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1話

幼い頃、一度だけじいちゃんが製造魔法を見せてくれたことがある。

自分の思い描いた物をその人の魔力を消費して作ることができるその魔法を当時3歳だった僕からは、人生を変えるほどの魅力をもっていた。


たとえ、それが歯茎に挟まったカスを取るために作った

尖った木の枝だとしても・・・・



 そんな出来事から8年がたった現在、少年アル・クラフテルは悲しみに

くれていた。

なぜなら、アルが生まれたすぐに死んだ両親の代わりに11年間も一人で育ててくれた叔父のラド・クラフテルが今日亡くなってしまったからだ。アルにとっては、唯一の家族。その家族を失いアルにとっては、絶望を感じさせるほどの出来事だった。


「どうやって生きていけばいいんだよじいちゃん・・・」


アルは、ラド・クラフテルと書かれた墓の前に立っていた。

悲しい顔をしているアルは、既に15時間何もせずに墓の前に立っていた。


ぐぅ~~~~

そんな静かな墓の前でアルのお腹が鳴った。


「ははは・・・こんなに悲しくてもやっぱお腹は空くんだな」


アルは切り替えるかのように、目を擦り、息を吸って、「よし!」とさっきよりも明るい声を出した。


「ご飯買いにいくか」




      ◇◆◇


アルは、切り替えてから約3時間後に絶望した顔に戻っていた。


まず順を追って説明すると、アルはご飯を買いに少ないお金を持って町の方に赴いた。

赴いたはいいもののアルは気づいてしまった。これがアルにとって、初めてのお使いであることに。


11歳で初めてのお使いというのは、この国では、あまり見ない光景である。この国は、他の国に比べてもあまり変わらない国である。だから、子どもはお使いにも行くし、遊びにも行く。


アルが特殊なだけである。

アルは、小さい頃から物づくりしかしてこなかった。もちろん、友達とも遊んだことがない、お使いもおじいちゃんだより、

そう・・・アルは、引きこもりであった。生前叔父も頭を抱えるほど・・・


そんなアルがお使いをできるわけがなかった。

もちろん飲食店にも入ることもできるわけがなかった。

アル自身、人と喋ることはもちろんできる。だがまだ11歳、初めてのお使い、飲食店へ赴くという行為に絶望を感じていたのである。


「どうすれば・・・・」


辺りは、徐々に暗くなってきており、人通りも少なくなってきていた。


「よし一旦、家に帰って頭を整理しよう!」


アルは、方向転換をし家の方へ向かいだした。もちろん、戦略的撤退であり逃げではない・・・


「そうだよ。別に今日行かなくてもいいじゃないか」


ぐう~~~~~~~


「別にそんなお腹空いてないし!明日の朝食べればいいだけだ」


ぐう~~~~~~~~~~


「朝食が美味しそうな店の方が多かったし、今から食材買って作るのも面倒だし!」


ぐう~~~~~~~~~~~~~~~


「は~~、お腹空いた。」


強がったとて、お腹は満たされなかった。むしろさらにお腹が空いただけだった。


「ん?なんだあれ」


アルが逃げて、、、戦略的撤退をしようと家の方に向かっていると、人通りのない路地で怪しい光景を見つけた。


その路地には、どう見ても親しいようには見えない20代の筋肉隆々の男とアルと同じくらいのどこぞのお嬢様のような格好をしている女の子がいた。

親しいようには見えないというのは、男の方が女の子の手を掴み、女の子が誰が見ても嫌がっているようにしていたからである。


「うわ〜、まじか、ありきたりすぎない」


アルはもちろんこんな場面に遭遇するのは初めてである。でもアルでも絵本や物語が書かれてある本くらいは読んだことがある。この場面はそんな本の冒頭、主人公がヒロインを助ける場面のようであった。


アルは、周りをキョロキョロと見回した。自分の他に主人公になり得る人がいるのかどうかを確認するために。でも誰も居なかった。


アルは非力である。今まで引きこもっていたため普通の11歳にも勝てないかもしれない。

こんなアルが20代の筋肉隆々な男性に勝てるわけがなかった。


だからアルは自分が主人公になるなんて微塵も思っておらず、あたりをキョロキョロしたのである。


「はぁ〜〜〜〜」


アルからしてみればこんな面倒事に首を突っ込みたくはない。ただでさえ、唯一の家族が亡くなり、街に来たはいいものの何も食べずに帰り空腹状態、そんな中また新たな出来事があるのは、流石にきつかった。


ただここで逃げるという選択肢はなかった。それはアルの生まれ持った正義感もあるが、一番大きいのは祖父の影響だろう。


(・・・・困っている奴を助けてやれ)




「気合い入れるか・・・」


そう言ってアルは足を進めた。






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