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魔法を信じるか?ですって。私にとってあなたに出会えたことこそ魔法です

作者: 森本英路


「来てくれると信じてた」


ケヤキの大樹の下に二人っきり。音楽や男女の笑い声が聞こえる。木々の向こうは煌煌と光を放っていた。そこは芝生が張られた王墓の森で儀式が行われる空間。


そこで多くの子息子女たちが音楽に合わせて踊っていた。軍議を開けるほどの大きなテントを幾つも張り、多くの使用人たちがお酒や料理のトレイを片手に子息子女たちの間を縫って行き来する。


エドワードがここに来たのはプロムの開会宣言をして一時間後のことだった。私はというと開会と同時に多くの子息子女の間を抜けて一人、ケヤキの大樹へと向かった。


エドワードを待っている間、私はたき火の炎を眺めていた。するといつしか、来なければ良かったと思うようになっていた。エドワードに会いたい気持ちが私を狂わせる。自分のあさましさが許せない。


私の手にはエドワードからの手紙。もう会えなくなるだろう、最後に二人だけで会いたい、どうしても君に話さなければならないことがある、とそこには記してあった。


何度も帰ろうかと思った。でも、エドワードのおかげで卒業出来たのも事実だった。ちゃんと区切りは付けたい。そうしなければ前に向けて歩んでいけないような気がした。お礼だけはしっかりしなければと、あらためて決意を固める。


平静を保つため、最近気に入って持ち歩いている本を開く。けど、全く集中出来ない。大好きな本なのに文字が目を滑って行く。エドワードの気配はすぐに分かった。高い背に広い肩幅、長い手足。向かって来るそのシルエットはまさにエドワード。


心臓の鼓動が跳ね上がる。エドワードに呼ばれたから来たわけではないと私は必死に自分に言い聞かせる。お礼の言葉以外絶対に言わない。何か言えば心の内を吐露してしまいかねない。


不安が襲って来た。上手く話さなくてはと緊張もする。エドワードと会える喜び、自分に対する怒り、別れの悲しみ。それが次々と押し寄せて来て、私はそのどれもを抑えることが出来なくなった。


こんなことは初めてだった。私は今どんな表情をしていて、どの感情で自分の顔を塗りつぶせば最後の別れにふさわしい顔になるのか、もう分からない。最後の別れに、無様な私なんて耐えがたい。


どうしようもなくなって私は顔を伏せた。本なぞ読んでもいないのに、本に夢中なふりをする。


「来てくれると信じてた」


その言葉に、うつむいた下で、はっとした。私は自分の意思でここに来た。エドワードに呼ばれてきたんじゃない。カレッジであったことはもう遠い昔。私は今さっき、子供の私とさよならすると決意した。


「エドワード」


沈黙があった。エドワードは私の言葉を待っている。何を躊躇ためらうことがあるのと私は自分自身を鼓舞する。ただ感謝の気持ちを伝えるだけ。


「ありがとう。あなたのおかげでキングズ・カレッジを卒業出来た」


想いとは裏腹に私はエドワードを見れなかった。うつむいたままの私に、エドワードの声が届く。


「僕のおかげ? 良く分からないな。卒業出来たのは君の努力じゃないか。君はカレッジのほこりとなった。一般教養、法学、経営学。全てにおいて君は誰よりも優秀なのを皆に証明して見せた」


私は自分の気持ちを誤魔化してここに来たわけじゃない。感謝の気持ちは本当にある。からかわれているような、揺れる心を見透かされているような嫌な気分になって、気が付けば、バン!と本を閉じていた。


「君は僕に相当気分を害しているんだね」


違う、と面と向かって反論したかった。けど、最後の最後でエドワードには醜い姿を見られたくない。私はうつむいたままで声も出せなかった。


「王墓の森でキャンプってのがいけなかったか。悪かった。ここなら待ち合わせですれ違うことはないと思ったんだ。ゆっくりと話も出来るとも思ったしな」


キングズ・カレッジでのプロムは今年だけ中止となった。それで今夜、キャンプと称して王墓の森でプロムが開催されている。


「でもな、ラナ。レイヴィンクロフト朝は終わったんだよ。もう王家に気兼ねする必要はない。ルドベキアも王国でなくなり公国となる。時代は変わったんだよ」


確かにプロムのことは納得できない。だけど、そうじゃない。私は全て知っている。


「違うの、エドワード!」


怒りに任せて見上げるとエドワードと目が合う。エドワードの輝く黒い瞳が目に飛び込んで来た。唐突に、あの日のことが頭によぎる。


二年生になったばかりだった。男子しかいない図書室の歴史地理コーナーで私は本を読みふけっていた。そこにエドワードが現れて、突然私の向かいに座り、私に向かってこう言った。


「やっぱりだ」


え? なに? エ? エドワード!


「前から思っていたんだが、やっぱりハニーブラウンの髪にヘーゼルの瞳はよく合う」


エドワードに見つめられている。胸が高鳴った。あまりに大きな音だったのでエドワードに聞こえたんじゃないかと思ったくらいに。


エドワードは私の心を狂わせる。あの時のように、私はまた目を伏してしまっている。


「ラナ。僕とセシリアとの間にはなんにもない。色々と家の事情があってな、僕はただ彼女のわがままに付き合っていただけなんだ。彼女も僕のことは何とも思ってない。彼女にとって僕は引き立て役なんだ。それに僕は長男じゃない。キングズ・カレッジを卒業した今となっては、セシリアの興味は僕の兄となっている」


侯爵令嬢のセシリア・アボットは男子の間では一番人気だった。長い金色の髪に青い目。手足が長く、スラっとしていてダンスが得意で、男子の間ではプロムの相手が誰になるのかといつも話題となってた。


私はエドワードとセシリアの仲を咎めているんじゃない。もし、そんな風に思われているなら心外だった。私がエドワードと不釣り合いなのはうの昔に分かってる。私が言いたいのはそれじゃない。


「私が知らないとでも」


私は知っていた。エドワードがセシリアを納得させた。付き合う条件で私への嫌がらせから手を引く。


エドワードと親しくなればなるほど学園での、私へのイジメは激しさを増していく。首謀者はセシリア。廊下で女の子たちが話しているのを私は偶然聞いた。


彼女たちも面白くなかったのだろう。セシリアがエドワードを手に入れるのに自分たちが利用された。そう嘆いていた。


エドワードは五大公爵家の一つ、フレーザー家の次男。学問、武術、芸術、どれを取っても学園ナンバーワン、黒髪に黒い瞳の美男子。横を通るだけで女子は黄色い声を上げていた。


「あの時、私は学園も辞めさせられそうになっていた」


変な噂が流れたり、物がなくなったりするだけではなかった。それだけならもう慣れっこ。私は生まれて来てはいけない子。全て私が我慢すれば済むことだといつも思ってた。


しかし、ことはそれだけで治まらない。イジメに屈しない私の態度にセシリアが我慢ならなかったのだろう。教授会に訴えを出した。貴族でない者にキングズ・カレッジに入る資格はないと。


私は庶子である。父は辺境伯ガイ・ノーマン。17年前、王都の警備から帰還した父の胸には私が抱かれていたという。その父も5年前、世を去っていた。最後の最後まで誰が私の母親か、言うことはなかった。


「セシリアのことも、この馬鹿騒ぎも、全部私のせい」


エドワードはさっきはっきりと言った。私とすれ違わないためにこの野外プロムを考えついたと。


「あなたの卒論は『王墓の全容』」


私のためにしたとしても、やっぱり受け入れることは出来ない。愚王モーガン7世は別として、ここに眠る王たちは代々国を守って来た。そして、エドワードはこの場所を大切に思っている。私たちは何度もこの場所を訪れていた。


「信条を曲げてまで僕が君のためにこの場をもうけた、と君は言いたいのだろう。けど、それは違うよ。これは単なるガス抜きだ」


エドワードは顔色一つ変えずに微笑みを残したまま話を続ける。


「モーガン7世が崩御するとすぐにプロムの中止が決まったろ。そういう決まりなんでな、それは仕方がない。でもな、偶然その年に当たった皆はそれを納得できるか? 今までなんでも思い通りにして来たやつらだ。何をしでかすか分かったもんじゃない。僕が彼らの暴走を食い止めてやったんだ。ここなら誰の迷惑にもならない。幾らでも騒げばいい」


中止を聞いて最も残念がったのはセシリア。この日のために自分磨きにいそしんで来た。ダンスの相手、エドワードも手に入れていた。


プロムの代わりに王墓の森でキャンプするってエドワードが言い出した時、セシリアだけでなく誰もが喜んだ。けど、すぐにそれは無理だと皆が悟った。


国を挙げて喪に服している最中だった。それを王墓の森でキュンプするって? エドワードは頭が良かったが、気が狂っているのかと疑う時が度々あった。


「セシリアも大満足だ。さんざん酒を飲ませて、その後でダンスだ。僕らは皆のアンコールに応えて何度も踊ったよ。今はテントでメイドの介添かいぞえを受けている。やり切ったらしく、ベッドでよだれを垂らしてグーグー寝入っているってよ」


無理だと思ってた野外プロムだったけど、驚くことに許しが出る。出したのは他でもない、時の最高権力者執政デリック・カムデン。愚王モーガン7世が跡継ぎを残さなかったことでルドベキアは王不在の王国となっていた。今の彼の言葉は王の言葉も同然だった。


許しが出た時、どんよりしていた学園内に歓声が上がる。エドワードはヒーローだったが、この時もまたヒーローだった。


「バカな女だ。セシリアだけじゃない。王都では君以外、どうしようもないやつらばっかりだ。君がいなくなるなんて考えたくもない」


私は答えることが出来なかった。エドワードが私にどんな答えを求めているのか。でも、エドワード。あなたと私は身分が違い過ぎる。この先進む道は私と交わることはない。


14才のある夜、兄のイーサン・ノーマンが突然私の部屋を尋ねて来た。父が亡くなってイーサンがノーマン家の当主となっていた。


「ラナ。君は15才になったら王都ガイガルディアに行くんだ。そして、キングズ・カレッジに入る」


もう決定事項らしい。母のサラは猛烈に反対したらしい。一族の恥を世間にさらすだけだと主張した。過去、兄のイーサンは一度も母に逆らったことが無かった。いいなりだと言っていい。


私にはもう一人兄がいた。次男で名をベネリクトという。私の4っつ年上で、父を失ってから家族の中で唯一の味方だった。母が兄のイーサンばかりをかまっているので反発心もあったろう、私と同じ父が大好きだったということもある。


私の夢は貿易商を営むこと。それを聞いたベネリクトはことのほか喜んだ。女だてらに世界を股にかける。そんな女性はいまだ皆無。


そのことを、ベネリクトは兄のイーサンに話したらしい。


「ラナよ。お前はなぜ、母上に嫌われているか分かるか」


「嫌われている? そうでしょうか。そのように感じたことはございませんが」


イーサンは鼻で笑った。


「妹のメアリーがどう育てられているか知らぬお前ではあるまい。いつでも社交界に出られるようにと母上が作法を直接教授している。ダンスとか、服装とか、相手の選び方とかも。対してお前はどうだ。母上がお前に何を与えた」


「私が考えることではございません。お母様にはきっと深いお考えがおありになるのです」


「そういうところだよ、ラナ。私にはお前がどう見ても女郎屋や刀鍛冶の娘の血が入っているとは思えない。ノーマン家の誰よりも頭がキレるしな。もしかしてお前の本当の母親は大貴族の娘なんじゃないか、と母上は勘ぐっている。そして、母上は、自分よりその者を夫は深く愛したのではないかと、そんな妄想に取りつかれている」


イーサンは私の肩を掴んだ。その手は痛いほど強かった。


「お前はここへはもう戻れない。キングズ・カレッジは教養の他に貴族の子息子女に領地の経営や経済、産業保護育成のノウハウを教える。私も授業を受けた。だから分かる、お前なら出来ると。お前には銅貨一枚たりとも遺産は渡さん。これはノーマン家からの投資だと思ってくれ。お前が財を成したなら、私に税を納めろ。私もお前にむくいてやる。我領土で自由に商売するがよい。金が集まるところには人が集まる。我領地の発展に寄与してくれ」


遺産も渡さない。私は追放されたも同然。しかも、成功したら戻って来いと。


いい厄介払いだと母は納得したそうだ。ただ、イーサンは庶子が入れないキングズ・カレッジに大金を配った。


そんなことを忘れてしまい私は二年生の夏、エドワードと過ごして自分を失っていた。図書館から一緒に帰るようになって、家では手料理もふるまった。私は王都のノーマン邸で暮らしていない。


イーサンが母と約束したことであった。私はもうノーマン家の敷居しきいはまたげない。王都で家を借り、そこで暮らしていた。私は自炊が嫌いではない。自炊は亡き父ガイとの思い出が詰まっている。


父は私をよく狩りに連れ出した。家では母の目があった。領主だけあって城から城へと移っていく。


それでも時には草原で火をたいて毛布一枚で寝ることもあった。少人数での移動であったから私も働いた。もちろん、領主たる父も自分の世話は自分でした。


私は色んな人に料理を教わった。エドワードは私の料理をことのほか気に入ってくれた。全て平らげ、おしゃべりして、私の家を出る時に必ずこう言った。


「君のような子が一人暮らしなんて物騒だ。僕のところに来なよ。もちろん、ノーマン家には内緒にする。考えてくれ」


ここ、王墓の森にもよく来た。私が馬に乗れるのでエドワードは驚くというよりも喜んでいた。二人でケヤキの大樹まで競走したものだった。


エドワードに野外プロムに手紙で誘われた時、ケヤキの大樹が真っ先に頭に浮かんだ。そこで待っていれば必ずエドワードが来ると。


そして、エドワードは来た。私は今夜でもう二度と会えなくなると言うのに、いまだにその顔をちゃんと見れていない。


「アルバート1世は魔法を以てこの国を建国したという。君は魔法を信じるかい」


ケヤキの大樹。伝説では初代王アルバートがまいた種が一夜にして巨木となったという。初代王アルバートは魔法が使えたとされている。


エドワードは私の背後に立ち、巨大なケヤキの幹に手を触れていた。色んな想いでが頭によぎってしまい私はつらくて苦しくて、胸が張り裂けそうだった。


「もし魔法があったら君ならどうする」


あなたと結ばれたい。そう私は心の中でつぶやいていた。しかし、それは心の奥深くにしまっておかなくてはならない。私は結局、どうしようもない自分に腹が立っていただけ。それをエドワードにぶつけてしまっていた。


「そうか。想像もつかないか。でも、ラナ。君なら魔法が使えるかもな。いや、使えるなら君であってほしい。君が魔法を使えたのなら、君はこの世界をきっと良くしてくれる」


エドワードは騎士のように私の前にひざまずいた。


「君の決心は分かっている。キングズ・カレッジを見事首席で卒業したのがその証だ。君はこれからも自分の道をしっかりと歩んでいくのだろう。僕は引き留めない。だが、今夜だけは全て忘れてほしい。いいだろ。僕のわがままに答えてくれ」


エドワードが私に手を差し出した。確かに私はエドワードに恩があった。流されてはいけないという想いもある。けど、今夜だけという言葉に私の気持ちはこばむことが出来なくなってしまった。


私は手を差し出した。エドワードの手に私の手が触れる。エドワードは私の手をやさしく包むと立ち上がった。私もその手にいざなわれ、立ち上がる。


「ここは騒々しくていけない。もっと森の奥へ行こう」


エドワードは森を先に進んで行った。私はエドワードの背中を追っていく。エドワードが振り向く。


「足元に気を付けて」


私はうなずく。ケヤキの大樹を越えて森を進んだことはなかった。ちょっと怖い感じがする。


「ラナ。ケヤキから奥の森は御霊廟への道以外聖域なんだ。ここに足を踏み入れた者は神隠しにあうって言い伝えがある。アルバート1世の魔法だそうだ。貴族は皆恐れている。だから、ここにはもう誰も入って来ない」


「大丈夫なの?」


エドワードに寄り添うとエドワードはしっかりと私の手を握ってくれた。


「そんなに奥にはいかないよ。ちょっとだけだ。それに僕はこの森を熟知している」

「来たことがあるんだ」

「卒論を書いただろ。それに僕の家には、王墓の森の古文書やら設計図面やらの資料が山ほどある」

「でも、人が消えたりするんでしょ」


「君は魔法を信じるのかい?」


エドワードは黒く輝く瞳で私を見つめた。魔法があれば私はこんなに苦しまない。首を横に振って見せた。エドワードは笑顔でこたえ、歩を進める。私も寄り添い、付いていく。


「ラナ。星が方角を教えてくれているよ。航海の授業で教わっただろ。あの一番輝く星が僕たちに道を教えてくれる」


星降るような夜だった。私たちはいくらか歩き、立ち止まった。もう音楽も貴族の声も聞こえない。


胸がドキドキしている。私たちは長い間、見つめ合っていた。エドワードはおもむろに私の肩を抱く。私はそっと、エドワードの硬い胸に顔をうずめる。


いい匂い。エドワードの心臓の鼓動が聞こえる。体温も感じる。心地よい音に暖かさ。いつまでもこうしていたい、と思ったその時、足場が抜けた。


エドワードの手が私の頭をおおい、もう一方の手がぐっと腰を引きつけていた。私たち二人は抱き合ったまま落下する。


木の根や枯れ枝、ツルや木の葉にまみれ、私たちは水面に叩きつけられた。泡にもまれる中をエドワードは私を抱き締め、水面を目指していた。


水面から顔を出すと私たちは大きく息を吸った。エドワードの強いまなざしが目の前にあった。


「大丈夫か?」

「ええ」


私たちが落ちて来た穴が天にポカリと明いていた。そこから月光が射し、なんとなく周囲は見えた。トンネルのようなところだった。


「上がろう」


エドワードの視線の先に岸があった。幅1メートルほどの石畳の通路。私たちがいるのは水路のようなものだった。幅は5、6メートルで、深さは結構あった。私たちは岸に向かう。


私を岸に押し上げ、エドワードも上がった。通路は奥へ奥へと進んでいて暗闇の中に消えている。


「ケガはないか」

「ええ」


「どうやらここは地下宮殿の風導管のようだ」

「地下宮殿?」

「そうだ。地上にある御霊廟は二代以降の王が眠っている。初代アルバート1世のみが地下宮殿に眠っていると言われている」

「ここがそこにつながっているというの」

「ああ。おそらく水路は雨水溝うすいこうだろうな。給排気の縦穴から入って来る水を受けてどこかの池か川に排水している。通路は間違いなく宮殿に向かっている」


縦穴から射す光で私たちの周りはなんとか見ることが出来た。水面には多くの木の葉や枯れ枝、つるなどが浮いている。おそらくは空気孔くうきこうにつるが這い、その上に枯れ枝や木の葉が落ちて穴を塞いでいだのだろう。天然の落とし穴。


「これが神隠しの正体か。魔法でも何でもなかった」


エドワードの顔に笑みがあった。全く動じていない。


「でも、どうするの? 助けを呼んでも誰も来ない」

「宮殿に向かうさ。そこから歩いて地上に出る」

「でも、明りが必要よ。先は真っ暗で歩けない」

「大丈夫。僕らはキャンプに来たんだ。火は用意してある」


エドワードはポケットから四角い箱を取り出す。開けると火打石と火打金、ホグチが入っていた。私たち二人ともびしょ濡れだった。私の火起こしは使い物にならない。エドワードの方はどうなの。ここから動けなければ餓死する前に二人とも凍え死んでしまう。


「この箱は防水加工してある。君は世界を股にかけるんだろ。一生王都暮らしの僕には不要の長物だ。あとで君にあげるよ」


別のポケットからロウソク二本と革手袋も取り出す。火打石にホグチをのせ、火打金で叩く。簡単にホグチに火がついた。


ロウソクに火がともった。火打石と火打金、ホグチが箱にしまわれ、その箱と共に革手袋の左手が私に渡された。エドワードは右手に革手袋をはく。そして、ロウソクを持つ。わたしもそれにならい左手に手袋をし、ロウソクを持った。


私たちは通路を奥へ奥へと進んだ。ロウソクのあかりには限りある。自然と速足になった。


ほどなく横にそれる道を見つけた。エドワードはかがんでしか進めないような、小さなトンネルであった。


「この通路で間違いない。図面通りだ」


エドワードは躊躇ちゅうちょなく先に歩を進めた。私も後ろをついていく。五分も歩かないうちに出口が見つかった。ドアもなくその先は大きな空間のよう。ロウソクのあかりでは、空間が大きすぎて向こうの先がどうなっているのか分からない。


「どうやら僕らは宮殿に足を踏み入れたようだ」


そう言うとエドワードは通路を出た。そして、壁に沿って歩いていく。規則的に石製の大きな燭台しょくだいが並んでいた。


「これか」


石の壁に金属の取っ手があった。


「上手く作動してくれればいいんだが」


そういうとエドワードは取っ手をひねる。ゴボゴボと何やら奇怪な音が暗い空間に響き渡った。


「ラナ、心配ない。コックをひねれば石油が各燭台に供給される仕組みだ。この音は装置が作動している証」


音が収まるとエドワードは1個の燭台の前に立つ。そして、ロウソクの火を燭台にかざした。ボッと炎が上がる。


「祖先が書き残していたとおりだ。僕の祖先はこの宮殿建設に携わっていた」


エドワードは次々と燭台に火をともしていく。全ての燭台に炎が上がり、巨大な空間の全貌ぜんぼうが明らかとなる。


縦長の空間だった。床は大理石板が敷かれ、大理石の柱が数多く規則正しく並ぶ。天井は突き抜けるほど高い。長手方向の正面には十段ほど階段があり、その上は壇上となっていた。そこに大きな玉座が鎮座している。


遠くにあるのではっきりとはしないが、その玉座に人が座っているように見える。


「ラナ。見えるか。あれがアルバート1世だ」

「アルバート1世」


固唾を飲んだ。


「素通りは無礼だ。ラナ、僕らは挨拶せねばなるまい。アルバート1世に謁見する」


そう。ここはまるで謁見の間。


エドワードは手にあるロウソクを消すと手袋を脱いだ。ゆっくりと玉座に向けて歩き出す。私もロウソクを消し、手袋を脱ぎ、エドワードに遅れないよう続いて行く。


「モーガン7世がこの世を去り、王家レイヴィンクロフトの血が途絶えた」


歩き始めたエドワードはなぜか唐突に、玉座に向かって話し始める。


「生来、虚弱体質であるモーガン7世に太子を作ることが叶わなかったからだ」


私に話しているのではない。まるでアルバート1世に報告するよう。


「執政の公爵家デリック・カムデン。やつは喪に服しているのにもかかわらず、ルドベキアを救うためと称して自身の息子と隣国の王家ウサンディアサーガとの婚姻を決めた。そして、それに止まらず自らを大公と称した」


エドワードとは思えない低く、鋭い声だった。


「本来なら王妃に王位を継ぐ権利がある。だが、王妃はカムデンの妹。王妃もまた病気と称して王位を辞退した。カムデンはレイヴィンクロフトの名を歴史から抹消するつもりだ。一旦はルドベキアを公国とし、その後にまた王国とする。やつは自らの王朝を築こうとしている」


エドワードの言葉と私たちの靴音だけが、広い謁見の間に響いていた。


「王墓の森で貴族たちに乱痴気騒らんちきさわぎを許したのは王家の名をけがさんがため。王家への尊崇そんすうは無用と貴族たちに知らしめる絶好の機会であった。カムデンはいつかこの宮殿を取り壊そうとしている」


玉座に近付いていた。王冠をかぶり、王笏おうしゃくを手にするアルバート1世の御姿みすがたがある。エドワードはというと何かに取りかれているようだった。


「やつの野心はなにも今に始まったわけではない。遡ること18年、先王ギルバート2世が亡き者にされた。首謀者はモーガン7世。彼はギルバート2世の兄であったが、病弱なために王太子の地位を廃されていた。先先代の王が亡くなると当然、王太子であった弟のギルバート2世が王位にく」


驚くことにアルバート1世の髪は豊かであった。顔も皺が多かったが、血色のいい肌をしていた。まるで眠っているよう。


「モーガン7世はそれが許せなかっただろう。それをきつけたのがデリック・カムデン。モーガン7世は病弱だったために王太子を廃されていたほどの者だ。政治も出来ず、国家行事にも姿を現さず、その結果のカムデンの専横」


魔法? 1500年は経とうというのに全く朽ちていない。エドワードがひざまずいた。わたしもそれにならう。


「私はフレーザー家の次男、エドワードと申します。お眠りの妨げとなりましたら平にご容赦を」


エドワードは頭を下げると立ち上がった。一歩、二歩下がって振り向き、玉座をあとにする。わたしも礼を済ませるとエドワードを追った。


「宮殿から出よう」


エドワードの言葉にわたしはうなずいた。やさしい笑顔。エドワードはいつものエドワードに戻っている。


玉座と対面にある壁にドアがあった。エドワードは二本のロウソクに燭台から火を移すと金属の取っ手を捻る。


燭台の炎が玉座の方から順に消えて行く。ロウソクで照らされた所以外、またたく間に元の暗闇に舞い戻った。エドワードはドアを開ける。


通路があった。私たちは進んだ。ロウソクの火の揺れで、風が流れているのが分かる。


出口に向かっているのを実感し、わたしはホッとした。緊張感が取れると宮殿での出来事が貴重な体験だったと思えた。エドワードはこのことを皆に話すのだろうか。多分、話はしないだろう。わたしも誰にも言わない。


突然、エドワードが立ち止まった。通路の両脇にそれぞれ武人の像が立っていた。双方共に抜いた剣を足元に突き刺し、その柄頭つかがしらに両手を置いている。


通る者を見下ろすように立っていた。アルバート1世のような安らかな顔つきではない。二体共がにらみを利かせ、口をへの字に曲げている。形相がまるで生きているかのようで気味が悪かった。


おそらくは宮殿の守護像。入口を守っている。ということは、もう出口。


「エドワード。私たち、出られるみたい」


「待ってくれ、ラナ」

「なに?」


「僕は君に手紙を書いた。どうしても話さなくてはならないことがあると」

「ええ」


こんなところで?


「でも、それはセシリア・アボットのことでしょ。彼女のことは忘れたわ」


「違うんだ。そうじゃない。こっちに来てくれ、ラナ」


何が違うの。セシリア・アボットは私をカレッジから追い出すために教授会に訴えを出した。


「ようく聞いてくれ。これは大事なことなんだ」


エドワードの目はいつになく凄味があった。私は言われるがままエドワードの正面に立った。


「確かにイーサン・ノーマンは学園関係者に金をばらまいた。しかし、君の入学に動いたのは別の人物。それは他でもない、執政デリック・カムデン。君の支援者はデリック・カムデンなんだ。セシリア・アボットごときがいくら騒ごうとも君をカレッジから追い出せるなんて出来っこない」


言葉が出なかった。エドワードの言っている意味が分からない。


「デリック・カムデンはノーマン家をどの貴族よりも信頼している。18年前、ギルバート2世が亡き者となり、モーガン7世が即位した。執政となったカムデンは諸侯に参集を呼び掛け、それに答えたのが辺境伯ガイ・ノーマン」


「お父様」


「ガイ・ノーマンは野心家だった。国境を異民族から守るために強大な兵力をその手に握っていた。年齢も脂が乗る時期だったのだろう。王都で名を売ろうと躍起やっきになっていた。そのガイの王都での功績は、潜伏していたギルバート2世の王妃と王女を発見したこと」


「嘘。それはデリック・カムデンよ。カムデンがモーガン7世に王妃と王女の亡骸を差し出した」


ルドベキアでは誰もが知っている。潜伏していた屋敷をとり囲まれた王妃は、生まれたばかりの王女の胸に短剣を刺し、自らは毒を飲んでこの世を去ったと。


「おぼえがめでたくなるためにカムデンが、モーガン7世に自分の手柄だと報告した。実際はカムデンに命じられたガイの功績であり、ガイは首尾よくカムデンに恩を売ることが出来た」


「嘘! 嘘、嘘、嘘! 信じられない。お父様は心優しき人。領内で一緒に旅をしたわ。領民にも愛されてた」


「君の故郷に人をやって調べさせてもらった。当時を知る兵士たちは王妃と王女の亡骸をカムデン邸に運んだと証言した」


「ひどい! ひどい、エドワード! ノーマン家を調べていたなんて一言も言ってくれなかった」


エドワードが私から離れて行ったのはセシリア・アボットが原因ではなかった。私は何て勘違いの、あさましい馬鹿な女。自分が原因なのにセシリアのせいにしていた。


「すまない。でも、君に知られずに調べなきゃならない理由があったんだよ、ラナ。君から聞いていたガイ・ノーマンの人物像。そして、君だ。短い間だが一緒にいて分かった。君は他の者とは違う。ここからは僕の推測だ。証拠も何もない」


もういい。聞きたくない。どうかエドワード。もうこれ以上、私を苦しめないで。


「ガイは捕らえた王妃から娘の命だけはと泣きつかれた。野心を以て王都に乗り込んで来たはずだった。だが、ガイは生来心優しき男だった。それで王女をすり替えた。おそらくは死んだ赤子を用意したのだろう、ガイはそれに短剣を突き刺した」


え? どういうこと? 王女は生きていた……。


「君の本当の名はクローディア。クローディア・レイヴィンクロフトだ」


私の頭は真っ白になっていた。気が付くとエドワードが私の体を出口に向けていた。そして、背中をそっと押す。


私の足は門番の像を通り過ぎ、二歩、三歩して止まった。振り向くとエドワードが呆然と立っていた。


「古来この像たちを称し、試しの門という。魔法が掛っていて王家の者以外絶対に通さない」


エドワードがひざまずく。


「陛下。今まで数々の御無礼、お許しを」


頭を下げる。私はレイヴィンクロフト。ラナじゃなく、クローディア。


「信じない。私はラナ。今さっき言ったでしょ、エドワード。証拠も何もないと」


エドワードはおもむろに立ち上がると私の方に向けてゆっくりと手を差し出した。


突然、二体の像が動き出す。剣を握り、振り上げる。エドワードは手を戻し、またひざまずいた。像たちも剣を戻す。


「女王陛下。出口には陛下の叔父上、ドーソン公と我が父ジャック・フレーザーが待っておりまする。私はここを通れません。申し訳ございませんが、お供出来るのはここまでです」


エドワード。エドワード! そう言うことだったんだ。王墓の森でのプロムも、禁断の森への誘いも、あの穴に落ちたのも、試しの門も、全部エドワードの企て。私はエドワードにだまされていた。私をこの国の女王にするために。


……エドワード。私はあなたに「ラナ」と呼ばれるのが好きだった。


「私はラナ。ラナ・ノーマン。出口には向かわない」


エドワードは私の言葉に返事もせずに、頭を下げたまま動かなかった。何か考えていたのか、しばらくして立ち上がった。


「確かに僕は君をだましていた。でも、僕は気付いてしまったんだ、僕らが一緒にいてはいけないことを。僕が気付いたのなら、きっと誰かも気付く。カムデンとフレーザー家はそもそも不倶戴天ふぐたいてんの敵同士。ノーマン家の君と僕が一緒にいれば尚更、怪しいと思う者も出よう。だがら、僕は君と距離をとったし、秘密裏に動いた。でも、それはこの国のためではないんだ。レイヴィンクロフト王家のためでもない。ましてやフレーザー家のためでもない」


エドワードはそう言うとまた腰を下ろした。今度は足を放り投げている。


「はぁー。話せてスッキリしたよ。実際、僕は君がどこのだれなんてどうでもよかったんだ。君は君だ。なぁ、そうだろ?」


エドワードの、今まで見たことのない満面の笑み。


「そんなところに突っ立ってないで、さぁ、ここに来なよ。僕らだけしかいないんだ。いがみ合っていてもしょうがないだろ」


エドワードの輝く瞳に吸い込まれるように、私はエドワードに向かった。そして、膝を抱いて丸まるように、エドワードの横に座った。


「ごめんな。僕はただ、君とずっと一緒にいたかっただけなんだ。君が出口に向かわないというならそれでいい。こうして君と一緒にいられるんだ。僕はずっとそう望んでいたんだしな。君は僕と一緒じゃ嫌かい?」


嫌ではない。私はどうしようもなくエドワードが好き。首を小さく横に振った。


「よかった。ほっとしたよ。せっかく二人っきりになったのに嫌がられてたんじゃぁ目も当てられないからなぁ」


エドワードは声を上げて笑った。その声につられて、うつむき加減の私は顔を上げる。


「前から思っていたんだが、やっぱりハニーブラウンの髪にヘーゼルの瞳はよく合う」


ドキッとした。この言葉は私にとって魔法の言葉だった。初めて話した時、私はエドワードに魔法にかけられていた。


「あ、そうだ。僕にはまだ言い残したことがあった。言うか言うまいかいつも迷っていた」


私は違う意味でドキッとした。また怖いこと言うんじゃないかと。体がこわばる。


「なに?」


エドワードはまた笑った。


「大丈夫。もういじめたりしないよ。言いたいのは僕の気持ちさ。僕はまだ君に一度も話したことがない」


地下道は静かだった。まるで時間が止まったよう。私は息を殺してエドワードの言葉を待った。


エドワードは私の目を見て、はっきりと言った。


「愛している。僕は君を愛しているんだ」


……愛している。今、愛していると言った。


エドワード………。


なぜか涙が込み上げて来た。私もよ。ずっと愛していた。泣いている私をエドワードがそっと抱く。


私はエドワードに体を預けるように、その胸に顔をうずめた。エドワードの匂い、心臓の鼓動。私はだれでもない。私は私。


エドワードの手が私のあごに触れた。向き合うよういざなわれる。私たちは見つめ合って、そして唇が私の唇に重なった。私は目を閉じた。エドワードの腕に、胸に包まれる。


暖かい。エドワードの体温が私に移って来るのを感じる。ずっとこのままでいたい。エドワードの温もりを感じていたい。


はっとした。これは命の灯。私たちは雨水溝うすいこうに落ちてしまってずぶ濡れのままだった。私はエドワードの胸から離れた。このままだとエドワードが死んでしまう。


「エドワード、今度は私があなたを守る」


私にしかできない。それにこの宮殿はエドワードの御先祖様が造ったエドワードの宝物。


「誰にもこの宮殿を壊させはしない。ほんの少し待ってて。私たちが落ちた穴にロープを下ろすわ」


エドワードはエドワードだった。何も言わない。私を黙って見つめ、微笑んでいた。


私は走った。エドワードの綺麗きれいな輝く瞳が脳裏に浮かぶ。私が私を取り戻したことを喜んでくれている。


通路を抜けるとらせん階段があった。私は登って行く。石積みの壁に沿って幾度となく回ると出口があった。私は飛びこむように出口を抜ける。


どうやらここは城の一室。


四人の貴族が立っていた。一人は私の姿を見るなり涙ぐみ、私の前までやって来てひざまずく。


「陛下。一目で分かり申した。不覚にも我が姉が生きていたかと思ってしまいました」


ドーソン公。本来なら叔父にあたる。そして、エドワードの御父上。顔立ちと雰囲気ですぐに分かった。


「御帰還。執着至極しゅうちゃくしごく


フレーザー公がひざまずき、私の手にキスをした。他の貴族たちも次々と私の手に口づけをする。ルドベキアのほこる五大公爵の、カムデン以外四人がここに集まっている。


フレーザー公が言った。


「カムデン邸ではすでにいくさが始まっております。我ら四家にて王都の守りを固め、市民には危害がおよばぬよう街路に兵を配し、王墓の森にも警護と称して兵を五百人ほど入れておりまする」


「諸侯の子息子女は我らの手の内にあるも同然」

「諸侯が味方出来ないカムデンは時間の問題でしょうな。いずれ陛下の御前に引っ立てましょう。我ら、生きて捕らえる所存」


ドーソン公が言った。


「王殺しに王権簒奪おうけんさんだつ。やつにはそれに見合った罰をうけてもらわなくてはならぬ」


フレーザー公は私をテラスにいざなった。王都ガイガルディアが一望できた。カムデン邸は赤々と燃え、町すじや城壁はたいまつのあかりで満たされている。


王都の遠く向こう、王墓の森は多くの兵が持つたいまつで、闇に浮かぶように黄金色にきらめいていた。






《 了 》



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