のからくりの種は、必ずレンシアラにあるはずだ。だったら、俺達はこれまで通り戦って勝てばいい。レンシアラを落として、あのくそ野郎……キルディス・ゾンに報いを受けさせるぞ!!」


「なら、僕達もこれまでと同じだね。そいつが何をしてこようと、僕とイルレアルタは君と共にある。やろう、ヴァース!」


「けどこれからは、国内の統制にももっと気を使う必要が出てくるわ。命を救うってことは、時に命を奪うよりも大きな代償を払う……わけもわからず隔離されてる国内のレンシアラ人の扱いは、私に任せて貰うわよ」


「ありがとな二人とも……けど、本当にあと少しなんだ! こんな馬鹿げた戦いは、絶対にここで終わらせる!!」


 気炎を上げるヴァースの言葉に、エオインとソーリーンは迷うことなく頷く。

 そしてこれほどの困難を前にして、なお前に進み続ける意志を燃やす英雄ヴァースと共に、最後まで戦い抜くことを誓った――。


「全軍突撃! このヴァースが掲げる刃と共に、レンシアラの賊共を叩き潰せ!!」


「「 オオオオオオオ――!! 」」


 天帝戦争末期。


 キルディスによる妻子殺害という悲劇を乗り越え、ヴァース率いる反レンシアラ軍はこれまで以上に苛烈な猛攻を仕掛けた。

 反レンシアラの進軍は凄まじく、十年にわたり親レンシアラが築いた勢力網を、わずか一年で瓦解させるほどだった。だが――。


「イルレアルタ……ずっと昔から、無数の神隷機(ウラリス)を滅ぼしてきた神滅の天穹。けどいくらイルレアルタが強くても、それを操る君はそうじゃないだろう? フェアロストの血を持たない劣等種の君がイルレアルタの主なんて、とんだ笑い話だよッ!」


「ならすぐに理解(わか)らせてあげるよ。これから始まるのは対等な戦いなんかじゃない……一方的な狩りだってことをね!!」


 戦地がレンシアラ領内に及ぶ頃、双方の戦いは〝絶滅戦争〟の様相を呈しつつあった。


 無数の神隷機が戦場を焼き尽くし、それまで反レンシアラとして戦ってきた数多の英雄達が――ヴァースとエオインにとって、掛け替えのない多くの友人達が命を落とした。

 

 当時、神隷機を単機で相手取ることが出来たのは、エオインが操るイルレアルタだけだった。

 エオインはこの戦争末期において、たった一人で十体に及ぶ神隷機を撃破し、〝数十人のキルディス・ゾン〟を殺した。


「――フェアロストの血を持たない君が、イルレアルタの力をそこまで引き出せるなんてね……だけど、乗り手としての資格を持たない君の体じゃ……〝星の力には耐えられない〟……そう遠くないうちに、君の命はその星の光に焼かれて消える……その時に君がどんな顔をするのか、今から楽しみだなぁ……!」


 だがその代償として、ヴァースを支えるために戦い続けたエオインの心身は急速に壊れていった。

 敵味方双方の血にまみれ、無数の命を奪い、無数の命を失う。

 ヴァースよりもはるかに長く最前線で戦い続けたエオインの精神は、ヴァースの予想を超えて摩耗していたのだ。


「そんなことはわかってるさ……けどそれならそれで、先にお前達を一人残らず狩り尽くせばいいだけだよ……」


 しかしそれでも、エオインはヴァースのために戦い続けた。


 この頃のエオインとイルレアルタが残した戦果は、まさに鬼神そのもの。

 一刻も早い戦争終結を目指すヴァースも、エオインの身を案じながらもその力に頼らざるをえなかった。

 それほどまでに、エオインとイルレアルタの強さは圧倒的だった。そして――。


「なんだ……?」


 レンシアラ最後の都、技術都市フィロソフィアでの攻防戦。

 雲霞のごとく湧き出るレンシアラの量産型天契機を、愛機に乗って切り伏せた先。


 ヴァースは、空に輝く一つの星――全ての大地を焼き尽くし、何もかもを滅ぼすために放たれた、破滅の星(ナグナルイン)の光を見たのだった――。



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