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反転の兆し

「ニアさんを副官に?」


「そうです。今回お話し頂いたエルフィール様の策は、まさに連邦防衛の起死回生の一手! ですがだからといって、軍の全権をよそ者である彼女に委ねれば、プライドだけは一人前の皆さんになんて言われるかわかりませんからねぇ」


 財団議長ユリースと再会してから数日の後。

 連邦議事堂の一室に集まった面々は、議長であるセネカから、ニアに〝連邦元帥副官〟の席を用意すると説明を受けていた。


「それでも批判は出ると思うけど、もう君たち独立騎士団の名声は、反帝国の英雄として大陸中に轟いている。そんな君たちを率いる〝天才少女〟が対帝国戦の副官になんて、とってもいいアイディアだと思わない?」


「コケ! コケー!」


「僕もそう思いますっ! それなら、ニアさんも連邦の皆さんに指示を出せるかもしれませんっ!」


「ついにニアが万の軍勢を率いるというわけだな! なにやら一気に帝国に勝てそうな気がしてきたぞ!」


 話を聞き、シータとリアンは素直な喜びを露わにする。

 セネカと共にその場に同席したユリースもまた、自らがお膳立てした今回の案に胸を張った。


 実際、セネカとユリースの見立てはそれほど的外れではない。

 誇り高い連邦の将兵達に、たとえ英雄でも〝よそ者の小娘〟の指揮下に入れなどと言えるはずもない。

 しかしあくまでも副官という立場であれば、帝国に追い詰められた首脳部の苦肉の策という体は十分に保てる。

 さらにこれまでセネカ直轄だった独立騎士団が、正式に連邦軍に加わったと喧伝できる利点もあった。


「それは……ですが、元帥閣下はそれでよろしいのですか?」


「む……」


 だがそこで、当のニアはもう一人の同席者――連邦軍元帥デキムス・フラウウィスへと言葉を投げる。


 帝国との開戦から数年。

 連邦軍元帥は、度重なる敗戦で四度も交代している

 そんな中でデキムスは、〝前任の元帥よりはマシ〟という議員達からの蔑むような評価にも耐え、今日まで必死に連邦軍をまとめ上げ、帝国と戦い続けてきた。


「……帝国から連邦を守るに、私では不足。それは私自身がよく知っていることです。今さらどのような指示を受けようと、不平も不満もあるはずがない」


 本来、軍の全権を預かる元帥がこのような突拍子もない提案に首を振ることはないだろう。

 だがこの場にいる誰よりも長く帝国と戦い続けてきた初老の将軍はふうとため息をつき、実年齢よりもずっと老いの進んだ顔で静かに頷いた。


「ですが、それでも私を〝まだ元帥の席に留め置く〟ということ。それはまだ私にも、この戦いで果たすべき責務が残っている……ということでしょうな?」


 しかしデキムスもまた、曲がりなりにも大陸を二分する強国の全軍を預かってきた者である。

 デキムスはすぐ顔を上げ、固唾を呑むシータの前でニアに鋭く切り返した。


「仰る通りです、元帥閣下。私の策も連邦の命運も、どちらも〝元帥閣下の手腕〟にかかっているということは、今も変わっておりません。そして――」


 覚悟を決めたデキムスの姿にニアは深く頷く。

 そしてその眼鏡の奥の理知的な眼差しを、隣に座るシータへと向けた。


「ごめんなさいシータさん……私達は今回も、貴方とイルレアルタの力に頼らないといけない。そしてそれは、帝国も分かっているはず。きっと……これまでで一番過酷な戦いになる」


「…………」


 ニアのその言葉に嘘はない。

 すでに帝国は、円卓の戦いでもシータとイルレアルタこそを〝最も危険な戦力〟として認知していた。

 剣皇自ら指揮を執るこの決戦において、帝国は間違いなくそれ以上の策をイルレアルタに用いてくるだろう。


「大丈夫だ! シータ君のことは、私とルーアトランがこの命に代えても守ってみせるっ! もう二度と……たとえ誰が相手だろうと後れを取るつもりはない!」


「僕もそうです。リアンさんのことも、ニアさんのことも……僕が円卓で見た、この戦争で辛い目にあっているみんなのことも……! 僕とイルレアルタの弓で必ず守ってみせます!」


「コケーー!!」


 だがシータの心はすでに決まっている。

 シータはリアンと共に頷くと、まだ幾らかの迷いを見せるニアに決然とそう告げた。

 

「うんうん、実に良い返事だね! そうと決まれば、ぼくたち知識の回廊財団からも、エリンディアのみんなにプレゼントをあげるよ! 入っておいで!」


「プレゼント……ですか?」


 だがその時。

 シータ達のやりとりを満足げに見つめていたユリースは、そう言って手を叩いた。

 すると執務室の扉を開き、黒髪をなびかせた〝一人の女性〟がいそいそと室内に入ってくる。


「えーっと……こ、こんちは。あの……これめっちゃ気まずいんですけど……」


「うむ! 誰だ?」


「あれ……? この人、どこかで……」


「もしかしたら知ってる人もいるかな? この子の名前はナズリン・アルパ。君たちとセトリスで戦ったっていう、帝国の緑宝騎士団(りょくほうきしだん)で副官をしてた子さ! この子とこの子の天契機(カイディル)を、君たちの部隊に追加で加えて貰いたいんだ!」


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