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57 断罪③ アンジェリカ視点

この状況で不敵な笑みを浮かべる私に、お兄様が尋ねた。



「アンジェリカ、何故こんなことをした。この国において聖女殺しは禁忌だということを知っているはずだろう?」



「え?あぁ・・・」



何を聞いてくるかと思えばそんなことか。特に嘘をつく理由も無かったので、私は正直に答えた。



「―あの女の顔が、ムカついたのよね」



「・・・何だと?」



お兄様の顔が険しくなる。私とお兄様は血は繋がっているが、中身はまるで違う。きっとお兄様には私の気持ちなど理解出来ないに違いない。そう思った私は、何を言っているのかとでも言いたげな顔をしているお兄様に分かりやすく説明してあげた。



「だってあの聖女、私よりも人気だったんだもの」



「お前はそんな理由で人を殺そうとしたのか・・・!」



「そうよ、聖女だけじゃないわ。私は今まで邪魔な人間はみんなこうやって消してきた」



「「「「「!?!?!?」」」」」



私のその発言に会場にいる貴族全員が驚きを隠せなかったようだ。その瞬間、会場の雰囲気が完全に変わった。



「お、王女殿下・・・今の言葉は一体・・・」



「う、嘘だろう・・・そんな・・・」



「ほ、本当なのか・・・?」



アルベールに至っては会場に入ってきてからずっと項垂れており、私の取り巻きの貴族令息たちも信じられないものを見るかのような目で私を見つめていた。



その中で一人、氷のように凍てついた目を向けてきた人物がいた。



「・・・お兄様」



フィリクスお兄様だ。お兄様は冷たい目で私を見つめながら素早く唇を動かした。



「ああ、知っているさ。お前はそうやって私の母を始めとした邪魔な人間を何人も殺してきたんだからな」



「・・・何だ、知ってたのね」



お兄様のその言葉に少しだけ驚いた。



まさかお兄様がそれを知っていたとは。もしかして今まで実の妹である私を一度も気にかけてくれなかったのはそれのせいだったのだろうか。



お兄様の発言に貴族たちがさらなる衝撃を受ける。



「王妃陛下は不慮の事故ではなかったのか!?」



「まさか王妃陛下は王女殿下に殺されたのか・・・?」



「何人もってどういうことだ?」



次々に明かされる衝撃の事実に、皆理解が追い付いていないらしい。そんな彼らにお兄様が声を張り上げて言った。



「皆の者!よく聞いてほしい!過去十年間の間で行方不明になった、もしくは謎の死を遂げた者たちが何人もいただろう」



「・・・」



貴族たちが「まさか」というような顔をした。



「それは全てここにいるアンジェリカーそして、国王陛下の仕業だ」



お兄様のその言葉で会場中が騒然となった。そのどよめきの中からは悲鳴のような声もいくつか聞こえた。



そして一人のご夫人が突然私の前に出てきたと思ったら涙ながらに訴えてきた。



「私の娘も!私の娘も、五年前に突然姿を消したんです!!!」



「・・・」



そう言ってきたその女の顔に私はどこか見覚えがあった。



(・・・あぁ、昔たしか美姫と呼ばれていたまだ幼い侯爵家の令嬢がいたわね)



そう、過去に私を苛つかせた一人の女によく似ていた。正直忘れかけていたが、そんな風に言ってきたせいで思い出してしまったではないか。私は一瞬で不快な気持ちになった。



「―あぁ、私が殺した」



そう口にしたその瞬間、夫人がまるで仇を見るような目で私を見つめてきた。



「何故!!!何故ですか!!!娘が貴方に何をしたというんですか!!!」



「だって、私より美しかったんだもの」



「え・・・?」



夫人は顔を真っ青にして固まった。怒りからか驚きからか、その体は小刻みに震えていた。



「あの女、将来は国内外に名を轟かせるほどの美女になるとか言われてたのよ?だから焦ったのよね。私より美しい女は、この世に存在しちゃいけないのよ」



それを聞いた夫人は顔を真っ赤にして私を怒鳴りつけた。



「この悪魔ーーーーーー!!!」



夫人はそのまま地面に座り込んで泣き崩れた。私は夫人のそんな様子は気にもならなかった。しかし、彼女が今私に対して言った言葉に違和感を覚えた。



(悪魔・・・?天使の間違いでしょう・・・?)



そう思ったものの、その途端に周囲の貴族たちが私を軽蔑の眼差しで見つめた。



「まさか自白するとはな。もう言い逃れ出来ないぞ」



そしてお兄様も貴族たちと同じく鋭い目で私を見た。



「アンジェリカを捕らえろ!!!」



お兄様のその一言で会場にいた騎士が私の腕を掴んだ。



「痛ッ!!!」



力が強すぎて腕に痛みが走った。



(誰に触ってんのよ、この!)



「触んないでよ!!!放しなさい!!!」



そう言いながら全力で暴れてみるものの、鍛え上げられた騎士たちの力に敵うはずがない。



(ああ、汚れる汚れる汚れる!!!)



私の腕を掴むこの手が不快でたまらない。先ほどまで平静を保っていた私はついに耐えられなくなった。



「私に触るなって言ってんでしょ!!!」



「暴れるな!」



ついに私は数人の騎士たちに拘束されてしまう。身動き一つ取れなくなった私は手を後ろで縛られたままお兄様の隣にいた憎き女に視線をやった。



「聖女ソフィア!!!」



そのとき、フィリクスお兄様が聖女を庇うようにして前に出た。その姿はまるで愛するお姫様を守る王子のようだった。その光景を見て腹の底から怒りがこみ上げてくる。



「こんなことになるんだったらもっと早くアンタを消しておくべきだったわ!」



聖女はお兄様の背中からじっと私を見つめていた。その力強い瞳が余計に私を苛立たせた。



そして私は今度は未だに項垂れているアルベールに目を向けた。



「アルベール!!!よくも私を裏切ったわね!呪ってやる!!!」



「・・・」



その声にアルベールは顔を上げ、弱りきった顔で私を見た。もうそこに以前のような恋慕の情は見られなかった。私はそんな彼を頭ごなしに罵倒した。



「身分が高いだけの傲慢男が!あなたを愛してくれる人なんてこの先誰もいないでしょうね!きっと近い将来あのとき聖女を殺して自分も死んでおけばよかったって思うはずよ!」



「・・・」



アルベールは何も言い返すことなく黙ったままだった。しかし私はこれくらいしないと気が済まなかった。



捕らえられてもなお暴言を吐き、暴れ続ける私を周囲の貴族たちはゴミを見るかのような目で見ていた。



「早く死ね、この悪女が!」



「うちの娘を返せー!」



それから連れて行かれる私を皆して罵倒した。ついさっきまでは私の演技に見事に騙されていたというのに。



(ああ、うっさいわね!)



全てが不快だった。お兄様も聖女もアルベールも私を拘束する騎士も人々の罵倒する声も。



そして、私はそのまま騎士たちに会場から連れ出された。




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